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絶滅の危機に瀕する「灯台」デザイン化で生き残る

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.08.06 06:00 最終更新日:2017.08.06 06:00

絶滅の危機に瀕する「灯台」デザイン化で生き残る

『女木港灯台(香川県)』

 

 今、灯台は絶滅の危機を迎えています。
 日本では1950~1970年代、戦争で破壊された灯台の再建と、経済成長を支える港湾拡張に対応するため灯台建築数がぐんと上がりました。

 

 では現在はどうでしょうか。調べたところ、2006年からの10年間で新設された沿岸灯台はわずか2基しか見つけることができませんでした。

 

 日本全国、必要な場所にはすでに灯台が設置されたためではあるのですが、逆に廃止された灯台の数はどうでしょうか。この10年間で30基を超える沿岸灯台が廃止され撤去されていました。こうした数字から灯台の存在意義が問われているということがわかります。

 

 その要因は、1980年代からGPSの開発と普及が急速に進んだことにあります。GPSを搭載した船舶運航者から灯台不要の声があがるようになり、海上保安庁は灯台の必要性を訴えながらも、経費削減のため利用状況を把握し、機能が重複、または必要性が低下している光波標識の廃止を進める流れとなりました。

 

 公開された行政事業の資料によると、2006年に「航路標識の配置、機能の最適化計画策定」が決められ、なんと約600基の灯台を廃止しようという目標が掲げられていました。

 

 しかし実際の利用者へ聞き取り調査を行ったところ、目標数までの廃止はできず、2013年の検証終了時に廃止すると決断された灯台は382基となりました。

 

 では、今後も灯台廃止を進めていくべきなのでしょうか。私は疑問に思うのです。古いものを無理やり残すことは後世へ負担をかけるとお考えになる方もいるでしょう。でも、こうも考えられます。残していれば、後世の人に選択肢を与えることができます。アイデア次第で観光資源や文化財として様々に活用することもできます。撤去し、取り壊してしまえば、どんなに望んでも戻ってこないのです。

 

 海外では、灯台や官舎などの付属施設を民間に売却し、人が住んでいたり、ホテルにしたり、博物館にしたり、カフェやギャラリーにしたり、様々に活用されています。灯台の建築物としての魅力や立地をうまく生かし、さらにその歴史にも触れることができるような施設は世界中にあります。

 

 私は自分の結婚式を灯台で挙げたいと考え、特別にお願いをして東京・お台場の「船の科学館」でセレモニーをさせていただきました。結婚式だけではなく、コンサート会場などに使うこともできるのではないでしょうか。

 

 海上保安庁の取り組みとして「岬のオアシス構想」というものがあります。自治体などと連携し、灯台周辺の公園整備、資料館の併設、灯台のライトアップなど、地域住民や観光客に親しまれる岬づくりをしようとしているのです。

 

 また「灯台のデザイン化」も取り組みのひとつです。一般に「デザイン灯台」と呼ばれ、地域の観光資源や特産品などをデザインのモチーフにした灯台や、港周辺の歴史的な街並みと調和がとれた素敵な灯台があります。

 

 たとえば、小田原には小田原提灯の形の灯台や、佐渡島には笠をかぶった、おけさ灯台、香川県の島には鬼ヶ島伝説が残るので、鬼が持つ棍棒が灯台になっているものもあります。

 

 このような個性を出すことで、灯台に興味を持ってもらい、地元の方には親しみを感じてもらうことを目的にしているのでしょう。実際に私は、こうしたデザイン灯台によって、その地の名産や言い伝えなどを知り、記憶に留めることができています。

 

 こうした事業が実を結び、灯台に興味を持ってくれる人が増えることを願いつつ、我々灯台ファンも何かできることはないかと、常に知恵を出し合いたいと思います。

 以上、不動まゆう氏の新刊『灯台はそそる』(光文社新書)から引用しました。“灯台女子”が灯台の魅力と愛し方を余すところなく綴ります。

 

●『灯台はそそる』詳細はこちら

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