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ライフ・マネーライフ・マネー

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売上3分の1になってようやくわかった「人生ブランディング」ライフ・マネー 2017.03.01

『写真:AFLO』

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 経営の失敗からブランディングの専門家になった男が見通す、これからの仕事のあり方とはどのようなものか?

「ブランディング」という言葉にはあまり馴染みがないかもしれない。しかし広告の世界ではかなり前から使われていた言葉だ。経営コンサルタントの松下一功さん(54)はそのブランディングの専門家だ。

 

 そもそもブランドが重要視されるようになったのはバブル崩壊以降で、商品が広告やイメージでは売れなくなってからである。そこで登場したのがブランディングである。

 

 松下さんによれば、これは会社や商品、提供するサービスなどに共感、信頼してくれるファンを創る活動だ。そこがそれまでの広告のあり方とは違う。

 

 松下さんは、父の転勤により第二の故郷となった名古屋でデザイン事務所に就職するが、やがてバブルが崩壊し事務所の経営が傾いたときに独立した。まだ20代で独身だったが、デザイン事務所を経営するのは既定路線だった。

 

 生まれ育ったのは北海道。父は農協職員だったが、画才に恵まれていたこともあり、デザイナーを目指し独学で学び、作品が認められて大手の広告代理店に就職し直した。

 

 当時のデザイナーにとって絵がうまいことは必須条件で、ポスターなどはみな手描きだった。

 

「昔のデザイナーというのは、ほとんど絵描きとか漫画家のようなもの。それを子供のころから見ていた。両親とも美術が好きで、こと絵に関してはうるさい。学校の成績も美術以外の教科はそれほどでもないのに、美術がちょっとでも下がろうものなら大変。そういう家庭に育った。

 だから将来、広告の世界で食べていこうというのは、それこそ小学生ぐらいのときからごく普通に思っていた」

 

 と松下さんは言う。
 画才に関しては父や弟に勝てなかった松下さんは、家にあったデザインの理論書を読み漁り、デザインは企画がよくなければ意味がないことに気づく。それからは企画を主体に学んだ。したがって立ち上げた事務所も企画に強いことが売りだった。

 

 実際、持ち前の分析力と企画力、ブランディング手法により自動車メーカーなど大企業からの依頼も多く、経営は順風満帆。名古屋だけでなく東京にも事務所を構えた。

 

 しかし、2008年に起きたリーマン・ショックが松下さんの人生を大きく変えた。

 

「僕の場合のターニングポイントは完全にリーマン・ショック。その直前まで売り上げは右肩上がりだった。一人で始めて、デザイナーを30人抱えるまでに成長し、デザイン事務所としては大きいほうだった。なんの疑いもなくこのままいくと思っていた。産業構造が変わるとは思えなかったし、広告で食えなくなるとは考えてもいなかった。ところが売り上げが一気に3分の1以下に落ち込んだ」

 

 デザイン事務所の支出はほとんどが人件費である。自主退職を募り、デザイナーを減らす一方で、経営コンサルタントや税理士、営業職を入れて立て直しを図った。しかし、広告が減るのと同時に価格競争が始まり、利益が上がらず、事務所を閉鎖せざるをえなくなった。原因はどこにあったのか?

 

「ブランディングの専門家なのに、自分の会社のことを考えていなかった。ブランディングを武器に仕事を受注しながら、そこで利益を得るシステムを構築しないで、収入を得るポイントをデザイン制作に置いていた。これに気づいたのが本当のターニングポイント。

 

 それからデザイン・広告分野の延命を図ることではなく、コンサルタント関係を発展させる専門家になる道を選んだ。6年前、48歳ぐらいのとき。

 

 これまでも専門家を自認していたが、ビジネスになっていなかった。最終的には、コンサルタント分野を重視するビジネスモデルに変えた。今はコンサルティングだけで、デザインの仕事は受けていない」

 

 松下さんはブランディングの専門家として多方面で活躍中だが、自身のメソッドを体系化し普及させることに腐心している。ブランド戦略が重要な日本の現況にもかかわらず、ブランディングの専門家を志す人が少ないからでもある。ところで、松下さんはこれからの時代について気になることを指摘する。

 

「本当にやりたいことをやっていかなければ、食べてはいけない時代が来る。こんな仕事はしたくないけど金のためで、週末に自分のやりたいことをやる、というのはもう成立しない。ほとんどAIや機械で補えるようになる」

 

 食べるためのライスワークの時代は終わり、ライフワークの時代になるというのだ。求められるのは専門的な知識や、人にはない自分の強みである。換言すれば、自らのブランド化が必要になるということだろう。はたしてそれは楽しい時代なのか、それとも厳しい時代なのか……。

(週刊FLASH 2017年3月14日号)

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