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大鶴義丹、愛する立ち飲み屋で語る「父・唐十郎へのライバル心」

バラエティFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.31 06:00 最終更新日:2020.09.02 18:51

大鶴義丹、愛する立ち飲み屋で語る「父・唐十郎へのライバル心」

俳優デビュー時、NHKドラマ『安寿子の靴』の撮影にて

 

 そんな演劇一家で育った大鶴が、役者を志したのは、自然の成り行きだった。おかわりで頼んだホッピーを飲み干し、目を伏せて語りだした。

 

「小さいころから、大の大人たちが芝居に夢中になって、取っ組み合ったり泣いたり、楽しそうにしてる姿を見てましたから。気がついたら、やっぱそっちに行ってたって感じですかね。

 

 二世タレントの悪い面が出なかったのも、親が苦労してるところを見てるからでしょうね。稽古第一で、子育てなんて二の次。とにかく稽古場で、汗かいて怒鳴って……」

 

 そんな幼少期に刷り込まれた芝居の原点に、大鶴が回帰したのは6年前。状況劇場出身の金守珍が主宰する、「新宿梁山泊」の公演への参加が契機になった。新宿・花園神社でのテント公演で、大鶴は父の演じた役に、次々と挑んだ。

 

「父とは、べつに反目し合ったわけでもなく、普通に仲がいいほうの親子とは思うんですが、ある種のライバル意識というか、『親父の世界に、のみ込まれてたまるか』みたいな思いはあった。

 

 ただ、もうそれなりにキャリアも積んできたし、『自分の体を通して、父が創り上げてきた世界に新しい命を吹き込めたらいいな』と、やっと思えるようになれた」

 

 唐は2012年5月、自宅付近で転倒して頭に大怪我を負い、いまも療養を続ける。大鶴は金に出演を口説かれ、一線を退いた唐の代わりに、その作品を演じることになった。宿命めいた “タイミング” だった。

 

「意欲に才能が追いつかず、または素質に恵まれながらも周囲の期待に圧し潰され、やめていく劇団員をたくさん見てきました。僕自身も『親父と同じことはできない』と思い、高校時代に自主映画を作ったりしたこともありました」

 

 役者人生のなかで、道筋を見失った時期もあった。

 

「30代に乗ったあたりが、難しい時期でしたね。ただ若いだけで振られてきたような役には、どんどん代わりが出てくるわけです。それまで若さという『肉体的特権』を取り柄にやってきたんだから、ある意味当たり前。

 

 若い時分には、ただ黙って立っていれば演技が成立してしまうことさえある。それが評価されると、『自分には演技力がある』と思い込んでしまう。肉体的な輝きは失ったけど、50代になった今のほうが気楽ですよ(笑)」

 

 気がつけば店内は、同年代のサラリーマン客でひしめいていた。ご同輩らとも気さくに言葉を交わし、大鶴はホッピーの「中(ナカ)」を頼んだ。「中」を足しては「外」で満たすホッピーセットのように、役者の人生も無限の繰り返しなのだろう。

 

おおつるぎたん
1968年4月24日生まれ 東京都出身 高校生だった1984年、NHKドラマ『安寿子の靴』で俳優デビュー。映画『となりのボブ・マーリィ』で初監督。現在まで6作品を監督。近年は、フジテレビ系『アウト×デラックス』などに出演。映画『めぐみへの誓い』が2021年春に公開予定。実在の北朝鮮工作員・辛光洙をモデルにした、辛光春を演じる

 

【SHOP DATA/立ち飲み酒場 呑うてんき】
・住所/東京都中央区八重洲1-5-17
・営業時間/ランチ11:00~14:00、立ち飲み17:00~23:00 ・休み/土曜、日曜、祝日

 

取材&文・鈴木隆祐
写真・野澤亘伸

 

(週刊FLASH 2020年9月1日号)

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