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『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』上白石萌音にモヤモヤが止まらない

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.15 20:19 最終更新日:2021.01.15 20:31

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』上白石萌音にモヤモヤが止まらない

 

 映画『プラダを着た悪魔』(2006年)のパクリじゃない?……なんていう疑惑が持ち上がっていた上白石萌音の主演ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)。

 

 第1話(1月12日放送)は確かに既視感だらけで、『プラダを着た悪魔』のリメイクかと思うレベルだったが、筆者が引っかかったのはそこではない。

 

 

 奈未(上白石萌音)とイケメンカメラマン・潤之助(Kis-My-Ft2・玉森裕太)のラブコメパートの「キュンの押し売り」がすぎるのだ。特に初対面のシーンはしんどかった。

 

 筆者はアラフォー男性だが、少女漫画や恋愛ドラマはわりと好んで見ていて、本作と同じTBS系・火曜22時で放送されていた『ダメな私に恋してください』(2016年/深田恭子主演)や、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年/新垣結衣主演)は大好きな作品。甘々な展開でもうがった見方はせずに受け止められるタイプのオッサンだと自負している。

 

 しかし、個人的に本作の「キュン」は胸焼けしてしまった。

 

 出会って30秒の潤之助にギュッと抱きしめられて顔が急接近。汚れてしまったリクルートスーツの代わりの服を、初対面なのに潤之助がブラックカード(アメックスっぽい黒いクレジットカード)で買ってくれようとして、最後は頭ぽんぽんして去っていく。

 

 この王子様感が悪いと言っているわけではない。胸キュンを狙いすぎて強引なストーリー&演出になってしまっているのがいただけないのだ。

 

 たとえば『逃げ恥』もキュン要素が多分に含まれた作品だったが、キュンシーンが描かれるまでの経緯が丁寧に描かれていたので、素直にドキドキできた。

 

『逃げ恥』は「契約結婚」という名の偽装結婚が描かれているため、物語の設定としては『逃げ恥』はマンガ的(実際、原作はマンガだし)であり、『オー!マイ・ボス!』のほうがよっぽど現実的。

 

『逃げ恥』では偽装結婚がバレないようにするため、恋人っぽい空気を醸し出せるよう、毎週火曜日を「ハグの日」に制定。コントのような会話の後、ぎこちなくハグしたりもする。

 

 だが、きちんとそうなる過程やキャラの心情が表されていて、そのシーンが必要な理由づけがしっかりできているからキュンキュンしてしまう。マンガ的なシーンでもリアリティが生まれ、説得力があるのだ。

 

 では『オー!マイ・ボス!』はどうかというと、本作のファーストキュンシーンは取ってつけた感が否めない。リアリティもない、説得力もない。制作サイドの「みなさん、こういうのがお好きなんでしょ?」という雑な “押し付けキュン” を喰らったような感覚なのである。

 

■デビル菜々緒の至言で溜飲下がる

 

 次に引っかかったのは奈未の価値観やスタンス。

 

 幼い頃から母に「安定した仕事の普通の人ば捕まえて、はよ結婚しなせぇ」と、繰り返し刷り込まれていた奈未の信条は、「普通、人並み、安定が一番」。

 

 同僚女性と飲みに行った際は、公認会計士をしている幼馴染との結婚願望を語り、「普通に幸せで、安定した生活を手に入れたいんです」とニコニコ。

 

 結婚相手への経済的依存願望を明確に語ったわけではないが、ジェンダー論が声高に叫ばれている昨今、ドラマの主人公が“安定した仕事の男を捕まえて、結婚して幸せになる”という価値観を垂れ流すのはいかがなものか。

 

 飛躍しすぎかもしれないが、こういう奈未のような女性こそ、男女平等社会を実現するうえで “女の敵は女” の “敵” になりえてるんじゃないだろうか……。

 

 そんな奈未に感じたモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのが、デビルメイクがお美しいドS編集長・麗子(菜々緒様)だった。「私は人並みでいいから普通の仕事がしたいんです」と訴える奈未を、麗子は一笑に付してこう言い放つ。

 

「人並みでいいなんていうのは、平均以上の能力やステイタスがある人間が使える言葉。あなたは “普通” や “人並み” がどれだけのものかわかってない」

 

 この言葉でいくぶん、溜飲が下がった。パワハラ・モラハラ全開の麗子の言動は目に余るものがあるが、このシーンの麗子には全面的に同意。

 筆者が奈未に抱えていたモヤモヤの根源はここだったように思う。

 

 従業員100人の会社があったとして仕事スキルの順位をつけたとき、“普通” や “人並み” と言えるのは40位~60位ぐらいまでの層だろう。つまり、4割の従業員は “普通” “人並み” に達していないということになる。

 

 しかし、全体の4割もの人間が達成できないことを、奈未はめちゃくちゃ軽んじているように見えた。端的に言うと、「世の中なめてる」ように見えてしまったのだ。

 

 おそらく、そんな奈未が最終回までに徐々に成長していく姿を見せるドラマなのだろうが、つかみである1話目で奈未に感情移入することができず、離脱してしまう視聴者が多い気がする。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

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