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『シン・ウルトラマン』にも出演の益岡徹が振り返る40年を超える役者人生「今でも現場では緊張します」

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.05.22 11:00FLASH編集部

『シン・ウルトラマン』にも出演の益岡徹が振り返る40年を超える役者人生「今でも現場では緊張します」

無名塾には24歳で入塾した益岡徹(左から2人め)。右端、ボーダーシャツを着ているのが仲代達矢

 

 マスターが文学座出身の俳優ということもあり、「スナック雑魚寝」には毎夜、多くの映画・演劇関係者が集い、朝まで飲み明かしていた。

 

 接客業が初めてだった益岡は戸惑いながらも客の会話に胸を躍らせた。

 

 ある日、客の一人から「仲代(達矢)さんが私塾を作ったみたいだね。仲代さん主演映画にも出られるらしいよ」と言われた。

 

「『無名塾』は注目されていて倍率は200倍くらいあったようです。『受かるわけない』と思いましたが合格。すると、また『これで役者だ。忙しくなるぞ』と小躍りしました。まだ何もしていないのに」

 

 無名塾は舞台出演などで給料がもらえるためアルバイトは禁止。半年で「雑魚寝」を辞めることになったが「食えなかった僕を雇ってくださり、無名塾とのご縁をいただき感謝しかありません」と、益岡はその後もよく飲みに訪れた。

 

「年齢は同じですが塾生としては先輩の役所広司さんとは稽古終わりに飲みました。朝まで飲んで稽古に行ったら、仲代さんの奥様の宮崎恭子さんに『新入生を連れ回して何をやってるの』と役所さんだけが怒られて(笑)。仲代さんと、このカウンターでご一緒させていただいたこともあります」

 

 無名塾は俳優として成長するうえで、どのような影響をもたらしたのか。

 

「先輩の芝居を間近で見られますから『実践的演劇修業』です。新人にとって、稽古で役が出来上がっていく過程を見ることはいい経験になりました。仲代さんは師匠ですが弟子にも同じ役者として接してくださいます。演技については特には何も言わない方です。ときどき『今日の芝居はいいんじゃないか』と言う程度。だけど、その言葉が心に響くんです。

 

 そういえば仲代さんから『君は早くからは売れないかもしれないが、30代になったら役者で食える』と言われました。実際、30代から伊丹十三監督の作品に出演させていただき、皆さんに益岡徹を知っていただくきっかけになりました」

 

 黒澤映画のはったい粉に驚いた益岡は、伊丹映画では「画面の中で起こっていることにはすべて緻密な計算がなされている」ことを知った。

 

「『マルサの女2』(1988年)では宮本信子さんが演じた査察官の新人部下になりました。

 

 ガサ入れ前に査察官全員が講堂に集められ、各々の腕時計の時間を合わせるシーンを撮影したときのことです。雑談しながら時計を合わせる設定で、普通の撮影なら『ガヤガヤしてください』みたいなざっくりした説明があるだけのところです。でも、伊丹監督はその雑談にも台詞をつけるんですよ。不思議でしたが、仕上がりを見たらすごくリアルな雑談でした」

 

『マルサの女2』は前作を超えるヒットを記録。益岡にもオファーが相次ぎ、俳優として映画、テレビドラマで活躍するようになっていった。

 

 2017年、60歳を過ぎて益岡はある挑戦を決意した。オーディションを受け、ミュージカルに初出演したのだ。それは益岡の俳優人生にも「特別な意味」があった。

 

「2017年に上演された『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~』というミュージカルです。炭鉱ストライキに揺れる1984年のイギリス北部で少年がバレエと出合い、才能をバレエ教師に見いだされます。先行きが見えないなか、夢に向かい努力する少年の姿を描いています。

 

 僕はその父親役を選ぶオーディションに参加しました。ミュージカル未経験なのでやぶれかぶれ。一方で『この役だけは絶対にやりたい』という思いも強かった。

 

 父親役に選ばれたとき、この年齢でオーディションに呼んでいただいたことの幸せと喜びを感じました」

 

 役者人生が40年を超えてもなお、公開中の空想特撮映画『シン・ウルトラマン』に出演するなど、益岡は “新しい役” に挑んでいる。

 

「じつは怪獣映画、好きなんです。『あ、あれはなんだ?』みたいな台詞も楽しくて。樋口真嗣監督はとても野心家で、スマホのカメラも使って撮影をしていたり、驚かされるばかりの現場でした」

 

「僕は本当に不器用な役者なんですよ。それでもまだまだいろいろな役に挑戦したいですね……」と宙を見つめてつぶやき、何かを思い出したようにビールグラスを置いた。

 

「今でも現場ではよく緊張します(笑)。緊張をほぐすために手のひらに人という文字を書いて飲み込むって言うじゃないですか。そんなとき僕はお世話になり、残念ですが亡くなった監督や先輩の役者さんのお顔を思い浮かべるんです。失敗も多いですけど、こんな僕が役者を続けていられることを感謝するんです。そんなことを考えながら……うん、そうやって現場に臨んでいます」

 

ますおかとおる
1956年8月23日生まれ 山口県出身 1980年に仲代達矢主宰の無名塾に入塾。映画『野獣刑事』(1982年)、『マルサの女2』(1988年)、『釣りバカ日誌』シリーズなど話題作や、大河ドラマ『翔ぶが如く』(1990年、NHK)、『半沢直樹』(2020年、TBS)、三谷幸喜作・演出の舞台『出口なし!』(1994年)にも出演

 

【スナック雑魚寝】
住所/東京都新宿区新宿3-10-2-4F 
営業時間/18:00~24:00 
定休日/年中無休 ※新型コロナウイルス感染拡大の状況により、営業時間、定休日が記載と異なる場合があります。

 

写真・野澤亘伸

 

( 週刊FLASH 2022年5月31日号 )

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