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「9月には感染者が2000万人も」免疫を “かわす” 新型コロナ変異株「KP.3」の恐怖を医師が警鐘
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.08.01 06:00 最終更新日:2024.08.01 06:00
《新型コロナ陽性になりました。(略)現在、大阪も全国的にもかなりコロナが流行しています。感染力強いです》
7月26日、自身のXでこう明かした吉村洋文大阪府知事。28日には《症状はほぼ消失し、かなり回復しました》と公務復帰を宣言したが、吉村知事が言うように、コロナの脅威が背後まで迫っているのは事実だろう──。
厚生労働省が7月26日に発表した感染状況(7月15日から7月21日までの1週間)によると、全国平均で13.62人と、11週連続の増加となった。全国でいちばん感染者が多かったのは佐賀県で31.08人。これに宮崎県の29.72人、鹿児島県の27.38人……と、おもに九州の県が並ぶ。東京(8.50人)はまだ低い水準だが、今後、8月中旬から下旬にかけて感染のピークに向かっていくとみられる。
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「いまや準緊急事態と言っていいでしょう」
こう警告するのは、昭和大学 名誉教授の二木芳人氏だ。
「5類に移行後のピークは、2023年8~9月の20.50人。これが第9波です。その後、去年の暮れから10波があり、現在は11波と言えます。足元の水準(13.62人)はまだ低いですが、ピークは8月中旬から後半と見られるので、これからも増えていくと予想されます。
9波や10波ではそれぞれ累計1000万人以上の感染者が出たと考えられますが、今回も、すでに1000万人以上の感染者が出ていると推計されます。今後、さらに感染者が増えて、9波を超える可能性もあります。そうなれば、9月には感染者が1500万人から2000万人に増えることになります」(以下「」内はすべて二木氏)
今回の感染拡大は新変異ウイルスの「KP.3」株が主因と言われている。東京都が発表した変異株サーベイランスでも、7月18日時点で、全体の87%を「KP.3」が占めている。新たな変異株の感染力と症状はどれほどのものなのか。
「『KP.3』はオミクロン株の一種で、同じ系統の『JN.1』から派生したウイルスですが、感染力がとくに強いわけではありません。特徴は伝播力(実効再生産数)が強いことです。つまり、感染が広がっていくスピードが速い。
そして『KP.3』は、自然感染やワクチン接種によってできた免疫を “かわす” 能力(免疫逃避能)が『JN.1』より2倍程度高いことが確認されています。それが伝播力の強さにつながっているのです。
感染すると、おもにあらわれる症状はのどの痛みと発熱とされています。また、咳や倦怠感、下痢症状もあります。今のところ、どんどん重症者が出て、どんどん人が亡くなるという状況ではありません。それはやはり、ほとんどの人がワクチンを打ったり、すでに感染したりして集団免疫がある程度できているからだと思います。
しかし、高齢者やある種の病気を持つ人々には、やはり危険な感染症であることは変わりありません。免疫をかわす逃避能があることを考えると、より重症化するリスクもないとは言い切れません」
夏場は冷房を効かせるために換気がおこなわれにくく、マスクを外す人も増えることから、感染が広がりやすい。また、夏休みを行楽地などで過ごす人が増え、人の移動が盛んになることで、患者の数は増え続けると考えられる。
二木氏によると、感染拡大のいちばんの原因は感染対策の緩みだという。換気や手洗いを徹底すること、重症化しやすいとされる高齢者は人混みに出る際にマスクの着用を徹底すること、それに症状が出た場合、早めに医療機関を受診することなど、これまでよりも少し強めの対策を心がけてほしいと警鐘を鳴らす。
今回の感染拡大の原因は、夏特有のものだけではない。コロナ5類化の影響でワクチンの接種率が低下したことも一因だという。
「厚生労働省が患者への支援策を終了し、2024年3月を最後に、ワクチンの無料接種は終わりましたが、そのワクチンの効果はすでに落ちています。
10月から接種を再開しますが、インフルエンザと同様、原則として接種費用の一部自己負担が求められるようになる。自己負担額は自治体によって変わりますが、最大で7000円となるようです。ワクチン接種費用が壁となってワクチン接種がさらに減ることも考えられます。そうなれば、11波が秋には12波となるかもしれません。
もし感染してしまっても、治療薬『ゾコーバ』などは効果が実証されていますが、これも支援策は3月いっぱいで打ち切られています。
これまで最大9000円で済んだのが、より高額の自己負担が求められるようになりました。たとえば、『ゾコーバ』を5日間処方された場合、薬の価格およそ5万2000円のうち、医療費の窓口負担が3割の人で、およそ1万5500円となります。夫婦2人なら3万円あまり。そんなに高額なら服用しないという患者さんも、実際に増えているようです。
急速に患者が増えている今こそ、国が検査や治療薬の費用を補助するなど臨機応変な対策を取るべきではないでしょうか。また、いまは準緊急事態と言えますが、インフルエンザのように感染者数が一定の数を超えたら注意報や警告を発するなど、国が基準を決めておくべきかもしれません」
本当の “緊急事態” は、すぐそこまで迫っている。このまま何もせず変異ウイルスと戦えるのだろうか。
( SmartFLASH )