
映画『国宝』で「藤駒」役を演じた見上愛
吉沢亮主演、横浜流星共演の映画『国宝』が、6月6日の初日から7月6日までの31日間で、興行収入約44億8000万円、観客動員数約319万人を突破したことが7月7日、配給元の東宝から発表された。4週連続で週末成績が前週比増という。
「原作は、吉田修一さんによる上下巻の長編小説です。映画も、上映時間が3時間近い大作になりました。歌舞伎役者を演じた吉沢さんと横浜さん、渡辺謙さんらは、歌舞伎の演目である『曽根崎心中』などを作中で演じ切りました。吉沢さんらは歌舞伎役者を演じるにあたって、作品に出演もしている歌舞伎役者の四代目中村鴈治郎さんらから、約1年半も指導を受けたそうです」(映画業界関係者)
映画では、任侠の家庭に生まれながら歌舞伎の世界に飛び込んだ主人公、喜久雄の、芸の道に身をささげる一代記が描かれるが、観た人からは《映画「国宝」では藤駒、小説と違う名前にしたのは何故なのだろうか》と、登場人物の名前の変更に疑問を投げかける投稿もあった。
見上愛が演じる藤駒は、京都の舞妓で、登場時間は少ないものの、主人公の喜久雄の人生に重要なかかわりを持つ役だ。前出の関係者が続ける。
「この役は、原作では『市駒』という名前です。映画に限らず、漫画でも小説でも登場人物と同姓同名の、実在の人物がいるのはよくあることなのですが、今回『市駒の名は避けたい』という意見が、祇園関係者からあったとも聞きます。
というのも、舞妓の内幕を描いた『京都花街はこの世の地獄~元舞妓が語る古都の闇~』(竹書房)の著者のひとりで、元舞妓のフリーライター、桐貴清羽(きりたかきよは)さんの舞妓時代の名前が、市駒なんです。桐貴さんは2022年ごろから、未成年の舞妓が受ける飲酒の強要や性被害などを告発してきました。小説は偶然だったと思われますが、現役時代は短期間ながら、いちばん人気の舞妓だったのが市駒です。京都の花街ではまだ、ハレーションがある名前なんだと思います」
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桐貴さんが最初に花街での性被害を告発したのは、本誌2022年7月12日号だった。今回、登場人物の名前が変わったことについて本人に問い合わせると、こんな答えが返ってきた。
「原作小説が刊行された2018年に、市駒の名前が登場人物にあることは知っていました。もちろん、吉田先生とは面識はないので、偶然だと思います。でも、私と関わりがある名前が小説に出てくるのは、素直にうれしいじゃないですか。じつは、祇園関係の方から映画では名前が変更されていたのを知らされて、ちょっとだけ悲しかったです。
でも、歌舞伎関係の方は役者さんも含めて、お座敷にはよく上がられます。吉田先生は3年間も取材にかけたということなので、実際は無関係でも市駒は避けたほうがいいと、製作関係の方が考えても不思議はないと思います。でも、映画は観るつもりですよ」
じつは、歌舞伎指導をした中村鴈治郎とは面識があるのだという。
「祇園ではありません。鴈治郎さんが、私が舞妓を辞めてから勤めていた東京のお店に何度かお見えになったことがありました。芸事に人一倍の愛情を持って、でも厳しく接していることが、私のようなものでも一目でわかる方です。愛情が深くて、優しく接していただけました。予告編でお見かけしましたが、かなりふくよかになられていました。お酒をたくさん飲まれるので心配ですね」
『国宝』では、歌舞伎界だけでなく舞妓の描かれ方にも注目だ。