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淀川にクジラ、鳥取にダイオウイカ、湘南にリュウグウノツカイ…頻発する海洋生物の異常行動が示すもの

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.27 06:00 最終更新日:2023.01.27 06:00

淀川にクジラ、鳥取にダイオウイカ、湘南にリュウグウノツカイ…頻発する海洋生物の異常行動が示すもの

浜辺に打ち上げられた深海魚・リュウグウノツカイ。写真はたま勤王党氏(@yasuyuki_t)提供

 

 1月9日大阪・淀川に迷い込んだマッコウクジラの“淀ちゃん”を筆頭に、1月上旬から、海洋生物の“異変”が全国各地で相次いでいる。

 

 北海道・知床にイワシの死骸が大量漂着、神奈川・湘南海岸にリュウグウノツカイが打ち上げられ、静岡と愛知ではボラが大量発生。さらに、東京湾にトドとクジラが現われ、鳥取をはじめとする日本海側でダイオウイカの目撃が相次ぎ、福井・若狭湾にはホシフグの死骸が大量に漂着した。

 

 

「これらは、宏観異常現象です。大地震の予兆である可能性が高いので注意が必要です」

 

 と警鐘を鳴らすのは、動物の異常行動と地震の関係について35年にわたり研究している、工学博士で元神奈川工科大学、現在NPO法人e-PISCO代表の矢田直之氏だ。

 

「宏観異常現象とは、大地震や大噴火といった天災を前に、動物などが異常な行動を取る現象をいいます。たとえば2011年に茨城・鹿嶋市の海岸にイルカ約50頭が座礁しましたが、東日本大震災が起こったのはそのわずか1週間後でした。同年2月にも、ニュージーランドの浜辺に107頭のクジラが打ち上げられた2日後に、同国で大地震が起こっています。もちろん、動物が地震を“予知”することは、まだ科学的に証明されてはいません。そもそも、世界的に動物と地震の関係について研究する研究者が少ないので、分析対象となるデータがないんです。そこで私は、海洋生物にとどまらず、猫や蛇などさまざまな生き物の行動を計測し、発生する天災との関係を明らかにしています」

 

 e-PISCOは、大阪市立大名誉教授の弘原海清氏が1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに設立。2008年には岩手・宮城内陸地震を、2011年には長野県北部地震を予測し、的中させている。そんな矢田氏が、特に注視するのが“淀ちゃん”だという。

 

「これほど短期間に海洋生物の異常行動が続くのは、きわめて稀なケースです。特に注目したいのは、淀川のマッコウクジラです。マッコウクジラは、本来深海に生息しているので、湾内に入ってくることはまずないんですよ。なぜ動物が地震を前に異常行動を取るのか、ひとつの仮説があります。私は、大気イオンの濃度と地震の関係についても研究していますが、大気イオンの濃度が濃い場所では、地震が起こりやすいことがわかっています。動物たちは、この大気イオンの変化を敏感に察知して、異常行動を取っているのではないかと考えています。多くの場合、異常行動から1週間以内に地震が発生しているので、少なくとも1月中は、警戒すべきです」

 

 地震学の専門家である武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏も、動物が地震を予知する可能性があるという。

 

「海洋生物は、海中の微弱な電流や地殻変動に非常に敏感です。人間には感知できない微弱な信号をとらえている可能性が高いです。地震に関連する微弱な電流や地殻の動きを察知して、異常な行動を取る可能性はありますね」

 

 そのうえで、1月になってから、気になる地震活動が発生しているという。

 

「1月11日の神奈川県西部(M4・1)、12日の千葉県東方沖(M4・8)、新島・神津島近海(M2・2)など、首都圏で有感地震が頻発しています。これらの地震は、フィリピン海プレートの動きが活発化していることを示している可能性があります。フィリピン海プレートが北米プレートの下に潜り込む。それに引きずられて北米プレートも沈み込み、やがて引きずり込みに耐えられなくなり、北米プレートが跳ね上がる。これが、関東大震災の発生原因であり、30年以内に起こるといわれているM8~9級の南海トラフ巨大地震の原因でもあります。フィリピン海プレートが活発であればあるほど、北米プレートが受ける圧力も大きい。十分に気をつける必要があるでしょう」(島村氏)

 

 さらに矢田氏は、南海トラフ沿岸以外にも、危険度の高い場所があるという。

 

「地震の予兆は宏観異常現象、そして大気イオンのほかに、海水の表面温度に現われることがあります。そこで気になるのは、福島・宮城県沖の温度が平年に比べて高くなっている点です。大阪・淀川からはずいぶん離れますが、逆にいうと、日本全体に影響を与えるような大地震の“予兆”である可能性があります」

 

 備えあれば憂いなし。海洋生物たちの必死の“訴え”に耳を傾けよう。

( 週刊FLASH 2023年2月7日号 )

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