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3m積もった豪雪は「屋根に324人の力士がいる」のと同じ重さ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.01.07 16:00 最終更新日:2018.03.08 23:07
冬には各地で雪が降り、大きな災害に繫がる豪雪となることがありますが、日本海側と太平洋側では雪を降らせる雲が全く異なります。
特に雪の多い日本海側などの地域は特別豪雪地帯に指定されており、新潟県の山沿いでは積雪深が3~4mになることもあります。これがどのような積雪なのかを考えます。
新雪は積雪深1cmあたり1mmの降水量に換算することがありますが、実際の積雪は上に積もる雪の重みで圧縮され、積雪深1cmあたり3mm程度の降水量に相当する重さになります。
これを踏まえて積雪深3mの雪が6m四方の家屋の屋根に積もっていることを考えると、1m四方あたり小ぶりな力士(100kg)が9人(0.9トン)、屋根全体では総勢324人の小ぶりな力士(32.4トン)がいることになります。このため、雪国では雪おろしが必須の技術なのです。
では、なぜ日本海側では豪雪となるのか。
冬のユーラシア大陸では放射冷却で地上気温がマイナス30℃以下にまで冷え、西高東低の冬型の気圧配置になるとこの寒気が北西風の季節風となって日本海に吹き出します。
日本海の海面水温は冬でも5~15℃のため、寒気にとっては熱湯風呂状態です。吹き出した寒気には海面から熱と水蒸気が供給され、本州に近付くにつれて温かく湿った気団になります。
このように海の影響を受けて気団の性質が変化することを「気団変質」と呼びます。気団変質で大気の状態が不安定化し、積乱雲が発達して本州の山地に達し、豪雪となるのです。
私は雲研究者として、豪雨や豪雪、竜巻等の災害をもたらす雲のしくみの研究をしています。雲の実態解明を通して、観測技術開発や予測精度向上に関わる研究もしており、防災気象情報の高度化を目指しています。
しかしながら、いくら防災情報が高度化したとしても、その情報を使ってもらえなければ防災・減災をなすことは不可能です。国民のみなさん1人ひとりが、気象災害を自分事と考えて向き合っていくことが必要なのです。
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以上、荒木健太郎氏の新刊『雲を愛する技術』(光文社新書)より引用しました。豊富な写真と雲科学の知見から、身近な存在でありながら、本当はよく知られていない雲の実態に迫り、その心を読み解いていきます。