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山田裕貴『ペンディングトレイン』現代に戻ったシーンはオチの先見せなのか、壮大なミスリードなのか…考察が悩ましい

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.05.26 11:00FLASH編集部

山田裕貴『ペンディングトレイン』現代に戻ったシーンはオチの先見せなのか、壮大なミスリードなのか…考察が悩ましい

 

 現代に無事戻れるという結末は既定路線なのか? それともミスリードなのか?

 

 先週金曜に第5話が放送された山田裕貴主演のサバイバル系SFドラマペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』のことである。

 

 

 ある朝、都心へと向かう電車の車両が、激しい衝撃とともに突如として荒廃した30年後の未来世界にワープしてしまい、たまたま乗り合わせた乗客たちのサバイバル生活を描くストーリー。

 

 主要キャラクターはカリスマ美容師の主人公・直哉(山田)、体育教師のヒロイン・紗枝(上白石萌歌)、熱血消防士の優斗(赤楚衛二)の3人だ。

 

 第5話までに、未来に来てしまったのは主人公たちが乗る1車両だけではなく、実は隣の車両も未来に飛ばされていたことが判明。その車両に乗っていたリーダー格の男らが不穏な気配を漂わせ、敵対していく展開となりそうだ。

 

■無事に帰還できているシーンがたびたび描かれる

 

 飛ばされてきたのが荒廃した未来世界だったという設定は、漫画『漂流教室』とドラマ『ロング・ラブレター~漂流教室』(2002年/フジテレビ系)の設定と瓜二つ。また、大事故で遭難したのは自分たちだけでなく、後々に他のグループの存在も明らかになり、敵対することになる展開は海外ドラマ『LOST』(2004年~)に似ている。

 

『ペンディングトレイン』の公式サイトでは、「予測不能のヒューマンエンターテインメント」と謳われている。だが過去の名作を彷彿させる要素が多いので、第5話までの展開にそこまでの意外性はなく、“予測不能” どころかストーリーはおおむね想定の範囲内。

 

 とは言え、本作には “どっちに転ぶのかわからない” という大きな謎が提示されていて、筆者としてはそこにかける期待値が大きい。

 

 まず、サバイバル系SF作品の最大の注目ポイントとなるのが、最終的に主人公たちが無事に元の世界に戻れるのかどうか。しかし、本作には、主要キャラクターたちが元の世界に戻れていると思わせるシーンが、要所要所で挿入されている。

 

 たとえば、第1話の冒頭からヒロインがなぜか赤ん坊を抱いて、元の世界に戻れていると思われるシーンが流れていた。第5話でも主人公が元の世界に帰還しており、勤務先の美容院でヒロインと再会する日常シーンが描かれているのだ。

 

 このように、時系列的にメインストーリーのずいぶん後になると思われるシーンが、意味深長にたびたび挿入されている。

 

■最初からネタバレを好む若い世代に合わせた手法?

 

 現代に帰還している姿を描くのは、ひねくれた解釈をせずにストレートに受け取るならば、“ハッピーエンドのネタバレ” をしていることになる。

 

 近年、若い世代を中心に、ドラマや映画はネタバレサイトなどでラストのオチを読んでから、おもしろそうであれば視聴するという層や、作品を10分程度にまとめて違法アップロードされたファスト映画だけ視聴するという層が、少なくないと言われている。

 

 ラストがどうなるのかと延々引っ張られるのが嫌で、手っ取り早く結末を知りたいという感情があるそうなので、『ペンディングトレイン』はそういった層の需要に応える形で、最終話のネタバレをしているのかもしれない。

 

 けれど、時代の移り変わりとともに視聴スタイルが多様的になってきたとはいえ、そんな最重要なネタバレを第1話の冒頭からしてしまうものだろうか。

 

 サバイバル系SFは、主人公たちに「元の世界に戻るなんて無理だ」と思わせる絶望的状況を突き付けながら、視聴者には無事に帰れるハッピーエンドなのか、元の日常に戻れないバッドエンド的な終幕なのかを伏せておいて、ヒリヒリ感を味あわせるのが醍醐味。

 

 ハッピーエンドのネタバレを見せていくことは、その醍醐味を放棄するような手法に感じる。

 

脚本家の術中にハマり、掌の上で踊らされている

 

 物語の最大の焦点となるオチのネタバレをするはずがないと考えれば、主人公たちが元の世界に戻ったようなシーンの数々は、ミスリードなのでは、とも思うのだ。

 

 主人公らが現代に戻っているのは別の世界線で、荒廃した未来に飛ばされた世界線の人間は、けっきょく現代に帰れないというラストも、可能性としてはゼロではないだろう。主人公たちがなんらかの方法で別の世界線に干渉し、その世界線を救うというストーリーかもしれない。

 

 挿入されていたシーンどおり、主人公たちが現代に戻るというオチならちょっとげんなりだが、それがミスリードで、主人公らが未来世界から帰れないというオチなら、いい意味で裏切られたと感じられそうだ。

 

 いずれにしても、今の筆者のように “どっちに転ぶのかわからない” とあれこれ考察している時点で、脚本家や制作陣の術中にハマり、掌の上で踊らされている状態なのは間違いない。

 

 ――今夜放送の第6話では、隣の車両の乗客たちとの対立が明確化していく模様。最終話のラストがどうなるのか期待しつつ、物語後半戦を楽しみたい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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