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「人の名前を思い出せるようになった」50代患者も…「リコード法」でアルツハイマー型認知症が治る時代に【日本初の認定医が徹底解説】
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.22 06:00 最終更新日:2023.10.22 06:00
「あの人の名前、なんだっけ」「何を買いに来たんだろう……」
物忘れから始まる “不治の病” 認知症。厚労省は、2025年には、65歳以上の5.4人に1人が発症すると予測しているが、ある治療法が、この予測を覆すかもしれない――。
「リコード法で、認知機能を回復することが可能です」
と語るのは、ブレインケアクリニックの名誉医院長で、日本初のリコード法認定医、今野裕之医師だ。
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「リコード法とは、米国で2014年にデール・ブレデセン博士が発表したもので、アルツハイマー型認知症の統合的なオーダーメイド治療プロトコルです。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβという、“脳のゴミ” が溜まって発症します。
リコード法の画期的なところは、そもそもなぜアミロイドβが溜まるのかというところにフォーカスした点です」(今野医師)
その結果、アミロイドβができる原因は、非常に多いことが判明したという。
「リコード法では36種類の原因があると紹介していますが、その原因は大きく6つのパターンに分けられます。なかでも大事なのが、炎症による問題です。
炎症は、生物の防衛反応である免疫システムが働くと起こります。炎症が起きると、脳にもその影響が及び “脳のゴミ” が増えて溜まりやすくなります。そして炎症を起こすおもな原因として、現代人にとって特に重要なものは、ストレスや高血糖、栄養不足ですね」(同前)
リコード法では、患者ごとにアミロイドβが溜まる原因を特定することから始まる。
「血液検査、尿検査、遺伝子検査などをおこない、原因を特定します。そのうえで、おもに食事指導やサプリメント、生活環境の指導などをおこないます。
どの患者さんにも共通しておこなう治療法もあります。いちばん大事なのは『ケトフレックス12/3』という食事法ですね。12時間、空腹時間を確保し、寝る3時間前から食べないというやり方です。
これにより血糖値を低く保ち、脂肪を利用してケトン体という脳のエネルギーになる物質が作られるようにします。食事内容は野菜多めで、魚や卵などからたんぱく質を取り、お肉は少なめにして加工食品も減らします。
もちろん、運動や脳トレも大切です。治療の対象は、認知症の前段階である軽度認知障害の人や、認知症の初期の段階の人ですが、80代で話せないほど重度の患者さんが、リコード法により話せるようになったという事例もあります。
認知症予防にも効果的です。私は、アミロイドβの蓄積を防ぐため、45歳から始めることを提唱しています」(同前)
実際、今野医師が指導するリコード法による治療で、50代の妻の認知症が改善したというAさんが語る。
「妻は、もともと片づけが苦手で、昔のことを忘れがちでした。ただの “天然” だと考えていましたが、4年前から同じ焼き肉のたれを何度も買ってきたり、自覚なしに毎日同じ料理が続くといったことがありました。さらに自転車の鍵や通帳を失くすようになりました」
検査の結果、遺伝的リスクを抱えていることが判明した。
「妻は、ε4という認知症になりやすい遺伝子を持っていることがわかりました。さらに、重金属やカビ毒などが体内にあり、一部の栄養素が不足していることもわかったんです。
今野先生の指導のとおり、夕食を早めに済まし、最低12時間食べない時間を取るようにしたうえで、サプリメントで栄養素を補っています。カビ対策にエアコンを買い替え、空気清浄機も設置しました」(Aさん)
治療から2年半、効果は如実に表われているという。
「接客業をやっているのですが、妻は常連客の名前が覚えられなくなり、カウンターの裏にわざわざ名前を書いた紙を貼りつけていたんです。しかし、今では顔を見ただけで〇〇さん、とすぐに思い出せるようになりました。今後も続けますよ」(同前)
一度発症すれば不可逆とされてきた認知症。これを早ければ3カ月で改善できるのだから、もっと広まってもよいものだが……。
「歴史が浅く、リコード法の認定医は日本に10人もいません。保険がきかない治療なので、負担が増えないように工夫していますが、私のクリニックでは初診が14万5000円、次回以降が10万4500円かかります。費用の問題は大きいでしょう。
初診以後は月に一度指導をおこないつつ、数カ月ごとに精密検査をおこないますが、生活習慣を変える必要があるので、長続きしない人も多いです」(今野医師)
大変でも、記憶を失うよりはマシだ。
【リコード法のおもな認知症治療プログラム】
・夕食を取ってから翌日の朝食まで14時間空ける
・野菜や果物はできるだけ皮ごと摂取する
・単純炭水化物(ブドウ糖・砂糖など)、人工甘味料を避ける
・納豆、味噌、醤油、ぬか漬け、キムチなどで腸に有用な細菌を取り入れる
・できるだけ加工食品を避け、自然食品を摂取する
・調理に使う油はエキストラバージンオリーブオイルにする
・緑茶(特に抹茶)を1日2杯以上飲むようにする
・有酸素運動を1回45~60分、週4~5回を目安に続ける
・毎日瞑想する習慣をつける。特に寝る前におこなうようにする
・本やアプリを使った脳トレを週5回、30分程度を目安におこなう
・カビが生えないように水まわりやエアコンを清潔に保つ