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【4月2日の話】蒸気で鉄道を動かせ!日本初の「蒸気動車」実用化
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.02 06:00 最終更新日:2021.04.04 17:53
1905年4月2日、瀬戸自動鉄道で、小型機関車と客車がひとつになった「蒸気動車」が日本初の運行を開始した。実験的に運転された記録はあるが、営業運転はこのときが最初である。
瀬戸自動鉄道は、のちに瀬戸電気鉄道に改称され、現在は名古屋鉄道の瀬戸線になった。それでも、地元の人はいまも「瀬戸電」と呼ぶ。同線沿いに住む瀬戸市職員で、『せとでん100年』(中日新聞社)の著者でもある山田司さんが、こう話す。
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「昔から焼き物が盛んだった瀬戸では、商品の輸送手段を増やすため、鉄道敷設への機運が盛り上がっていたんです。一時期、瀬戸に国鉄を通してもらう話もあったのですが、そちらは頓挫してしまいました。
その後、せめて瀬戸から大曽根(名古屋市北東部)まで鉄道を通したいと国に請願したところ、『地元が資金を出すなら、駅を作ることを許可する』という返事でした」
瀬戸の実業家たちから融資を受け、鉄道は敷設された。蒸気動車は、蒸気の持つ熱エネルギーによって自動的に動くことから、社名は「瀬戸自動鉄道」となった。
「噂によると、もともと関東のとある鉄道会社がフランスから輸入した車体らしいですが、技術的に持て余して購入をキャンセルしたものを、瀬戸電が買い取ったそうです。
しかし、やはり構造が複雑だったようで、しょっちゅう止まったり、エンストを起こしたりと問題が多かったようです。止まってしまった気動車を、乗客たちが手押しで動かす事態もあったと聞いています(笑)。
そんなこともあってか、2年足らずで見切りをつけられ、新たに注文した電気動車に交代してしまいました。同じタイミングで、社名も『瀬戸電気鉄道』に切り替わっています」(山田さん)
長年瀬戸に住む山田さんは、「瀬戸電」に対する思い入れが強い。
「蒸気動車の話もありますが、かつて名古屋城の外堀の中という不思議な場所に『大津町』という駅が設置されていたこともあり、個人的にはかなり独自性の強い路線だと思っています。
名鉄と合併したのは1939年とかなり昔ですが、いまだに地元の人はこの路線を『瀬戸電』と呼びます。80年以上たってもなお、地元に愛された路線だといえるんじゃないでしょうか」