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堺雅人『VIVANT』綿密すぎる多層構造に脱帽、第1話から観直すと別視点の楽しみ方も【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.08.27 11:00FLASH編集部

堺雅人『VIVANT』綿密すぎる多層構造に脱帽、第1話から観直すと別視点の楽しみ方も【ネタバレあり】

 

“ヒットの方程式” がてんこ盛りで、本当にそのまま超絶おもしろく仕上げていることに心の底から驚嘆させられる。

 

 今夏最大の話題作、日曜劇場VIVANT(ヴィヴァン)』(TBS系)。

 

 堺雅人が2020年の『半沢直樹』第2シリーズ以来、「日曜劇場」に凱旋主演した本作。「日曜劇場」の『下町ロケット』主演の阿部寛、『陸王』主演の役所広司のほか、二階堂ふみ松坂桃李二宮和也といったゴールデン・プライム帯の連ドラ主演経験者がズラリと出演している。

 

 

 キャストが豪華なだけでなく、モンゴルで大勢のエキストラを動員した2カ月半に及ぶ大規模ロケも敢行しており、大作映画なみに時間も手間も制作費も惜しみなく注ぎ込んでいる。TBSの超本気がうかがえる大型ドラマだ。

 

 そして、そんな本作の制作陣のトップが、これまでも『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』などの演出を手がけてきた福澤克雄氏。福澤氏は今回、演出だけでなく、満を持して原作も手がけている。

 

■【ネタバレあり】すでに物語は “3層め” まで来ている!

 

 ここで、第6話までのストーリーや明かされている秘密をざっくり解説しておこう。

 

 大手商社に勤める乃木憂助(堺)は、140億円の誤送金事件の濡れ衣を着せられそうになる。カネを取り戻すため、中央アジア・バルカ共和国へ向かうも、紆余曲折を経て現地警察から追われる羽目に。

 

 そこで助けてくれた警視庁「公安」所属の野崎守(阿部)と協力しながらバルカ脱出を目指すのだが、誤送金事件なんて些細なことに思えるほど物語のスケールは広がっていく。

 

 本筋は、日本を標的に大規模テロを画策している国際的テロ組織「テント」との対決になるようだ。

 

 実は、乃木は自衛隊の影の諜報部隊「別班」に所属する超エリートなのだが、さらに「テント」のリーダーであるノゴーン・ベキ(役所)が、亡くなったと思われていた乃木の父親だったことが明らかになっている。

 

 ちなみにタイトルの「VIVANT」とは「別班」を意味する言葉だった。

 

 さらっとここまでの重大ネタバレをさせていただいたが、物語がかなり多層的で綿密に練り込まれていることがわかる。

 

 第1話から第3話を便宜上の “1層め” とすると、この段階では乃木は気弱で頼りない商社マンだと思われていた。だが第4話後半からの “2層め” で、実は冷酷な決断もくだす超有能な「別班」メンバーだと判明。さらに第5話終盤からの “3層め” で、「テント」リーダーが実父だと明かされるという具合に、多層構造になっている。

 

 2層めの情報を知ったうえで1層めのエピソードを観直すと、いろいろと新たに発見できることがあったり、違った見え方ができたりする。同じように3層めの情報を知ったうえで1層め、2層めを観直すと、さらに新たな発見や違う見え方ができる。

 

 たとえば、いまの段階で第1話から第3話あたりを観直すと、「能ある鷹は爪隠す」状態の乃木が、どのように野崎をあざむいていたかという別視点の楽しみ方ができる。

 

 今後も、実はあいつも「別班」だったとか、実はあいつは「テント」だったとか、実はあの2人は裏でつながっていたとか、実は最初から情報を握っていたとか、新事実が次々に明らされていくのだろう。

 

 そのように “4層め” や “5層め” に突入した段階で過去回を観直すと、また新鮮な気づきがあるに違いない。

 

■“失敗が許されないビッグプロジェクト” が大コケすることも

 

 多層構造のストーリーはヒットのセオリーで、王道とも言える。 また、「昨日の敵は今日の友」もヒットのセオリー。第5話では、第3話までの宿敵だったバルカ警察のリーダーと野崎が共闘するなど、少年漫画的な胸アツ展開が描かれていた。

 

 このように計算し尽くしたストーリーで、“ヒットの方程式” をこれでもかと詰め込んでいるのが『VIVANT』なのだ。

 

 とはいえ、言うは易く行うは難し。

 

 まず、複雑な計算を高密度で仕上げる必要があるため、方程式がわかっているからといって、誰でもマネできるものではない。非常に高いスキルを要するだろう。演出・原作を務める福澤氏は、そのあたりのことを誰よりも深く理解したうえで、『VIVANT』の全体像を描き上げたに違いない。

 

 あくまで筆者の感想だが、福澤氏は天性の才能で感覚的にモノを生み出すアーティスト気質というより、綿密に計算した設計図を描き、それをもとにハイクオリティで組み上げる職人気質なタイプな気がする。“天才的な芸術家” ではなく “超一流の建築家” という感じだ。

 

 さらに言うなら、エンタメの “ヒットの方程式” は、「数学」とは違って教科書どおりにやれば結果が出るものではない。実際、“絶対に失敗が許されないビッグプロジェクト” が大コケするなんてよくある話だろう。

 

 ここまで潤沢な予算をもらって、ここまでの豪華キャストを揃えれば、大ヒットさせるのは当然だろう――という強烈なプレッシャーのなかで、本当にきちんと大ヒットさせることはかなり難易度が高い気がする。

 

『VIVANT』の平均世帯視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は、第1話は11.5%とそれほど高い数字ではなかったものの、第2話11.9%、第3話13.8%、第4話13.4%、第5話14.2%、第6話14.3%と着実に数字を伸ばし、絶好調。また、第1話から第5話のTVerなどでの再生回数は、8月14日時点で2000万回を突破しており、これはTBS史上最速記録とのこと。

 

 多大なお金と過剰な期待を背負い、大ヒットが “義務” のようになっている状況下で、ここまでガチでおもしろいドラマを作り、高評価を獲得している福澤氏の手腕には脱帽する。

 

 今夜放送の第7話、新たな階層が示されるのかどうか、期待しながら視聴したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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