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木南晴夏『セクシー田中さん』イロモノのラブコメと決めつけている人にこそ観てほしい、上質なヒューマンドラマ

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.12.03 11:00FLASH編集部

木南晴夏『セクシー田中さん』イロモノのラブコメと決めつけている人にこそ観てほしい、上質なヒューマンドラマ

ドラマ『セクシー田中さん』で主演を務めた木南晴夏

 

 ジャンルは「ラブコメディー」になっているが、実際はラブコメ以上の要素がてんこ盛りで、上質な「ヒューマンドラマ」だと断言できる『セクシー田中さん』(日本テレビ系)。

 

 これまでバイプレイヤーとして活躍してきた木南晴夏が、ゴールデン・プライムタイム帯の連ドラ初主演を務める作品で、先週日曜に第6話まで放送されている。

 

 

 主人公・田中京子(木南)は、いわゆる陰キャなアラフォーOL。これまで一度も友達も恋人もできたことがなく、社内では変人扱いされていたが、夜はエキゾチックなベリーダンスを踊るダンサー・Saliに変身する。

 

 一方、田中の後輩の派遣OL・倉橋朱里(生見愛瑠)は、コミュ力が高い愛され女子。けれど、若くてかわいいことしか自分に価値はないと思い込んでおり、人生に虚しさと生きづらさを感じつつ合コンに明け暮れていたところ、たまたま訪れたペルシャレストランでSaliのダンスを見て感激。後日、実はSaliの正体が田中だと気づき、一気に彼女のファンになるのだった。

 

■“女の友情もの” という側面や成長譚という側面も

 

 そのほかのレギュラーキャラには、既婚者ながら全女性を愛するというペルシャレストラン店主・三好(安田顕)、堅物で口の悪い商社マン・笙野(毎熊克哉)、陽キャで女好きな商社マン・小西(前田公輝)、都合よく現れる朱里の男友達・進吾(川村壱馬)など、クセが強い男性キャラがズラリ。

 

 この4人が田中や朱里と恋愛展開になっていくので、ジャンル分けするならば、確かにラブコメディーなのかもしれない。

 

 けれど、正反対だった田中と朱里の絆が深まっていく “女の友情もの” という側面や、どこか人間的に欠けていた田中、朱里、笙野らがお互いに影響し合って変わっていく成長譚という側面もあり、涙を誘うシーンがけっこうあるのだ。

 

 田中は、これまで他者とのかかわりを極力避けて、根暗人生を歩んできた。しかし、ベリーダンスを始めたことで、もともとあった心の芯がさらに強くなっており、朱里はそんなブレずに我が道を邁進する田中に心酔する。

 

 朱里は朱里で “愛され女子” を演じ続けていたものの、田中が周囲からバカにされると豹変。性格の悪さを隠そうともせず復讐の鬼と化し、大好きな人のために自分を縛りつけていた “愛され女子” という呪縛から解き放たれていく。そして田中は、そんな朱里に感謝し、心を開いていくようになる。

 

 一方、朱里と同等かそれ以上に劇中でどんどん変わっていくのが、堅物・笙野。当初は露出の多いダンサー衣装の田中を見て、「あんたいくつだよ、オバサンが。なんつー格好してんですか、痛々しい」などと暴言を吐いていた男が、彼女の人間的魅力に惹かれていくとともに、自分の幼稚さや間違いを自覚し、改心していく。

 

 敵対していた朱里も笙野に一目置くようになり、いつの間にか田中を支える存在にもなっている。

 

 また、チャラい属性の三好や小西は一見軽薄そうに見えるものの、意外な角度から真理を突いた発言をすることもあり、深みのあるキャラクターとして描かれているのだ。

 

■マニアの間だけで埋もれるにはもったいない

 

 第6話は、田中がメイクなしでベリーダンスしている動画がたまたまアップされ、それが会社でも広まってバレてしまう。同僚たちから奇異の目に晒されていると感じた田中は、恐怖心から出勤できなくなってしまう展開だった。

 

 そんなとき、家に引きこもっていた田中のもとに笙野が現れ、こう熱弁するのだ。

 

「もし本当に会社でバカにされたりネタにされてるなら、それは田中さんの怠慢だと思います。ズバリ、宣伝不足です。田中さんをちゃんと知れば、みんな田中さんを好きになりますよ。

 

 いまもし好かれてないと思うなら、それは田中さんが自分を見せてないからですよ。会社の人たちに、前の俺みたく、『おっぱい出して踊ってるオバサン』って思われたまま終わるの悔しくないですか? 僕は悔しいです!」

 

「たとえばそうだ、僕にとって田中さんは “隠れた名作映画” なんですよ。コンセプトが伝わりにくかったり、キャストが地味すぎたり、邦題がくそダサかったり。宣伝がヘタすぎていまいち見る気にならない映画ってあるじゃないですか。

 

 でも、人にすすめられて観たらおもしろくて、そういうのって今度は別の誰かに教えたくなるでしょ。すんげぇ最高だから観てよ、観たら夢中になれるからって。

 

 マニアの間だけで埋もれるにはもったいない逸品なんですよ、田中さんは!」

 

 これは劇中のキャラクターが主人公に向けたセリフだが、『セクシー田中さん』という作品自体の的を射た言葉でもある気がした。

 

 おそらく、このドラマの存在を知ってはいるが観ていないという層は、木南演じる主人公がセクシーな衣装を着て踊る、イロモノのラブコメだと思っているのではないか。

 

 もちろん表面的にそういう要素があるのは事実だが、本作はもっと奥が深い “上質なヒューマンドラマ” なのである。

 

 制作チームの宣伝がヘタと言いたいわけではないが、本作の公式サイトや予告ムービーなどを観ても、『セクシー田中さん』という作品の本当の魅力はなかなか伝わっていないと感じる。

 

 このままドラママニアの間だけで評価される “隠れた名作” のようになってしまうのは惜しい。もし、イロモノのラブコメという先入観で敬遠していたなら、今夜放送の第7話からでも観てみてほしい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

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