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片岡鶴太郎、勝新太郎の映画『座頭市』に呼ばれたら台本5枚で驚く
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.12.20 16:00 最終更新日:2019.12.20 16:00
芸人、タレント、俳優、画家、ボクサー、ヨガと多彩な才能を持つ片岡鶴太郎(64)。
しかし、もともとは元祖リアクション芸人と呼んでも過言ではない人物だ。そこで、鶴太郎に役者の道に進んだ理由を聞いた。
――鶴太郎さんが役者の道に進んだのは、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のたけしさんやさんまさん、紳助さん、山田邦子さんの共演が影響したと聞きました。
鶴太郎 私はものまねから来てるから、そのメンバーとコントをやるとき、浦辺粂子さんに扮したりしてました。だから、素の部分でいうとやっぱり非力なんですよ。みんなは芯のキャラを持っている。そこが大きな違いだなと。
私は誰かに扮してやる。それは役者的な作業だなと思って。私の根源的な資質は、何かに憑依して表現することだと、『ひょうきん族』で気づかせてもらいました。
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――たけしさんやさんまさんも、タケちゃんマンやブラックデビルに扮してましたが。
鶴太郎 タケちゃんマンとブラックデビルのやり取りはコントといえども、結果2人のトークになっていくじゃないですか。でも、この2人の中に切り込んでいけるかというと、それはなかなか難しいと。
そういった意味では、真剣勝負でやって来たからこそ、自分は何をやればいいのか如実にわかりましたね。私は憑依するという方向性、つまり役者としての道に行きたいなと思いました。
――役者業でも成功されて、勝新太郎さんの映画にも出られました。
鶴太郎 勝さんが監督の『座頭市』に呼ばれましたね。
――勝さんは演出が独特だと聞きますが、戸惑ったことはなかったですか?
鶴太郎 2時間の映画で台本が5~6枚だから。
――いや少ない! 台本ペラペラですやん(笑)。普通2時間の映画の台本だったら厚さ1cm以上ありますよね。
鶴太郎 全部、箇条書きだから。このシーンを撮るってなって、朝、監督のところに呼ばれるの。そこで「今日のシーンだけど」って口だけの説明があるんですよ。「牢獄の中で市さんがいじめられるから、それを助ける。市さんも恩を感じる役だから」って。
――主役を助けるいい役ですね。
鶴太郎 それで勝さんが俺に「名前はね……」。
――え? 鶴太郎さんの役の名前が決まってなかったんですか(笑)。
鶴太郎 決まってないの。「名前ね……鶴」。
――いや、そのままじゃないですか!
鶴太郎 エンドロールも「鶴・片岡鶴太郎」ですから(笑)。
――名前の由来がすぐにバレますね。
鶴太郎 それで勝さんが「飯が出てくる。でも市さんは見えなくてわからないから、鶴が自分と市さんの飯を持ってきて市さんに渡す。で、渡すときに悪いやつがいて鶴にわざとぶつかって、みそ汁が転がる。そのこぼれたみそ汁を市さんが地べたを這って吸うから」って。このシーンはすごかった。撮影所の土の部分に水たまりができてるの。そこにみそ汁がこぼれて、それを勝さんが「ズルズル」と吸うんですよ。この芝居はしびれましたね。
――それって本当に口を付けているんですか?
鶴太郎 もちろん飲んでないんだけど「ズルズル」って音を出すから、飲んでるように見えるのよ。それがね、本当にうまそうに飲んでて。俺も吸ってみようかなってぐらい。
――(笑)。それぐらい芝居がリアルだと。
鶴太郎 それで市さんが鶴にお礼を言って、「名前は?」って聞くから、そのときに鶴は首を1回グルっと回して「鶴ってんだ」って言うと勝さんから説明を受けたの。それで、俺が首を回して「鶴ってんだ」ってやったら、勝さんが「逆、逆」って(笑)。
――回す方向が逆だと(笑)。こだわりがあるんですね。
鶴太郎 そう。「でも俺はこっちの方が回しやすいんだけどな」とか思いながら。
――そんな奇才・勝新太郎さんの演出を受けた鶴太郎さんが、今度お芝居をするそうで。
鶴太郎 はい。三谷幸喜さん作の『罪のない嘘』という舞台です。ぜひお越しください。
取材・文/インタビューマン山下
1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退。現在はインタビュアー・お笑いジャーナリスト
※『罪のない嘘』東京公演は来年1月9日から19日まで。大阪公演は1月23日から25日、愛知公演は3月28日から29日