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アンタッチャブル・柴田が聞く「ネコ科動物」がっかり雑学(1)

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2016.07.31 09:00 最終更新日:2016.08.23 15:47

アンタッチャブル・柴田が聞く「ネコ科動物」がっかり雑学(1)

 

  世は空前のねこブーム! 家のねこに限らず、ネコ科の動物は動物園などでも人気者。しかし、彼らには意外なほど残念なポイントがあった。かわいいだけじゃないネコ科動物のトリビアを、お笑い界の「動物王」アンタッチャブル・柴田と「ねこの博物館」館長・今泉忠明先生が徹底トーク!

 

●前哨戦! 2人はいかにして「動物知識」を身につけた?

 

今泉忠明(以下、今):柴田さんは、動物園にもよく行かれるそうですね。

 

柴田英嗣(以下、柴):ちょうど昨日も、那須と群馬のサファリパークをハシゴしてきたところです(笑)。僕が動物を好きになったのは、「なんかヘンなヤツがいるな」っていう、興味から。そこで調べているうちに、詳しくなった感じです。たとえば「同じサバンナにいるのに、なぜゾウは鼻が長くなって、キリンは首が長くなったんだ?」みたいな。「なぜ?」からスタートして、理由を知ると、人に話したくなる。先生はど ういったきっかけで、動物学者の道へ?

 

:うちは、父が動物学者だったので、採集を手伝わされていたんです。小学生のころには、ネズミをトラップで捕まえて、剝製を作っていましたよ。

 

:えっ、すごい!

 

:調査用の標本は、簡単なんですよ。そんななかで私が大学生のとき、イリオモテヤマネコが発見されて。新種として記載したのが父だったんですが、「お前、ヒマそうだから世話をしろ」と、研究用のイリオモテヤマネコの世話をまかされました。宅配便で、イリオモテヤマネコが自宅に送られてきたんです(笑)。それがきっかけで、ネコ科の研究の道に進むようになりました。

 

:イリオモテヤマネコって、宅配便で送れるんですね!?(※もちろん、特別な許可が必要です)。僕は、めちゃくちゃデカいメインクーンを、2代にわたって飼っていました。そのねこ、嫁さんが連れていっちゃったんですが…(泣)。それはともかく、今日は、先生も驚くようなネコ科動物の雑学、ぶつけていきますよ!

 

●ラウンド1「ユキヒョウは、ヒョウとの競合に負けて高山に逃れた」

 

:まずは、簡単なところから。普通のヒョウとクロヒョウは、見た目が違いすぎるけど、まったく同じ種なんですよね?

 

:そうです。黒変種といって、ヒョウ以外にもジャガーの黒変種でブラックジャガーがいます。ほかにも、チーターと柄が大きく違うキングチーターというのがいますが、じつはこれもチーターの変異種で、まったく同じ生き物なんです。

 

:ライオンとホワイトライオン、トラとホワイトタイガーも同じ種類。ただし、ユキヒョウはヒョウとはぜんぜん違う。ユキヒョウって、最高で6000mという高地に暮らしているけど、人間だったら酸欠で死んじゃう過酷な環境。そんな高地で最強のハンターなんていわれてるけど、結局は暮らしやすいところから追い払われた、情けないヤツなんですよね。

 

:おそらくはヒョウとの競合に負けて、だんだんと厳しい環境へ追いやられたのでしょう。

 

:それって、笹しか食べられない場所に追いやられた、ジャイアントパンダと同じじゃねーか、と。どこが最強なんだって思いますよ。でも、僕は「負け組生き残り説」というのを唱えていて。負けてイヤな場所に行ったものほど、長く生き残りやすいという。ラクダなんか、砂漠と高山にしかいませんよね。どんだけ負けてんだよ!(笑)

 

:たしかに、厳しい環境では、古い形質を残したものが、数多く生き残っています。ラクダ科は現生の偶蹄類のなかでも、もっとも古いグループのひとつですから、「負け組生き残り説」に合致しますね。

 

険しい高地に暮らすため、ネコ科動物のなかでもレアな存在のユキヒョウ。2014年のソチ五輪ではマスコットキャラに選ばれたⓒAbeselom Zerit/500px/amanaimages

険しい高地に暮らすため、ネコ科動物のなかでもレアなユキヒョウ。2014年のソチ五輪ではマスコットキャラに選ばれたⓒAbeselom Zerit/500px/amanaimages

 

●ラウンド2「野生では、魚を食べるネコ科はほとんどいない!」

 

:日本人は「お魚くわえた」ねこをイメージしがちですが、僕はよく言うんです、ねこは本来、魚を食べないんだって。でも、魚類を主食にしているネコ科動物もいますよね!

 

:スナドリネコですね。多くのネコ科動物にとって、魚を獲るというのは労力に見合わないんです。冷たい水に入って、泳いで、やっと魚を捕まえて……。ところが、消費するエネルギーのほうが多い、ということにもなりかねない。スナドリネコは、まさにネコ科のなかでも隙間をついた食性なんです。

 

:ヤマネコ類って、たしかに「隙間産業」というか、ヘンな生き方のヤツが多いような気がします。

 

:ヤマネコに限らず、ほとんどのネコ科は隙間で生きているな、と思いますよ。そもそもネコ科動物は、野生ではもっとも強力な捕食者という存在です。同じ環境で頂点の捕食者でいられるのは、1種類だけなんですよ。

 

:たとえば、トラとか……。

 

:そうです。だからトラのいるところには、ほかの大型のネコ科動物は棲めない。小型のネコ科動物だけが、トラの利用しない隙間を利用して、共存を許されているんです。

 

:なるほど。あ、でも今、思い出した。「ライオンは魚を食べ物だと認識しない」という話を聞いていたんですけど、以前、テレビ番組で魚を与えたところ……、普通に食べたんです。「食べるのかよ!」と思いました(笑)。

 

:きっと飼育されているライオンで、いつも食べている餌 に魚の成分が入っていたのではないでしょうか(笑)。

 

 

しばたひでつぐ 1975年生まれ。新聞や雑誌に動物をテーマにした連載を執筆し、著書も執筆するほどの動物好き

 

いまいずみただあき 1944年生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。イリオモテヤマネコ、ニホンカワウソ、小型哺乳類の生態・行動を調査している。「ねこの博物館」(静岡県伊東市)の館長も務める

 

(その2に続きます)

 

(週刊FLASH 2016年7月9日号)

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