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若者には常識となっている「性的同意」なぜいま必要なのか?

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.13 16:00 最終更新日:2021.01.13 16:00

若者には常識となっている「性的同意」なぜいま必要なのか?

 

 近年のジェンダーに関する問題意識の高まり、その中でも特に性暴力やパートナー間の関係性への問題意識の高まりとは切っても切れない概念がある。それが「性的同意」だ。

 

「性的同意」とは、文字通り性的行為におよぶ際に取る同意のことである。

 

 

 最もシンプルなイメージとしては、ドラマ『東京ラブストーリー』だ。2020年にリメイクされたのを機に1991年版を思い出したり、改めて見返したり、見たことがなかったけど見たりした人もいるだろう。

 

 1991年版『東京ラブストーリー』の名場面、第3話の終わりに、鈴木保奈美さん演じるリカが織田裕二さん演じるカンチに「ねぇ、セックスしよう」と言うシーン。あれはまさに性的同意を取っている場面である。

 

 残念ながら性的同意という言葉はちょっと堅苦しい感じがするためか、誤解を持たれやすい。なので、ここでよくある誤解を解いておこうと思う。

 

 まず何より先に言いたいのは、「同意書を書け!」と言っているわけではない、ということだ。

 

 毎度のセックスのたびに同意書を書くのはなかなか非現実的だ。性的同意を啓発している人は同意という言葉をそこまで堅苦しい意味で使っていない。セックスをする際に相手の明確な同意を取るべきだということ、はっきりとした言動によってセックスの同意を取りつけるべきだということが、性的同意の基本的な発想である。

 

 だから、「ねぇ、セックスしよう」と尋ね、相手がはっきりと了解すればいいだけの話だ。

 

 恋愛ドラマを例に出したのは、性的同意に関する堅苦しいイメージを取っ払ってほしかったからである。実のところ、僕の知っている限りなので断言はできないが、日本のメジャーな恋愛映画できちんと性的同意が取れている場面はあまり見ない。以下では、きちんと性的同意が取れているとはどのようなことなのか確認しよう。

 

■性的同意の3つの成立条件

 

 性的同意が成立するためにはどのような条件が満たされている必要があるのか。ここでは、一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクションの大澤祥子さんが「社会を変えるのは私たち」(『POSSE』41号 所収)で述べていることを参考にしよう。

 

 大澤さんによると性的同意を考える上で、3つの大切なポイントがある。その3つとは「非強制性」「対等性」「非継続性」だ。

 

 非強制性とは、強制的に同意させられていないということである。「断りにくい、あるいは断ったら暴力を振るわれるなど、NOを示すと身の危険を感じる場合は、『はい』と言ったとしてもそれは本当のYESではないのです」。

 

 対等性とは、同意をむすぶ人と人が対等な立場にあるということである。「会社や学校など、この社会ではあらゆるところで上下関係、あるいは支配関係が築かれています。だからこそ、社会的地位や力関係に左右されない対等な関係にもとづいた同意なのかということがとても大切です」。

 

 非継続性とは、同意の有効性は継続しないということである。「たとえば、今日は同意したとしても、それは明日も同意したことにはなりません。同じように、二人きりで家にいたとか、飲みに行った、車に乗った、キスをしたという行為は、その先の行為に同意したことにはなりません」。

 

 たとえ、セックスするふたりの間に、同意らしき言動があったとしても、「非強制性」「対等性」「非継続性」の3つの条件が満たされていなければ、同意が成立していたとはいえないのだ。

 

 直感的に、性的同意の理解を助けてくれるコンテンツを紹介したい。性的同意の啓発活動を行っている界隈では、「紅茶の動画」と呼ばれているものだ。

 

「紅茶の動画」はイギリスの警察署が作成したものである。セックスにおける同意の重要性を、紅茶のアナロジーを用いて説明する内容になっている。もちろん、もともとの動画は英語であったが、日本語字幕つきもYouTubeに流れているので、英語が苦手だという人もぜひ見てほしい。数分の短い動画なので気軽に見られるはずだ。

 

 ここで、「紅茶の動画」のあらすじを説明しよう。セックスに関する同意を紅茶でイメージしてみよう、という主張とともに動画は始まる。

 

 普通、紅茶を相手に飲ませる時、「紅茶を飲みますか?」と尋ねますよね、という基本的なパターンの中で、様々なシチュエーションが取り上げられる。

 

「紅茶を飲みますか?」と尋ねて、相手が要りませんと答えたら、普通は無理やり飲ませないし、無理やり飲ませてはダメ。はじめは欲しいと答えたかもしれないけど、お湯を沸かしているうちに気が変わるかもしれない。相手の意識がない時に無理やり飲まさないよね。一度、飲みたいと言ったからといって、いつも飲みたいわけではないよね。

 

 そういった内容の寸劇が流れた後でセックスも同じです、と締めくくる。テンポが良く、とてもわかりやすい動画だ。ぜひ一度見てほしい。

 

 東京ラブストーリーでリカからカンチに同意を求めたように、性的同意は男性から女性へという方向だけではなく、女性から男性へという方向の場合もある。そして、もちろん、同性から同性へというパターンもある。

 

 性的同意を取る役割は性別によって決まるわけではない。性的な行為を始めようとする側(性的な行為を始めたいと思った側)に性的同意を取る責任があるのだ。

 

 

 以上、齋藤賢氏の新刊『知らないと恥をかく「性」の新常識』(光文社新書)をもとに再構成しました。セクハラや性犯罪が社会問題として認められてきた現在、「性」について学ぶことはもはや必須事項となっている。「性」をめぐるこの国の現在地を鮮やかにえぐり出します。

 

●『知らないと恥をかく「性」の新常識』詳細はこちら

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