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日本人の「歩き型」が格好悪い理由は、「靴」と「控えめな性質」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.06 16:00 最終更新日:2022.10.06 16:00

日本人の「歩き型」が格好悪い理由は、「靴」と「控えめな性質」

 

 人相に人柄が表れるように、歩相(=歩き型)にも年齢、性別、性格、体調、モチベーション、ステータスなど、様々な要素が表出されます。

 

 颯爽と歩く人は、若々しく利発な印象を与えますが、トボトボ歩く人は不健康で老けて見えます。

 

 昨今では、疲れ切った中年のように歩く子どもや若者の姿が目立ちますが、これは当然放っておくべきではありません。歩くフォームと姿勢、歩くスピードと脳の働きは密接につながっているからです。歩き型が悪いとモチベーションだけでなく、コンディションも低下していきます。

 

 

 昔から病は気からといいますが、病は歩き型からといっても過言ではありません。

 

 脳と足は、立っているだけでも毎秒約1億回の頻度でセンシング(重心の変化を計測)しています。そして、歩くスピードが増すほどセンシングの頻度が増加し、脳の働きも活発になるのです。椅子に座ったまま考えるよりも、歩きながら考える方がアイデアが湧くのは、こういう理屈です。

 

■日本人の歩き型はなぜ格好悪いのか?

 

 近年、日本人の体型が欧米化して平均身長が高くなり、小顔で手脚が長くなっています。大昔の日本人の写真と現代人を比較すると、スタイルの違いが一目瞭然です。

 

 ファッションも洗練されて世界中から注目されるレベルになりましたが、肝心の姿勢と歩き型は昔からほぼ変わっていないか、むしろ劣化しています。

 

 男女共に巻き肩の人が多く、前のめりで膝を曲げて歩いています。お洒落なヒールを履いて、鳥みたいな歩き型をしている女性たちを見るたびに、「きちんとした歩き型を学べば印象が劇的に良くなるのに」と残念に思います。

 

 今日まで「日本人の歩き型は格好悪い」と海外から酷評され続けてきましたが、私たちはいまだにこの課題を克服できていません。

 

 格好悪いといわれるのは、普段着が和装から洋服に変わったのに、姿勢と歩き型は和装のままだからです。それに加えて、謙虚で控えめな国民性もちんまりとした歩き型に反映されています。

 

 能や日本舞踊、茶道の立ち居振る舞いを観察すると、日本人の身のこなしや歩き型のルーツが、ここにあるのだと気付かされます。

 

 日本画や浮世絵に描かれている人物たちも、全員前かがみで膝を曲げて歩いています。その姿を現代人に重ね合わせると、ほぼ同じフォームであることがわかります。

 

 もし描かれている人物の衣装をスーツやワンピース、ヒール、ローファーに替えたら、強烈な違和感が生じるはずです。しかしながら、現実世界ではそれが起きているのです。

 

「そんな昔のことが、今でも影響しているの?」「現代人は足袋(たび)やわらじをはいていないのに」という人もいますが、千年近く継承されてきた身体文化と所作は、そう簡単に上書きされるものではないのです。

 

■和式と洋式の歩き型の違い

 

 日本人の歩き型の特徴は、前かがみで腕を振らずに膝を曲げて歩くことです。

 

 洋式の歩き型は、日本人のそれとは正反対といえます。欧米の社会では体格が重視されるので、少しでも身長を高く見せてボディーラインを強調するために、背筋を伸ばして胸を張ります。歩くときもその姿勢をキープするから、どんな服を着ても映えるわけです。

 

 姿勢が良いと腕と脚の振り幅が大きくなり、自然とかかとで接地するようになります。だから、欧米人が靴を履いて歩くとコツーン、カツーンという乾いた音が響きわたるのです。

 

 日本人は前かがみの姿勢がスタンダードなので、歩行を頭上から観察すると頭部が足よりも前にあります。歩幅が小さいので、上半身と下半身のねじれもありません。

 

 これに対して、欧米人は頭部よりも前に足があります。そして、上肢と下肢の振り幅が大きいため、上半身と下半身にねじれが生じます。ねじれた状態から回復しようとする力が歩行の推進力に置き換わるのです。

 

 このように、和式の歩き型と洋式の歩き型の差異は文化や風習、服装などの違いからきています。どちらが優れているという話ではないのですが、あくまで和式の歩き型は着物用なので、普段着が洋服の人は、洋式の歩き型で暮らす方が良いと私は考えています。

 

 歩き型をアップデートするときに意外な障壁となるのが、日本人の控えめな性質です。偉そうにしていると思われたくないという潜在的な意識が邪魔をして、背筋を伸ばしてエレガントに歩くことを拒むのです。

 

 そしてもうひとつ邪魔をしているのが靴との相性です。

 

 戦後より日本人のライフスタイルは大きな変貌を遂げ、海外から物や道具が大量に流入してきました。日本人はアレンジするのが得意な民族なのですが、それでも未だ完全に馴染めていないのが靴と椅子です。

 

 かかとから接地することを考慮して設計された洋靴は、ヒールが高く頑丈に作られています。けれども、つま先重心で立ち歩いてきた日本人にとって、ヒールは必要のないものでした。

 

 今さらという感もありますが、洋式の歩き型をきちんと学んで落とし込まなければ、靴の特徴を活かして歩くことができないのです。靴の形状に合わない歩き型をしていると、靴だけでなく足や膝の寿命を縮めてしまうことにもなります。

 

 

 以上、伊藤和磨氏の新刊『痛みが消えていく身体の使い「型」』(光文社新書)をもとに再構成しました。多くの人は立っているつもり、座れているつもり、歩けているつもりでも、実際にはきちんとできておらず、いわば「型なし」の状態です。では、日常動作の正しい「型」とは?

 

●『痛みが消えていく身体の使い「型」』詳細はこちら

( SmartFLASH )

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