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日本海軍 “悲劇の名機” 九三式中間練習機「赤とんぼ」が令和に甦った!
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.03.07 11:00 最終更新日:2021.03.07 11:00
「『赤とんぼ』は予科練生たちなら、誰しもが一度は乗った練習機。元海軍パイロットたちの思い入れも強いので、展示を決めました」
そう語るのは、熊本県錦町立人吉海軍航空基地資料館の蓑田興造館長。3月1日のリニューアルオープンに合わせて増設された展示ホールに、旧海軍の九三式中間練習機、通称 “赤とんぼ” の原寸大レプリカが展示されることになった。
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赤とんぼとは、どんな飛行機だったのか。親しみやすいその通称は、オレンジ色に塗装された複葉の機体が、赤とんぼに似ていることから名づけられたものだという。機体の全長は8m、上翼の長さは11m、プロペラの長さは2.7mだ。
ちなみに同機が “中間” 練習機と呼ばれるのは、100馬力級の初歩練習機と400馬力級以上の実用機の中間にあたる、300馬力級だったからだ。1934年に制式採用されると、敗戦までに5700機ほど製造された。
ただし、乗り心地はいまひとつだったようだ。「椅子は鉄板のままだから硬くて冷たいし、上昇中に機体が左右に揺れるので、慣れるまでは不安だった」と語るのは、元訓練生だった木村幸雄さん。
今回展示された精巧なレプリカを手がけたのは、旧日本軍軍用機のレプリカ製作メーカーとして知られる(株)日本立体(茨城県小美玉市)。代表取締役の斎藤裕行氏が語る。
「設計から組み立てまでゼロからのスタートで、手探り状態でした。素材選びにも苦労しました。幸い今回は、塗装された機体の一部が残っていたので、同じ塗料をメーカーに復元してもらえました」
そのオレンジ色の塗装が印象的な赤とんぼだが、太平洋戦争末期には、この練習機をめぐってさまざまな悲劇が起きた。パイロット不足から、ろくな訓練も受けないまま、“仮免許” 状態で実戦に駆り出されていった予科練生たち。
さらに、機体をシンボルカラーのオレンジ色からモスグリーンに塗り替え、爆弾を抱えて敵艦に体当たりする特攻機としても使われたという……。
令和に甦った名機を、ひと目見てみたい。
取材&文・岡村青
(週刊FLASH 2021年3月16日号)