
7月場所で3度めの優勝となった安青錦(写真・JMPA)
「2度めの優勝よりうれしいですね。(ケガで)休みという話は出ませんでした」
大相撲名古屋場所千秋楽、優勝決定巴戦の末、3度めの優勝を果たした関脇・安青錦(あおにしき)。12勝3敗での優勝ということで、大関復帰も決めて二重の喜びとなった。だが、周囲はそれどころではなかったという。8日めにケガした左足親指が深刻な状態だったからだ。
わずか3年余りで大関復帰を果たした安青錦だが、ここに至るまでは、今場所に象徴されるようにケガとの戦いでもあった。
2023年秋場所に初土俵を経験し、わずか9場所で新入幕。その後も順調に勝ち星を重ね、小結、関脇を経て、2025年九州場所で初優勝を果たし、大関に昇進。翌場所も優勝し、春場所は綱取りの場所となった。
ところが、まさかの負け越し。次の5月の夏場所前には左足首を痛め、全休することとなり、ここで大関陥落が決まった。そして、今場所8日めに勝って7勝1敗としたが、土俵下から上がる際には苦悶の表情を見せ、明らかに軽傷ではないことを予感させた。
「あとでわかったことですが、もともと左足首が悪く、その上で左足親指を痛めてしまった。さらに両個所をかばうことによって、今度は逆の右足首まで痛めてしまったということです。
両足の痛みは相当激しく、夜中にトイレにひとりで行けないほどだったと言います。親指をケガした時点では7勝1敗で、大関復帰には3勝足りない。本来なら休場すべきケガでしたが、出続けることを選択したようです。
その後、3連勝して大関復帰を決めましたが、どの一番も取組後には痛がる素振りを見せ、支度部屋に帰る際は足を引きずっていました。この時点で『休場したほうがいい』と誰もが思ったでしょうが、1敗で優勝争いのトップを走っていたこともあり、休場するわけにはいかなかったのです」(スポーツ紙相撲担当記者)
しかし、決して軽くないケガを抱えての出場判断は正しかったのか。
「安青錦は千秋楽で本割を含め、巴戦とで三番取ったことになります。そのたび顔を激しくしかめていました。それを見たとき、2001年夏場所千秋楽の貴乃花を思い出しました。貴乃花は前日の取り組みで傷めた右ひざの負傷をおして千秋楽に挑んだのですが、結びの一番で西横綱・武蔵丸に敗れ、13勝2敗で並ばれた。
そして、優勝決定戦では、上手投げで武蔵丸を制し、2場所ぶり22度めの優勝を果たしたわけです。それこそ日本中を感動させた優勝でした。
ただし、右膝半月板を損傷する大ケガで、膝周辺はパンパンに腫れあがっていました。痛み止めの注射も、通常では考えられないほど打っていました。
結局、ケガを負っての強行出場の代償はあまりにも大きく、その後、一度の優勝もなく引退に追い込まれたのです。安青錦のケガが完治することを祈るばかりです」(スポーツライター)
ケガをおしての優勝に、ファンはよりいっそう感動を覚えるのは確かだろう。ただ、貴乃花だけでなく、稀勢の里も同様のケースで優勝したものの、その後は休場を繰り返した。強行出場が、引退を早める結果となりかねないことを忘れてはいけない。
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