エンタメ・アイドル
堀井雄二×中川翔子、ドラクエ対談【後編】ファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の裏話&鳥山明との制作秘話まで語り尽くした
1988年、社会現象となったRPGの金字塔『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』がリメイクされ大ヒット中。そこで、「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親である堀井雄二氏と、芸能界きってのドラゴンクエストファン・中川翔子によるスペシャル対談が実現した!(この記事は後編です)
【関連記事:中川翔子は『ドラクエ』堀井雄二と友人「神なのに呼ぶと来てくださる」】
中川 ファミコン版の『III』(『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』)を開発するうえでいちばん大変だったことはなんでしょうか?
堀井 じつは、『III』まであんまり悩まなかったんですよね。『I』『II』(『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』)は容量が少ないから、やりたかったアイデアを切ってきたんです。『III』で容量が増えたので、転職もできるし、セーブ機能もついた。やりたいことをやれた気がします。ただ、メモリーが少なかったので、タイトルを切りました。だから、『III』のタイトルは文字だけ(笑)。
中川 『DRAGON QUEST III』って文字だけが出るのってカッコいいですよね。シンプルで。
堀井 HD-2D版にもちゃんと入れました。その文字タイトルが一瞬出るんですよね。
中川 おしゃれー! けっこう『III』ってやることも多いし、呪文もモンスターも一気に増えた。さらに表の世界だけじゃなくて、『I』のフィールドが出てくるとか、驚きが何個もありましたよね。ボリュームが全然違います。そんななかでも職業の「遊び人」を入れたところとか。
堀井 そうなんです。そこはやらせてもらいましたね。タイトルよりも「遊び人」優先だろうと(笑)。あと、『ポートピア連続殺人事件』(1983年)のようなことを、『III』のひとつの町でやろうとしたんですよ。でも、メモリーが足りなくて切っちゃったんです。
中川 それは残念。ファミコン版の『III』が発売されたとき、社会現象になりました。
堀井 僕ね、自転車で行列を見に行ったんですよ。
中川 えーっ!?
堀井 寒いなか、すっごく並んでいたので、申し訳ない気持ちになって、「(並んでくれて)ありがとうございました」っていう感じでしたね。
中川 ちゃんと、その現象を自分の目で見に行ってるっていうのがすごい。鮮烈な思い出になっているんですね。
堀井 なっていますね。
中川 時代の風を読む堀井さんがすごすぎると思います。
堀井 ミーハーなんで(笑)。僕はゲームを作るけど、プレイヤーでもあるんです。自分で作ってプレイしてみて、ダメだなって直したりする。
中川 こだわりを貫くよりも?
堀井 いちユーザーとしての視点を大事にしていますよ。
中川 以前、堀井さんにフレンドになっていただいたら、めちゃくちゃ強かったことがあって(笑)。お忙しいのにプレイヤーとしてやり込んでいらっしゃるんだなと思ったんですよね。
堀井 今回の『III』も発売前にかなりやり込んで、気になる部分を修正しました。発売した後は意外とやらない。ここを直したいと思ったら嫌だから(笑)。
中川 そこは切り替えるんですね。
堀井 この前ね、『FANTASIAN』を60時間くらいやりました。けっこう大変だった。
中川 でも、笑ってらっしゃるから、楽しまれたんですね。
堀井 ゲームは楽しいですよね。なんやかんや言いながらね。
中川 骨の髄までお好きなんですね、ゲーム自体が。でもゲームだけじゃなくて、人狼とかサバゲーとかも早かったですよね。
堀井 そうだね。今、「テキサスホールデムポーカー」にハマっていて。
中川 ポーカーも! 今いちばん気になっている新しい物事ってありますか?
堀井 会話生成プログラムの「Cotomo」ってあるじゃないですか。あ、知らない?
中川 コトモ……。知らない。どうしよう。知らない。
堀井 けっこうすごいですよ。
中川 話変わりますが、ドラクエの個性的なキャラクターたちは、まず堀井さんのなかにイメージがあって、それを鳥山(明)さんがイラストにするんですか?
堀井 そうです。鳥山さんはおじいさんやおばあさんとか、本当に上手なんですよね。一方で、「主人公のほうが難しい」って言うんですよ。主人公はわりと無個性でイケメン寄りなので、パターンはそんなにないんですよね。やり取りを何回もしてね。あんまり色をつけちゃうと、プレイヤーじゃなくなっちゃうし。
中川 確か『VI』(『ドラゴンクエストVI 幻の大地』)かな、主人公の没デザインが元になったカッコいい人いましたよね。
堀井 テリーがそうです。ちょっと主人公っぽくないなと思ったけど、画がもったいないので、テリーというキャラクターにして登場させたんですよね。鳥山さんはすごく気さくな人だったんで、言いやすかったですね。
中川 「あ、わかりました」って考えてくれるんですか?
堀井 そうそうそう。
中川 聞いちゃっていいのかな。今年発売予定のHD-2D版『ドラゴンクエスト I&II』の制作は、終わったんですか?
堀井 まだ絶賛開発中です。
中川 たぶんギリギリまで調整されるんですね。
堀井 そうそう。前は『I』『II』『III』と出して、『III』で最後にどんでん返しがありましたが、今回『III』から出して『I&II』が出るので、『II』の終わりに、ちょっと入れたんですよね。
中川 えー! 何? 聞いちゃっていいんですか!?
堀井 内容までは言えないです(笑)。
中川 お願いだから人類には、みんなちゃんとドラクエに出会ってほしい。
堀井 そうですね。若い人たちにもやってもらいたい。
中川 次の『I&II』の後、『IV』『V』『VI』も待っています。 ドラクエの発売日は、「生きててよかった!」といちばん感じます。
ほりい・ゆうじ
1954年1月6日生まれ 兵庫県出身 早稲田大学を卒業後、フリーライターを経て、ゲームデザイナーに転身。1983年、『ポートピア連続殺人事件』を手がける。1986年、『ドラゴンクエスト』を発表。1988年、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は空前の大ヒットを記録した
なかがわ・しょうこ
5月5日生まれ 東京都出身 愛称は「しょこたん」。2016年、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』にアリーナ役で出演。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど活動は多岐にわたる。音楽活動では数々の人気アニメや映画の主題歌も担当し、その人気・知名度は世界にも広がっている
写真・木村哲夫
スタイリスト・渡邊アズ(likkle more)
ヘアメイク・灯(ROOSTER)
衣装協力・ツモリチサト