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『不夜城はなぜ回る』ディレクター・大前プジョルジョ健太「人たらしすぎて合コン成功率は0%です!」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.25 11:00 最終更新日:2023.03.25 11:00
「深夜、灯りのついた建物では何が行われているのか?」
その実態を調査する番組『不夜城はなぜ回る』(TBS系、毎週月曜23:56~)がギャラクシー賞1月度月間賞を受賞した。選評では「夜光っている建物、つまり『不夜城』のなかでなにが行われているのか? そんな知られざる世界をのぞく面白さから始まり、不夜城の人々の人生、さらには現代社会の問題にまでつながっていく流れが見事。もともと不夜城巡りを趣味にしていたというディレクター・大前プジョルジョ健太の取材力には舌を巻く。どの回も、とても充実していた」と絶賛された。
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同番組の企画の発案者で取材、総合演出を担当しているのが、TBS入社5年目のディレクターの大前プジョルジョ健太(以下、プジョルジョD)さん。彼は、初対面の相手に名刺を差し出し、深夜にもかかわらず「今、何をしているの?」と問うのである。コンプライアンス的にギリギリのようなミッションだが、じつはプジョルジョDの個人的な趣味を番組化したものだ。
不夜城の正体は、ベトナムの技能実習生の駆け込み寺であったり、日本の古民家を忠実に再現するために、1日20時間模型を作り続ける職人がいたり…。そこには、“深夜でなければいけない理由”がある。プジョルジョDによって明かされる光源は、視聴者に体験したことのない驚きと感動を与えている。
そこでSmart FLASHは、プジョルジョDに直撃インタビューを敢行。「不夜城をなぜ追いかけるのか?」に迫ってみた。
――プジョルジョDさんは、番組が始まる前から「不夜城探索」をされていたそうですね。不夜城を取材して答えを探す、というスタイルは、いつから始まったことでしょうか?
「最初に突撃取材したのは20歳の頃。午前3時半頃、マンションの一角がとても光っていたのでピンポンしてみたらラージャ・ヨガをしていたんです。不夜城の理由としては、『世界がいちばん寝静まっているときに瞑想が深まる』ということでした」
――好奇心を抑えきれず、知らない人に声をかける。それは昔からできたことなのでしょうか?
「学生時代、僕はお金がなかったので夜勤のバイトをしていたんです。そこでは外国人なのに日本人の名前のネームプレートをつけた人が20人ほどいたんですよ。それってすごく気になるじゃないですか。ひとりに話しかけてみると、ブラジルからやってきて実家に仕送りをしている、とか。あぁ、世界はこうして回っているんだなと気づいたんです。このときの体験が原点かもしれません」
――深夜に日本人に成りすまして働いていることには理由がある、ということですね。「不夜城である理由」は、最初の「何をしているんですか?」で答えは出ますが、そこから深掘りをしていくと想像していなかったドラマに出合えるのが番組の見どころですよね。知らない人に声をかける、というのはいつから始めたことなのでしょうか?
「高校を卒業してからずっとやっていますね。夜中にフラッと行って気になった人に『何やっているんですか?』って声をかけたのは100人近くいると思います。僕は人が大好きで、人にめっちゃ興味があるんです。年齢、性別関係なく、時間が許す限り、その人の話を聞きたいと思うんです」
――声をかけられて嫌がる人はいませんか?
「こんにちは、こんばんは、って声をかけられて嫌がる人はいないんじゃないですかね。一緒にタバコを吸ったりお酒を飲んだりすると、打ち解けやすいですね」
――プジョルジョDは、家人に誘われて一緒に酒を飲み、食事をし、家に泊まり、仕事の手伝いを始めたりします。老若男女、相手が誰であろうと、短時間で人の懐に入り込む術を持っていますね。過去の放送回では、穴子の職人さんが取材中に怒って、なかなかインタビューに応じてくれないシーンがありました。それでも、あれほど怒っていた人が、のちにプジョルジョDを車の助手席に乗せて話をするようになる。懐柔させるテクニックというか。なぜ、そんなことができたのでしょうか?
「僕が思うに、相手に興味がなかったら怒らないじゃないですか。怒るっていうことは守るものが何かある。僕は怒られれば怒られるほど、その人に興味が湧きます。その職人さんには、コンビニでお酒を買ってお詫びにいきました」
――不夜城がなぜ回っているのか、その答えが出たあとから、第二幕が始まります。どこまで深掘りするのか、ここまででOKというのはあるのでしょうか?
「その人にとって重要なキーフレーズが出てくるまで、同じ質問を何十回としています。一発で答えが出ることはないし、なかなか辿り着けません。言語化するのは難しいんですけど、相手と話をしているうちに、少しずつキーフレーズが見えてくるんです。たとえば、バイオリンの職人さんが『俺が作っているのはコピーに過ぎない』って言う。そんなキーフレーズが出てくるまでしつこく聞くので、『何度同じ話をするんだ!』って怒られることも多々あります。わかるまでは帰れないという思いはどんどん強くなってきました」
――話をすることで、見えてくるものがある。
「ロケが終わったあとに、『そうか、俺ってこう思っていたんだな』って言われることがあります。喋ることで自分のことを理解する、というのはありますね。最後まで腹を割ってくれなかった人もいます。引き出せなかったとしても、それもその人の真理なので、そのまま描いています」
――視聴者からの情報をもとに不夜城を探しに行くわけですよね。行ってみたけど、なにもなかった、ということは?
「行ってみたけど、実際には光ってないことのほうが圧倒的に多いです。取材NGよりも多いですね。経費を無駄にするわけにはいかないので、そこからは不夜城を探します。放送では使えないのも多いです。現場へ行く道すがら、タクシーの運転手さんを5時間インタビューしたことがあります。同行しているプロデューサーに『もうカメラを止めていい。使わないでしょう』って、言われて。そのときに、自分は人に興味があるんだなと気づきました。カメラを止めたあともタクシーの運転手さんと話をしていて、運転手さんにも『ほんとに人が好きなんだね』って言われました。その運転手さんとのインタビューは本編で1秒も使ってないですけど(笑)」
――プジョルジョDさんは、有名人、成功者とか関係なく、人に興味があるんですね?
「そうですね。僕の(疑問への)沸点は低いのかもしれないです。だから合コンがうまくいかないんです。女の子に『君が思う恋ってなに?』『好きってどこからくるんだ?』というのを掘り下げていかないと気が済まないんです。だいたい、『もういい!』って言われます。だから合コンでうまくいったことは1回もないです」
――残念ながら3月27日(月曜)で、レギュラー放送が終了となります。最終回に向けてメッセージをお願いします。
「1本目は木炭を作っている炭職人さんが登場します。自分の家業もあるのに、奥さんの家業を継いでいる。そこには炭職人さんの熱い思いがあります。もう1本は、レモンで一大旋風を巻き起こそうとしている営業マンと生産者の話です」
大前プジョルジョ健太
1995年4月11日生まれ 大阪府出身 2018年、法政大学卒業後、TBSテレビに入社。『あさチャン!』『ラヴィット!』『サンデー・ジャポン』などを経て、現在は自身が企画した『不夜城はなぜ回る』を担当。母親はインドネシア人で、父親は日本人。TBSに入社する前は、インドネシアで犯罪専門のパパラッチのバイトをしていて、現地の警察と一緒に現場に突入していた。
( SmartFLASH )