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『アトムの童』オダギリジョーが魅力的なのに…想定を上回らない「日曜劇場」に客離れの懸念

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.13 11:00 最終更新日:2022.11.13 11:00

『アトムの童』オダギリジョーが魅力的なのに…想定を上回らない「日曜劇場」に客離れの懸念

 

 面白いと言えば面白いのだが、想定内で小さくまとまっている感じ。山﨑賢人主演『アトムの童(こ)』(TBS系)は、看板枠である「日曜劇場」作品なのだが、先週放送の第4話までずっと期待値を上回って来ない印象だ。

 

 それは視聴率にも表れており、第1話から第4話までの世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)は、8.9%、10.6%、9.1%、10.4%と一桁と二桁を行ったり来たり。

 

 

 今のご時世、視聴率だけでヒットか否かは測れないが、高視聴率を連発していた日曜劇場作品が、このままでは全話平均で一桁台に陥落しかねない状況は、さすがに緊急事態。TBSもさぞかし焦っていることだろう。

 

■それなりに面白い要素があり、悪くはないが…

 

 若き天才ゲームクリエイター安積那由他(山﨑)が、廃業危機を迎えていた老舗おもちゃ会社「アトム玩具」を救うため、革新的なゲームを制作するという物語。

 

 ゲーム制作の資金もノウハウも持たずゼロからのスタートとなる「アトム玩具」が、数多くの人気ゲームを手がけている巨大IT企業「SAGAS」にどう対抗していくのかが見どころである。

 

 この作品、決して面白くないわけではない。

 

 たとえば先週の第4話。インド人投資家から融資を受けるため、プレゼンするはずだったゲームのデータが消えてしまう。だが、データを消去した裏切り者が改心し、最後は一致団結して努力と根性で困難を乗り越えるという熱い展開で、そこそこ見応えがあった。

 

 また、そのゲームも「アトム玩具」がフィギュア商売で培ってきたキャラ作りのノウハウが活かされていたり、会社に残っていたジオラマを撮影してゲーム背景に採用したりと、老舗の伝統技術と最新デジタル技術を融合させていくアイデアも、なるほどと感心した。

 

 なにより「SAGAS」社長役のオダギリジョーのニヒルな悪役演技が非常に魅力的。いやらしい笑みを浮かべながら卑劣な妨害工作ばかりしてくるので、とことん嫌なヤツなのだが、大人の男の艶やかな色っぽさがあり、めちゃんこかっこいい。

 

 この役は、当初、香川照之が演じる予定だったが降板し、急遽オダギリが代役を務めることになった。だが、ここまでハマっていると、オダギリに “当て書き” したキャラだったんじゃないかと錯覚してしまう。もし香川が演じていたらと想像すると、逆に強烈な違和感を覚えるほどだ。

 

 このように『アトムの童』はそれなりに面白い要素が揃っており、悪くはない作品なのである。

 

■昨年の日曜劇場と比べると求心力低下は明らか

 

 昨年放送された日曜劇場作品は、1月期『天国と地獄~サイコな2人~』、4月期『ドラゴン桜』、7月期『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、10月期『日本沈没-希望のひと-』の4作品。全話の世帯平均視聴率が一番悪かった『TOKYO MER』でさえ13%台を記録しており、そのほかの3作品の全話平均は14~15%台を獲得している。

 

 ちなみに『TOKYO MER』がやや劣っているのは、昨夏の東京五輪開催期間とバッティングしてしまった不運が大きい。昨年1年間とおして、日曜劇場枠の単話の世帯平均視聴率が1桁だったのは『TOKYO MER』第6話のみなのだが、その日は東京五輪の閉会式だった。つまり、東京五輪さえなければ、日曜劇場枠は1年間とおして二桁視聴率を維持し続けた可能性が非常に高いのだ。

 

 では、東京五輪ほどのビッグイベントとカブっているわけではないのに、『アトムの童』が一桁視聴率を記録しているのはどうしてなのか?

 

 これには日曜劇場という枠そのものの求心力の低下が無関係ではないだろう。

 

 今年の1月期『DCU』は、初回の世帯平均視聴率が16%台という高ポイントでスタートダッシュを決めていた。しかし4月期『マイファミリー』は12%台スタート、7月期『オールドルーキー』は11%台スタート、そして『アトムの童』は8%台スタートと、今年の初回視聴率は右肩下がりなのである。

 

 また、『アトムの童』はすでに一桁視聴率を2回記録しているが、前作『オールドルーキー』も全10話のうち3回、一桁視聴率を記録している。

 

『日本沈没』や『DCU』のように、高視聴率ながら内容がいまいちだと評価された作品もあったため、日曜劇場自体が飽きられはじめ、急激な視聴者離れが起こっているのではないだろうか。

 

 その仮説にのっとって考えると、『アトムの童』がひときわ厳しい状況なのも頷ける。なぜなら『アトムの童』は、『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』シリーズで築き上げてきた日曜劇場の王道フォーマットを、よくも悪くも踏襲している作品だからである。

 

 勧善懲悪や弱者・強者の対立構図がわかりやすく、弱者の主人公は知恵と努力を振りしぼり、熱い仲間たちと協力して形勢逆転するというストーリー。好意的に解釈すれば過去作のヒットのセオリーを踏まえていると言えるが、マンネリ化しているとも考えられる。

 

 実際、『アトムの童』では、昔の親友が敵側についていたかと思えばやはり仲間になったし、邪魔をしていた裏切り者がほだされてやはり仲間になったし、容易に先が読めてしまう。王道フォーマットどおりの一定の面白さはあるものの、想定を越えてこないから跳ねないのではないか。

 

 ――今夜放送の第5話も、オダギリ演じる「SAGAS」社長の嫌がらせをどう乗り越えるかというストーリーのようだが、日曜劇場ファンたちの想定を上回る、意外性のある展開を期待したい。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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