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絶滅寸前!埼玉名物「フライ」「ぼったら」いまこそ楽しみたい

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.09.16 11:00 最終更新日:2020.09.16 17:21

絶滅寸前!埼玉名物「フライ」「ぼったら」いまこそ楽しみたい

ぼったら(撮影/刈部山本)

 

 埼玉の辺境をめぐり、各エリアのメシ屋をたどる『埼玉「裏町メシ屋」街道旅』が発売された。『マツコの知らない世界』(TBS系)で「板橋しっとりチャーハン」を提唱した刈部山本さんが、2018年に出版した『東京「裏町メシ屋」探訪記』の第2弾となる。

 

 埼玉独自のグルメ文化の中でも、刈部さんが印象的だったものとしてあげたのは、「熊谷・行田のフライ」と「川口のぼったら」だ。

 

 

「熊谷・行田のフライは、ご当地グルメとしてかなり名前が広がっています。もともと街の中に当たり前にあって、地元が盛り上げる流れが起こり始めたのが、ここ20~30年ぐらい。僕は25年ほど前に初めて訪れたんですが、そのころは街のあちこちにのぼり旗が立っていました。

 

 ただ、取材で行った直後には、元祖と呼ばれていた古沢商店さんが閉店されて、それから周辺の店もバタバタと……。要するに、おやつなので安いし、それだけで生計を立たせるのは難しいんです。

 

 いくら地元が盛り上げても、お店を維持するための行政支援でもないと、成り立たない。だからこそ、お好み焼き屋さんや居酒屋さんが、メニューの一つとしてフライを出していくスタイルのお店は、長く続いている印象ですね」

 

 刈部さんが生まれ育った埼玉・川口での名物「ぼったら」も、ギリギリで店が残っているという状況だ。

 

「ぼったらっていうのは、川口の駄菓子屋さんで食べられてきたもんじゃ焼きみたいなものです。小麦粉を水で溶いたものに具材を入れて、店に置いてある鉄板で焼く。

 

 そこにベビースターやらパンチコーラやら、売ってあるお菓子をあれこれトッピングするのがいいんですよね。僕が子供の頃は、学区周辺の駄菓子屋さんの2~3割はぼったらをやっていました。

 

 駄菓子屋さんでもんじゃを出す形は、川越でも『おもんじ』って名前で存在したんです。

 

 ただ、おもんじは、平成に入る頃にはほとんどなくなっている。ぼったらも、僕が知っている限り、2000年にはほとんどなくなった。今ぼったらをやっている店は、居酒屋の1メニューとか、そういう形で一店舗とかそのレベルじゃないでしょうか」

 

 食のライターとして長らく活動してきた刈部さんが、店を選ぶ基準は何なのか。

 

「特に条件というのはないですね。お店に行った記憶が、自分のなかで思い出になればハッピーです。しいてあげるとすれば、古い店を見かけたら、なるべく入るようにはしています。

 

 長く続く店には、なんらかの理由があるわけですから。まあ、これは建前で、本音はいつまで営業しているかわからないから、今のうちに入っておこうという感覚なんですが(笑)。

 

 特に今回のコロナもあって、個人商店の生き残りは厳しいですよね。もともと2020年に閉店ラッシュが来るんじゃないかという話は、何年も前からささやかれていたんです。

 

 昭和からやっている街中華やお蕎麦屋さんのような個人のお店って、あちこちの商店街にあったじゃないですか。でも、だいたい創業者が高齢化したり、後継者がいなかったりする。建物を建て替えないと危ないお店も増えてきた。

 

 後継者がいればいいのかといえば、フライやぼったらのように、一品だけで店を続けるには厳しい仕組みになってしまっている。

 

 個人商店って、前回の東京オリンピックの頃にお店を始めた人が多いんです。それもあってか、『次のオリンピックまでは頑張ろう』って続けていた店も少なくなかったみたいです。

 

 そのタイミングで、コロナ騒ぎが起こってしまったので……。ここで助成金をもらっても、先が見えないから、ここでいったん区切りをつけようと店をたたむ人が増えています」

 

 個人商店の減少を前に、刈部さんは「東京も、埼玉のように独自の地域密着性を獲得すべきだ」と主張する。

 

「成功例でいうと、月島もんじゃですね。本来、あの町にあったのは、川口のぼったらみたいな駄菓子屋スタイルだったんです。そこから、今のように居酒屋で飲みながら食べる大人もんじゃのスタイルに変化して、商売になるモデルができた。それを周りの店がマネして栄えた、ちょっと特殊な事例です。本来のもんじゃスタイルだったら、今の状況はなかったと思います」

 

 個人的に注目しているのは、多摩エリアですね。東村山や小平なんかは、武蔵野うどんが盛んなエリアですが、老舗もあれば、新進気鋭の店も多い。

 

 並行して、ロードサイド型の駐車場が多く設置されていて、交通の便がいいんです。この形であれば、土地の文化も残るし、今の人たちが食べに行く選択肢として残ります。

 

 多摩は意外といろいろあるんですよ。各地でフランチャイズ化されている『すた丼』は国立発祥ですし、八王子ラーメンなんかも有名です。現在進行形で街に浸透しているケースが多いので、今後もウォッチしていきます」

 

※刈部山本さんの『埼玉「裏町メシ屋」街道旅』(光文社知恵の森文庫)が発売中

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