集英社が運営する漫画アプリ「ジャンプ+」の新連載が物議をかもしている。これまで、アニメ放送中の『ダンダダン』や映画も大ヒットした『SPY×FAMILY』などを連載してきた「ジャンプ+」。12月2日に配信されたのは、『ドラマクイン』(市川苦楽)という作品だ。
「絵柄的には一見ほのぼのしたSFものにも見える同作ですが、センシティブな内容に波紋も大きいようです。
同サイトには《宇宙人が地球を救ってから、人間と宇宙人が共に住むようになった日本。工場で宇宙人の上司にこき使われるノマモトは、家族を宇宙人に殺されたという北見と出会う。仲を深める2人だが、ある日北見がとんでもないことをしてしまい…》と作品説明があります。
作中では、言葉が通じない宇宙人の傍若無人な態度が強調されて描かれているほか、地球の人間からすればいわば “よそもの” である宇宙人を疎ましく感じる主人公らが、その感情を発散させる様子が “スッキリ” と描かれる場面もあり……こうした描写に『外国人差別をほうふつとさせる』と感じた読者も多かったようです。
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さらに作中では『宇宙人が地球を救った』『その後、高度な技術を持つ宇宙人が人間と共生を始めた』という設定が描かれますが、登場人物の一人が『地球存亡の危機などなかったのではないか』と主人公に語りかける場面もあります。こうした描写には陰謀論を思い起こす感想も散見されました」(エンタメ担当記者)
「ジャンプ+」は、各作品の各話に感想を投稿できる仕様になっているが、確かに同作のコメント欄を見てみると、現在、日本各地で話題にのぼっている外国人差別を思い起こしたという感想も少なくない。実際、違和感を覚えた読者も多かったようで、Xにはこのような感想が投稿されている。
《生活に根づいた異邦人を打倒すべき搾取者と描くのは移民への被害者意識が蔓延する今の日本では危険すぎるだろともやっぱり思え…》
《主人公が「宇宙人」に抱く感情が素朴な排外主義的なものにみえてあまり作品に入りこめなかった。今のところは主要な登場人物が「平和的な侵略」という言葉を使うなどよくある陰謀論的な雰囲気の方が強いと思う》
《宇宙人をほかの人種や国籍者に当てはめると人種差別のとんでもない正当化が見れるんだけど》
一方で同作に好意的な感想も多く、「マンガ大好き芸人」を公言する吉川きっちょむは、自身のXで《ジャンプ+新連載めちゃくちゃ面白かった! 貧困や閉塞感、先行きの見えない毎日を描くのが上手いし絵がめちゃくちゃ好き!》と興奮のポストをあげて次作を待望している。
「まだ第1話が配信された段階なので、作品自体のメッセージを読み取るには早計かもしれませんが、早くもマンガ好きの議論の種になっていることは間違いありません。
ただ、現在、外国人差別やヘイトスピーチは繊細な問題です。感想のなかには、『今後、主人公らが自分の排外主義に気づく流れになるのでは』とするものもありました」(同)
「ジャンプ+」内の同作の煽り文句には「目指せ“スッキリ”!」の文字が躍るが、その反響は “スッキリ” とはいかなかったようだ。
( SmartFLASH )