ラグビー用語で、“ボールを奪う” という意味の「ジャッカル」を世に知らしめたのが姫野和樹(25)だ。彼はトヨタ入社1年めに、監督から主将に任命された。
「監督は『彼を日本代表にできなかったら私の責任』と、姫野の才能を買っていた。そこで主将に任命したのだが、最初は『ルーキーが何を言っているんだ』と相手にされなかった。
悩んだ姫野は、歴史上の偉人の本を読んで知識を広げ、プレー面でも実力を発揮するようになり、認められる存在になった」(専門誌記者)
今大会の活躍で、契約延長が濃厚なヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ氏(49)は、チームの和を重んじる。
41人から最終メンバー31人を選抜した網走合宿でのこと。代表から漏れた10人全員に(模造の)刀を渡し、「君たちはファミリーだ。その刀をいつも磨いておけ」と、怪我人が出たら再招集することを示唆した。なお、この模造刀は、試合で活躍した相手選手にも渡された。
また、代表31人には、全員の名前が刻まれたネックレスの「トキ」をプレゼント。母国ニュージーランドのマオリのお守りとされるもので、「勇気を持って戦え」というメッセージがこめられている。
「みんなつけています。全員で戦うという意味で、『One Team』って彫ってあるんです」と、中村亮土(28)は言う。
プールAの4試合で未出場だったのは茂野海人(28)、木津悠輔(23)、北出卓也(27)、徳永祥尭(27)、アタアタ・モエアキオラ(23)の5人だが、貢献度は高かった。対戦相手を分析し、練習でその動きを実践してくれていたからだ。
稲垣啓太(29)は、こう語る。
「(練習で対峙する)木津はどんどん強くなっている。彼とスクラムを組むのがいちばんしんどい」
ジョセフHCは、グラウンド外で最も貢献した選手をチーム内で表彰するグローカル賞(グローバルとローカルをあわせた造語。国籍は関係ないの意)に、文句なしで木津を選んだ。
ちなみに、選手から信頼の厚い通訳・佐藤秀典さんは、グラウンドを離れればデスメタルバンド「INFERNAL REVULSION」のボーカルという顔も持つ。堀江翔太(33)は「人間としても、アーティストとしても信頼できる人」と絶賛する。
ラグビーは、生身の肉体をぶつけ合うだけに、怪我はもちろんのこと、一歩間違えば命を落としかねない。となれば、見返りが気になるところ。
日本ラグビー協会が発表した報奨金は、優勝でも1人500万円。ベスト4で300万円、ベスト8で100万円と、注目度や危険度に見合った額とはとても思えない。なお、サッカーロシアW杯での日本代表の報奨金は、1勝で200万円(引き分け100万円)、決勝T進出で600万円だった(優勝は5000万円)。
桜の戦士たちは、お金よりも名誉と誇りありき。そのことを国民が知れば、ワールドカップ後も、さらにラグビー熱は上がっていくことだろう。
(週刊FLASH 2019年11月5日号)