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『坂本冬美のモゴモゴ紅白』・第10回/なぜか、デビュー6年めのわたしの名前が『紅白』の司会候補に

坂本冬美
「テレビ40年・日本そして家族」がテーマとなった『第43回NHK紅白歌合戦』で司会を務められたのは、紅組が連続テレビ小説『ひらり』のヒロイン・石田ひかりさんで、白組が堺正章さん。堺さんは2年連続の大役です。
『紅白』の司会に関しては、秋風が吹き始めるころから、毎年 “今年は◯◯さんが有力” とか “◯◯さんが浮上!” とか、新聞、週刊誌を賑わすのが恒例ですが、火のないところに煙は立たないと言いましょうか、当たらずといえども遠からずと言いましょうか……モゴモゴモゴ(笑)。
この年、お名前が挙がったのは、時代を前に進めたいというスタッフの想いがあったのだと思います。宮沢りえさん、小泉今日子さん、西田ひかるさん、森口博子さん……ら、錚々たる方々です。で、なぜかそのなかに、なんとなんと、わたしの名前もあったそうなんです。
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すみません。そうなんです……というのは、わたしにはなんのことなのか、まったくわかっていなかったものですから(苦笑)。
ずっと後になって聞いたところでは、演歌・歌謡曲部門のプロデューサーの方が、わたしと夏ちゃん(伍代夏子)のコンビを候補として推薦してくださったとか、そうじゃなかったとか。アンビリーバボーです。
ーーえっ!? 『紅白』で司会を務めるわたしを観てみたかった?
そんな無責任なことは言わないでください(苦笑)。夏ちゃんは大丈夫ですが、わたしには無理です。絶対に無理です。
天地が逆さまになっても、空から槍が降っても、太陽が西から昇ったとしても、わたしが『紅白』の司会をすることだけはあり得ません。考えただけで、ゾワゾワしてきちゃいます。怖すぎて、熱に浮かされそうです(苦笑)。
最終的に、歌手としては同期デビューの石田さんに決まったのですから、時代を前に進めたいというスタッフの想いがあったというのは、そうなのかもしれないと思いますが……わたしは、ないですよ。ないない、ないです(笑)。
森口博子さんの『スピード』でスタートした第1部は、中盤にイルカさんの『なごり雪』、そして南こうせつさんの『神田川』を配し、最後は紅組が八代亜紀さんの『愛の終着駅』で、白組が小林旭さんの『さすらい』です。
第2部では、この年初出場を果たしたあやちゃん(藤あや子)が『こころ酒』を熱唱。途中、小林幸子さんが、この日のためにと用意した6万2500個の電球つき衣装が灯らないというハプニングもありましたが、48番めに登場させていただいたわたしもなんとか無事に『男惚れ』を歌い上げ、後はトリの由紀さおりさんと大トリ北島三郎さんを残すのみです。
ハードディスクの容量が極端に少なく、新しいものを入れるためにどんどん忘れていくしかないわたしですが、この年のことはとっても印象に残っています。
故郷を思わせる茜空の下で、『赤とんぼ~どこかに帰ろう』という『紅白』史上初めて、トリでメドレーをしっとりと歌い上げられた由紀さんは、今も変わらず、とっても優しい大先輩であり、プロとはどういうものかを身をもって教えてくださる尊敬すべき先輩のお一人です。
この年、お亡くなりになった作曲家・中村八大先生の『帰ろかな』を熱唱された北島さんのステージは、ただただ圧巻の一語です。このときの北島さんは、デビュー30周年の56歳。わたしは現在58歳で、来年がデビュー40周年。
う~~~~~ん、この貫禄の差は、いったいどこから生まれるのでしょう? 答えは……モゴモゴモゴ(苦笑)。
写真・中村 功、産経新聞
取材&文・工藤 晋