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工藤夕貴、ハリウッド主演から酒造りに飛び込み16年「お酒は自分の“子供”」静岡・富士宮で充実の日々

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記事投稿日:2025.04.27 06:00 最終更新日:2025.04.27 11:26
出典元: 週刊FLASH 2025年4月29日・5月6日合併号
著者: 『FLASH』編集部
工藤夕貴、ハリウッド主演から酒造りに飛び込み16年「お酒は自分の“子供”」静岡・富士宮で充実の日々

工藤夕貴は自分の田んぼで取れたコシヒカリで日本酒を造っている(写真・保坂駱駝)

 

 テレビや映画に活躍の場を持ちながら、異業界に進出した人気者たち。女優の工藤夕貴(54)は現在、芸能活動をおこないながら、静岡県富士宮市で農業カフェ経営をしている。そのことはたびたび報じられてきたが、冬場は近くの酒蔵で酒造りに勤しむことは、ほとんど知られずに来た。

 

「アメリカ滞在中の29歳のときに体調を崩し、食の大切さに気づいてから、自分の農場を持ちたいと思いました。富士宮で農業を始めて、もう20年以上になります。家族で昔よく泳ぎに来ていた本栖湖(もとすこ)が近くて馴染みがあり、まとまった土地が売りに出ていたので、ほとんど即決でした。無農薬の自然農法でおもにお米と、季節に応じた野菜を育てています。一緒に田んぼをやっている方が手伝っていたのが富士錦酒造で、私も18年前からおつき合いさせていただいています」

 

 

 工藤が「純米吟然酒 賜(ギフト)」を初めて仕込んだのが2009年。自分の田んぼで取れたコシヒカリをほぼ磨かず、吟醸酒用の地元の静岡酵母を使って作っている。

 

「今どきの吟醸香の強いお酒はあんまり好みじゃなく、かといって、香りのないお酒も物足りない。全国からいろんなお酒を取り寄せ試飲した結果、この酵母に惚れ込み、最初から変えていません。むしろ、酵母に合わせて試行錯誤してきました。米も麹も静岡産を使い、水は加えません。販売に漕ぎ着けたのが2013年でした。私、お酒を“子供”だと思って育てているんです。名前もつけていて、今年は“夕紀子”(笑)。だからやっとお酒になる、搾りの工程はお嫁入りと同じで、決まってする儀式があります。民謡歌手の伊藤多喜雄さんから教わった『秋田長持唄』を歌って聴かせた後、仕込み蔵から搾りをする槽場(ふなば)に“娘”を運び込むんです。婚礼の祝い唄で、嫁入り道具の箪笥を、長い棹で人足が担ぐことから『長持ち』と呼ぶんです。まさに、“蝶よ花よ”と育てた娘をお嫁にやる思いです(笑)」

 

 その“輿入れ”の様子を取材した。工藤は小ぶりの袋に入れられたもろみを手際よく、昭和期に作られた素朴な圧搾機に敷いていく。「ずいぶん上手くなったもんだ」と、かたわらから杜氏の小田島健次さんが声をかける。

 

「先代の杜氏が引退され、2011年に遠野からいらした今の小田島さんに代わられました。小田島さんは、最初は『飯米ということだけでも難しいのに、たった10%を磨いたコシヒカリで美味しい酒造りなんて無理に決まっている』と懐疑的でした。しかし、その年のお酒が完成してから、わざわざ直接お電話をいただきました。『自分の思い込みが違っていた。いいお酒になって驚いた。米の力がすごかったのかもしれない』と謝られたんです。その物作りにまっすぐな姿に感銘を受けて、杜氏さんにずっとついて行きたいと思いました。そして富士錦酒造の皆さん、特に製造責任者の清信一代表取締役には親身になっていただき、感謝しかありません。今後はもっと売れるお酒を作って、少しでも利益を出さなきゃ(笑)。

 

 思えば、女優の私もいろんな人の力によって育てられたんですよね。12歳でスカウトされ、初めは歌手になりたかったのに、歌はまったくヒットせず、むしろ女優のお仕事がどんどん舞い込みました。主演させていただいた『台風クラブ』(1985年)の相米慎二監督など、何もわかっていない私をとことん追い詰めることで、お芝居は頭でなく体と心でするんだ、と本気で教えてくださった。1989年にジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』に出演できたのは、初めて出演した映画『逆噴射家族』(1984年)を監督が観ていてくれたから。かなり衝撃的な内容で、絶対落ちてやろうと、オーディションでも生意気な態度で通したら、逆にそこがおもしろいと受かってしまった作品でした(笑)」

 

 その後、工藤は海外作品へ出演するため、ハリウッドに拠点を移した。

 

「ジムの現場を経験し、アメリカで挑戦したいという大きな目標を持てました。LAに移住しましたが、オーディションに落ちてばかりで、タトゥーショップのアルバイトとベビーシッターを掛け持ちしたり、けっこう苦労したんです。タトゥーは入れていませんが、なぜか興味はあったんです(笑)。『ヒマラヤ杉に降る雪』(1999年)でハリウッド映画の主役を勝ち取ったときは、待ち受ける未来は希望しかありませんでした。でも、体調不良に悩まされ、やがて父が末期がんを患ったこともあり、富士宮に拠点を移したんです。あれだけ華やかな場所にいたのに、のどかな土地に落ち着いちゃっているなぁ、と思わなくもないですが、今はとても充実した生活を送っています」

 

 海外の映画祭でレッドカーペットを踏んだ国際女優の日々を思い出し、工藤は一瞬遠い目になったが、すぐに持ち前の笑顔を見せ、できたばかりの酒に満足げに口をつけた。

 

くどうゆうき
工藤が精魂込めた「賜」(500ml 税込4950円)は150本限定。経営するオーガニックカフェ「カフェ・ナチュレ」(富士宮市)か富士錦酒造で購入可能。2024年にはムード歌謡で知られる、ロス・インディオスとコラボし、新曲『コモエスタ・ロスアンジェルス』をリリース。5月11日には新宿ケントスにてライブをおこなう。

 

取材/文・鈴木隆祐

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