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我慢できないイタリア人、コロナ禍の外出禁止令を平気で無視

ライフ・マネー 投稿日:2021.02.01 16:00FLASH編集部

我慢できないイタリア人、コロナ禍の外出禁止令を平気で無視

 

 コロナ禍の現在、他人への思いやりに溢れた行動をとっているイタリア人がいる一方、「勝手」な行動をとってしまうイタリア人もいる。

 

 北イタリアで爆発的に感染が拡大したことで、政府は全国に厳しい外出禁止令を下した。休めない仕事があったり、食料を買いに行ったりするための外出は、もちろん許可されている。しかし、その他の理由による外出は、絶対禁止とされている。

 

 

 罰金を科される措置から、最大21年の懲役刑に処する措置まで、外出禁止令を破る者は重く罰せられるのだ。感染拡大を防止するのに必要な対策だと理解しているイタリア人は、親戚や友だちに会いたくても、外出を控えて自宅で大人しくしている。

 

 ところが、中には、命令を無視して外出してしまう人もいる。2020年4月の頭に、外出禁止令を破ったことで警察に告発された人の数は17万3000人を上回った。

 

 ローマに、警官の親友ドナテッロがいる。緊急事態宣言が出てから、彼は町中を移動する市民を呼び止めて、外出の理由を確かめる職務を全うしている。久しぶりに連絡を取ると、次のような会話があった。

 

「ディエゴ、信じられない。皆、遊びだと思っているんだよ」

 

「何が遊びって?」

 

「外出禁止令のことも、こんな状況のことも。今まで、町で何千人も呼び止めた。そのうちの10パーセントほどは、外出する正当な理由がないにもかかわらず、ただ出かけていた。重い罰金を科されるんだよ。ヘタすると懲役刑になるんだよ。本人は前科者になるんだよ。それでも、国民は暢気に出かけるわけだ。感染しちゃうぞ? ウイルスをばら撒くぞ?」と、彼はビデオチャットでため息を吐く。

 

「どうしてそんなことをするんだろうな」

 

「理由は、分かるだろう?」

 

「自己抑制ができないから……」

 

「それそれ。『どうせ、出かけるのは1時間だけだから』『どうせ、ウイルスになんかかからないだろう』などなど。そしてウイルスにかかって、警察にも引っかかる。外出はいけないことだという、実感がないんだ」

 

「ちなみに、勝手に出かけている人たちは、どんな理由があって出かけているの?」

 

「だから、我慢ができないからだ。面白いことがあったから、いくつか教えようか?」

 

「ぜひぜひ」

 

「数週間前、呼び止めた人は『タバコを買いに行く』のだと言っていた。車に乗っていたから、『では、運転免許証をご提示ください』とお願いした。調べたら、彼はローマから何十キロも離れた町に住んでいて、そこから都市に『タバコを買いに』やってきたわけだ」

 

「あはは、嘘でしょ! 都会でしか販売されない、よっぽど好きなタバコの種類でもあったのかい。それは本当の理由だった?」

 

「いや。問い詰めたら、『人影のないローマは綺麗だろうなと思って、見に行きたくなった。悪いことをしているとは思わなかった』と、謝った」

 

「なんだ、ロマンチストだね」

 

「もう一人、若い男性は、外出禁止令が出る前日に彼女にふられて。メッセージを送っても、電話をかけても、元カノに無視されてばかりいて、淋しくなっちゃって、そのままじゃどうしても耐えられないから、彼女に会いに行こうとした」

 

「それは可哀想だよ。僕も同じことやったかもな」

 

「コラお前! 捕まるぞ! あははは」

 

「あははは」

 

「あと、これこれ。昨日、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世通りを散歩していた男がいた」

 

「で? 何がおかしかったの?」

 

「裸だった」

 

「ハ!?」

 

「そう。裸。全裸。丸出しに丸見え。普通に歩いて橋を渡っていた。これは、僕が目撃した人じゃないよ。誰かが車から目撃して、動画を撮ってネットに上げた。動画、観てない?」

 

 いや、観ていない。冗談だろうと思って調べたら、本当に動画があって驚いた。自由がいくら「なんの強制もなく行動できる状態」だといっても、全裸になって外出できるわけではない。

 

 大人しく命令に従って外出を控えている。そんな非の打ち所のない人たちもいる中で、一日だけ、数時間だけと我慢ができなくなって、出かけてしまう。抑制ができなくなって、「勝手」な行動をとって「適当」なことをしてしまう。出かけてはいけないと分かっているにもかかわらず、「きっと何も起きないから大丈夫じゃない?」と甘ったれたことを言う自分もいるわけだ。

 

 悪気がなくても、自由は「過度」になると、身勝手な行動になってしまう。

 

 

 以上、ディエゴ・マルティーナ氏の新刊『誤読のイタリア』(光文社新書)をもとに再構成しました。来日9年、日本文学を愛する
イタリア人が、ユーモアを交えてイタリア文化を見つめます。

 

●『誤読のイタリア』詳細はこちら

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