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デジタル署名されたアート作品が75億円…NFT市場拡大に貢献した日系人に話を聞いた

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.03.19 11:20 最終更新日:2021.03.19 11:21

デジタル署名されたアート作品が75億円…NFT市場拡大に貢献した日系人に話を聞いた

写真提供:CHRISTIE'S AUCTION HOUSE/AFP/アフロ

 

 アメリカで「デジタル署名」によるビジネスが沸騰中だ。

 

 3月11日、老舗クリスティーズが開催したオークションで、デジタル署名されたある作品に75億円の値段がついた。また、16日には、電気自動車のテスラ創業者のイーロン・マスク氏のアートがオークションに出品され、1億円以上の入札額がついた。

 

 
 デジタル署名はNFT(Non-fungible Token)というブロックチェーン技術を使ったもので、直訳すると「代替できないトークン」のこと。これまで美術作品は、どれが本物でどれがコピーだかわかりづらく、改変も容易だった。しかし、NFTを付与することで、「唯一無二」あるいは「正当な所有者」だと証明できるようになったのだ。

 

 美術作品に限らず、音楽やビデオでも「オンリーワン」を保証できる。ツイッター創業者のジャック・ドーシー氏は、自身が2006年3月21日に投稿した世界最初のツイートをNFTでオークションに出し、3億円近い値がついている。

 

 NFTはまさに最先端の新市場だが、このブームの影に1人の日系人の活躍があった。

 

 冒頭で触れたクリスティーズのNFTオークションで、中心となったのが、サンフランシスコにある「メイカーズプレイス」というデジタルアートを扱う会社である。同社創業者のひとりで、マーケティング担当の伊藤龍馬さんに話を聞いた。

 

 伊藤さんは、日本人の両親が移住したカナダで生まれ、20年ほど前にアメリカへやってきた。「Yコンビネーター」というシリコンバレー最強のベンチャーキャピタル出身で、自身で起業した経験も持つ。

 

 2018年、写真共有サービス「ピンタレスト」の同僚2人とともに、デジタルクリエーターたちの著作権を守り、業界を発展させたいという思いからメイカーズプレイスを共同で設立した。

 

「創業当初はシリコンバレーでもNFTに対する認知度が低く、不正コピーを防止できることなどを必死に説明して回りました。初めてデジタルアートが50ドルで売れたときは、みんなで大喜びでした。

 

 NFT市場に変化が現れたと感じたのは2020年初頭で、作品に1000ドルの値がつくようになってからです。コロナ禍で投資先に変化が現れ、人々が外出を控えるようになった影響も大きいと思います」

 

 2020年末には、今回クリスティーズで話題になったビープルのデジタル作品が4億円ほどで落札されている。伊藤さんたちは、この頃すでにクリスティーズにNFTオークションを働きかけていた。デジタルアートの現状や可能性などを語り、辛抱強く何度も協議を重ねたという。

 

「クリスティーズが乗り気になってきたところで、ビープル氏に話をもちかけて、今回のオークションが実現しました。デジタルアートが過去最高の75億円を記録したことで、ものすごい勢いでNFT市場が湧いています。

 

 スポーツ選手やミュージシャン、俳優、インフルエンサーなど多くの人がNFT作品を作成したり、また作品を欲しがっています。トレーディングカードや音楽などにどんどん分野が広がっています」

 

 連日大量の作品売買を見続けている伊藤さんは、いまの価格をバブルだとは思わないという。クリスティーズの成功に続き、サザビーズもNFTオークションを始めると宣言した。

 

 本物の保証が可能になったことで、デジタル作品は立派なアートだと認められたことになる。今後しばらく、NFTの話題が続きそうだ。(取材・文/白戸京子)

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