
「俺、ひとりになった感覚がないもん」と萩本欽一(写真・木村哲夫)

萩本欽一は妻を思いながらも、前を向き続ける(写真・木村哲夫)
■今は寂しくないかって? ひとりになった感覚ないもん、俺。
後日、亡くなったあとのことね。看病していたスミちゃんの妹に、「俺が知らないスミちゃんの話があったら教えてほしい」ってお願いしたの。
「お兄さんはね、最期、立て続けにお見舞いに来たでしょ? あれ、私にとって “地獄” だったんだよ。お兄さんが見舞いに来るとわかると、スミちゃんから私に『眉毛だけでもいいから、引いてほしい』って電話がくるの。私が畑仕事をしていても『急いで来て!』って。大変だったのよ」
俺、じつはそのことが不満だったの。いつも化粧してるスミちゃんを見て、「どこをほっつき歩いてるんだろう」と思ってた。そうじゃなかったの。俺が来るから、化粧してた。スミちゃんは俺に、いつもきれいに化粧をした姿を見せるという、プレゼントをくれていたんだね。スミちゃん、俺も「ありがとう」だよ。
今は寂しくないかって? ひとりになった感覚ないもん、俺。友だちもそうだけど、葬式に行くとさ、「最後のお別れです」ってみんな花を持って棺桶に入れるでしょう? 俺は別れない。手も合わせない。今までどおり。悲しいのは、みんなお別れしたからだよ。俺、してないから。
やりたいことっつったら、そうだなぁ。スミちゃんが作ってくれたあの雑煮が食いてえな。
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