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『地球の歩き方』はこうしてコロナに勝った!社員激減から“復活”を遂げられたワケ

ライフ・マネー 投稿日:2023.01.26 06:00FLASH編集部

『地球の歩き方』はこうしてコロナに勝った!社員激減から“復活”を遂げられたワケ

学研ホールディングス本社

 

 新型コロナウイルスの影響でガイドブックの売り上げが前年比9割減を記録。40年続く『地球の歩き方』は未曾有の危機をどうやって乗り越えたのか? 宮田 崇編集長に聞いた。

 

■仕事がなくなるかも創刊以来の大ピンチ!

 

「ガイドブックの改訂版の取材が一斉に中止になって、あれ? 私、やることがない。仕事がない! とめちゃくちゃ不安になりました」(編集プロデューサー・福井由香里さん)

 

 

 2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化するなか、日本政府は緊急事態宣言を発出。観光業は大ダメージを被った。海外旅行ガイドブック『地球の歩き方』も歩みを止めた。編集長の宮田崇さんが述懐する。

 

「2020年1月に中国の武漢で何かが起こっていると報道されて、弊社の中国関連のアイテムを無期発売延期にしました。4月、5月の売り上げは前年比9割減を記録したこともあって、我々の仕事がなくなるかもしれないという危機感がありました」

 

 海外旅行のガイドブックの改訂版を中心に、年間約140点を作っていたが、コロナ禍ですべての作業がストップした。

 

「自分たちのブランドを見直すきっかけになりました。いったい私たちに何ができるか? みんなで棚卸しをしました。そしてこの40年で培ったものは、網羅性、歴史の深掘り、旅の雑学の3つだと認識しました」(前出・福井さん)

 

『地球の歩き方』は、どれも携行するのが嫌になるほど重い。裏を返せば、広く深い情報がぎっしり詰まっているということだ。

 

 2020年9月、『地球の歩き方』として初となる本格的な国内向けガイドブック「東京」を発売した。

 

「創刊40周年の年に東京五輪が開催されるのでシャレで出してみようと思ったんです。書店で『東京フェア』が始まったとき、謎めいた厚さのガイドブックがあって、お客さんに『何これ? 〈地球の歩き方〉じゃん!』と、認知してもらえたらいいなと。価格は開催年に合わせて2020円にしたので、ガイドブックとしては高いし、赤字覚悟でした。五輪は参加することに意義がありますからね」(宮田編集長)

 

 編集長の思惑は外れた。ガイドブック「東京」は、10万部の大ヒットを記録。前述した『地球の歩き方』のこだわりを踏襲した結果、512ページに膨らんだ。もはやガイドブックではなく事典だ。気をよくした宮田編集長は「東京」をテーマにした企画を次々と打っていく。

 

「まずは妹版の『aruco 東京』を作って『東京で楽しむフランス』『東京で楽しむ韓国』など、東京で海外を楽しめる場所をテーマにしていこうと。オリンピックで一山当てよう! って」(同前)

 

■『地球の歩き方』の事業譲渡は突然に

 

 2020年11月16日、ダイヤモンド社は、子会社のダイヤモンド・ビッグ社の『地球の歩き方』などの出版事業やインバウンド事業を学研プラスに譲渡すると発表。社員たちは午後3時にプレスリリースが配信されると同時に開催された緊急社員集会で知ったという。

 

「ある日突然の爆死宣言(苦笑)。『東京』が売れて、いけるんじゃない? と前向きになっていたタイミングで。社員は54人から32人に減り、編集プロデューサーは12人になりました」(宮田編集長)

 

 だが、ピンチはチャンスだ。学研の傘下に入ったことで、同じグループの雑誌『ムー』とのコラボが実現。『地球の歩き方 ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方』(2022年2月発売)は、13万部のベストセラーとなり、続く『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』(2022年7月発売)も17万部に到達。2022年後半からは海外旅行のガイドブックの改訂作業も再開した。

 

 国内旅行のガイドブックやコラボ本、図鑑シリーズなど、新たな武器を手に入れた『地球の歩き方』編集部。今は、コロナ禍前よりも元気だ。

 

「この2年を思い返すと楽しかった。人間は究極に追い込まれると前を向くしかないんですね。また、我々の作り方できちんとやり切れば読者に届くということがわかった。これからも紙媒体で『地球の歩き方』シリーズを増やしていきますよ」(同前)

 

 快進撃は始まったばかりだ。

 

写真・木村哲夫

( 週刊FLASH 2023年2月7日号 )

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