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石破茂が語る「たばこ」で思い出す戦後自民党宰相録
バラエティFLASH編集部
記事投稿日:2019.09.24 16:00 最終更新日:2019.09.24 16:00
「私がこの世界に入ったときは、有名な政治家も皆たばこを吸っていて、それぞれ “深み” がありました。
田中角栄先生はマイルドセブン、竹下登先生はずっとハイライトでした。橋本龍太郎先生はチェリー。渡辺美智雄先生はショートホープ……。おもしろいもので、銘柄が人それぞれ違いました」
こう話すのは、石破茂・元自民党幹事長(62)。34年めを迎えた永田町生活のなかで、自民党の「宰相」たちの、たばこにまつわる思い出も多い。
「カッコよさでいえば、龍太郎先生の右に出る人はいなかった。笑っているときも、苦りきった表情も、どちらも絵になっていた。
1989年、宇野宗佑総理のスキャンダルもあって、自民党は参院選で大敗。龍太郎先生は、そのとき幹事長でね。『チクショー、やられたか』とチェリーを吸って、悔しそうな表情をしておられたのが、印象深いですね」
1981年、自治相を務めた石破氏の父・二朗氏が急逝。父の友人だった田中角栄元首相から、「お前が出ろ」とすすめられ、政界入りを決めた。旧田中派の事務局で働き、1986年の衆院選で初当選。当時29歳で、全国最年少の国会議員だった。
「いまでは考えられないけど、当時、本会議場以外はたばこが吸えたんです。1993年の細川護熙内閣まではね。
社会労働委員会(いまの厚生労働委員会)では、渡部恒三・厚生相がたばこを吸いながらよく答弁されてました。いまじゃたばこを吸う人は、厚労相なんて絶対になれないと思いますけど(笑)」
石破氏は大学生だったころ、俳優の田宮二郎のたばこを吸う姿に憧れた。ダンヒルなどの “洋モク” に、カルティエなどの洋物ライターで火をつける。その姿が、カッコよかった。
「でも政治家の先生方は、100円ライターが多かった。龍太郎先生も、100円ライターでチェリーに火をつける。それがまたカッコいいんだな。
ライターがダンヒルだったら、キザに見えちゃうのかもしれません。政治家は、地元(選挙区)に帰ったとき、『この人、俺たちと一緒だな』と思ってほしいと考えますからね」
たばこを吸う姿とともに、鮮明に覚えているのが、薫陶を受けた大政治家の「思いやり」の深さだ。
「旧田中派の伝統なのかもしれません。角栄先生は、『人が「カネをください」というときほど、惨めなことはない。だから、「すまんが受け取ってくれ」と言って渡すのが大事なんだ』とおっしゃっていた。
竹下登先生は、多忙で5分しか会えないところ、10分も時間を割いてくださる。それだけでも嬉しいのに、『引き留めてすまなかった』と言ってくださる。会った人は感激します。
そして皆さん、必ずお見送りをされました。角栄先生は目白のお屋敷の玄関まで。竹下先生や龍太郎先生は事務所の出口、エレベーターまで。それが自民党の、旧田中派の文化でした。なかなかできないことですよ」
「思いやり」で、右に出る人はいなかったと思うのは、小渕恵三元首相だ。
「小渕総理は、外遊したときは必ず、自民党の国会議員にお土産をくださいました。置物やハンカチなど、ひとつ2000円から3000円ぐらいのちょっとしたもの。でも、当選2、3回の議員にとっては、地元で『小渕総理からもらった』と自慢できるんです。
私も小泉内閣で防衛庁長官だったとき、ロシアのイワノフ国防相の来日に合わせて、彼が吸っているロシアのたばこを取り寄せました。先方の趣味や嗜好を調べて、『俺のことをよく考えてくれてるな』と思ってもらうのは、外交の場でも、大事なことだと思うんです」
(週刊FLASH 2019年10月1日号)