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名曲散歩/ラッツ&スター『め組のひと』TikTok決めポーズで再ブーム
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロはラッツ&スターの『め組のひと』。若い子たちが、TikTokの決めポーズ「めっ!」をして再ブームになったよね。
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マスター:これはシャネルズからラッツ&スターに名前を変えて、最初に売れた曲なんだよね。
お客さん:あの頃、不思議だったんだけど、なんで名前を変える必要があったの?
マスター:それはほら、シャネルズが売れっ子になったことで、同じ名前のブランドから……。
お客さん:問い合わせが入ったってことか。
マスター:そう。当時の担当ディレクターによると、スペルの最初を「C」から「S」に直そうとしたけど、発音は同じだから。だったら、一気に名前を変えようとなって、「ラッツ&スター」にしたそうだよ。
お客さん:「RATS&STAR」、ネズミがスターになるという意味だし、英語で書くと左から右に読んでもラッツ&スターだから、しゃれてるよね。
マスター:その改名後の第1弾シングルが、1983年資生堂のアイシャドウのCMソングに起用された『め組のひと』だったってわけだ。
お客さん:だから「めっ!」なんだね。
マスター:結果、60万枚以上を売り上げ、『ランナウェイ』『街角トワイライト』に次ぐ、3作目のオリコンチャート1位に輝いた。
お客さん:マイナスをプラスに変えての1位獲得か、学ぶべきところがあるな。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中(※現在はコロナの影響でお休み)
参考:富澤一誠『J-POP名曲辞典300曲』(ヤマハミュージックメディア)