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中高年こそ「精液の色」を注視せよ! 赤は高血圧や前立腺がん、黄色はアルコール性肝炎の可能性も
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.12.15 06:00 最終更新日:2024.12.15 06:00
前立腺がんは、50代を過ぎると現われ始める、高齢男性に多いがんだ。
だが、米ハーバード大学の調査によれば、1カ月に21回以上射精する男性は、4~7回程度にとどまる男性に比べて、罹患リスクが約2割低かったという。
同調査では、1992年に46~81歳だった男性の射精回数を、2010年まで追跡。追跡できた3万人は、40代になっても多く射精している人ほど、前立腺がんリスクが低下することがわかった。つまり、中年になってからも射精回数を維持することが、健康を左右するというわけだ。
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■「赤」が出ると驚くがたいていは心配無用
だが50代になって、自分が放出した精液をまじまじと眺める人は少数派ではないだろうか。回数をこなすのはいいことだが、たまにはティッシュを広げてみよう。
「『精液の色がおかしいんです』と受診に来られる患者さんは、毎週のようにいらっしゃいます」
そう語るのは、所沢いそのクリニック院長で、泌尿器科専門医の磯野誠医師だ。
「精液の色の変化は、体が発する重要なサインです。もっとも多いのは、赤い精液が出てしまうケース。斑点状に赤が混じっていたり、錆びたような茶色っぽいものが混じっていたりすることが多いです。たいてい痛みはなく、驚いて受診される方が多いようです」(磯野医師・以下同)
赤い精液は、激しいセックス・オナニーによる出血や、高血圧が原因の場合もあるが、多くは精液に血液が混じる「血精液症」だという。
「精液が赤、ピンク、茶色になる症状です。ほとんどの場合、大きな問題にはならず、抗生剤や抗炎症剤で治ってしまいます。数週間で自然に治癒することも多いですね」
だからといって、放置しておくのは得策ではない。
「中高年の男性の場合、まれに血精液が前立腺炎だったり、前立腺がんの初期症状だったりすることがあるのです。50歳以上の患者さんには、採血をおこない、前立腺のたんぱく質(PSA)の値を計測し、がんの可能性を調べることをすすめています。ほかに症状がなく、血精液がきっかけで、がんが発見されることもあるんですよ」
赤い精液が出たら、たしかにあせりそうだが、黄色い精液は、読者のなかにも心当たりがある人がいるかもしれない。
「しばらく“オナ禁”をしたときに、黄色っぽい精液が出ることがありますからね。それは精嚢液や尿などの黄色い成分に由来するもので、もちろん問題ではありません。ただし、お酒をよく飲み、肝臓に不安がある人は要注意。アルコール性肝炎になると、皮膚や目の白目部分が黄色くなる『黄疸』が現われることが知られていますが、そのとき、精液も黄色くなることがあるのです」
また、セックスの後に急に黄色っぽくなった場合は、感染症を疑うべきだと磯野医師は警鐘を鳴らす。
「クラミジアやヘルペス、淋病などの性感染症が原因で、精液中に白血球が大量に混入した『膿精子症』である可能性があります。放置すると、精子のしっぽ部分の運動に悪影響を与え、不妊症の原因にもなります。膿精子症では、精液が緑色になるケースも見られます。いずれも細菌感染により、精液から悪臭がすることが特徴です」
ここから先はレアケース。緑色の場合、ほかにも心配するべき事態がある。
「緑膿菌による感染症の可能性も疑うべきです。健康な人が感染することはまれですが、体力や免疫力が低い人は、感染することがあります。高熱や寒けが出るほか、重症化すると血圧降下や敗血症性ショックを引き起こすことがあります」
医学的にも珍しい例が、青色の精液が出るパターンだ。
「長期間にわたって導尿カテーテルを使用したり、抗生物質であるミノサイクリンを服用した後に出ることがあります。同じく珍しいのが、黒色の精液。マンガンやニッケル、鉛などの重金属の血中濃度が高レベルになった場合に出ることがあるとされますが、公害対策の進んだ現代の日本で、お目にかかることはめったにないでしょう」
■がんリスクのある中高年は受診すべき
では、正常な白い精液を取り戻すために、どのようなことに注意すべきだろうか。
「長時間、自転車に乗る方は、サドルが性器周辺を圧迫し、骨盤内の血流が悪化しがちです。その結果、前立腺炎になり、血の混じった赤やピンクの精液が出るリスクが高まります。長時間のデスクワークも同じ。精子の質の低下にもつながりますので、柔らかいクッションやサドルを用い、長時間の座位を避けて、定期的に休息をとるようにしましょう」
精液の色に違和感を持ったら、気軽に泌尿器科を受診してほしいと磯野医師は語る。
「個室を用意するなど、プライバシーが守られたクリニックも増えていますから、安心して相談してください。血液混じりの赤い精液が出るケースは、若い人の場合はただちに気にしすぎることはないかもしれません。しかし、中高年の場合は前立腺に異常がある可能性がありますから、受診することをおすすめします。また、異常な色の精液が出ることが続いたり、痛みや排尿障害があったりする場合も、受診すべきです」
食生活やアルコールの摂取など、日常生活でも精液の色は変化するという。
「適切な射精回数を維持しながら、まずはご自身で精液の色をチェックしてみてはいかがでしょうか。射精の際に自分の体の状態を知ることができる、健康管理の第一歩です」
“賢者タイム”に、新しい習慣を加えよう。
【この精液の色が危ない!】
<白>
正常
<青>
・導尿カテーテルや抗生物質の影響
医学的にもレアケースだが、事例がある
<黒>
・重金属の血中濃度が高い
こちらもめったにない。脊髄損傷の人の精液が黒くなるケースも報告されている
<緑>
・前立腺炎、緑膿菌感染症
免疫力が低い人に重篤な症状を起こす緑膿菌感染症の場合が。膿精子症の可能性もある
<黄>
・膿精子症、黄疸、前立腺炎
クラミジア、淋病などの性感染症による膿精子症の可能性。不妊症につながる危険な兆候だ
<赤、ピンク、茶>
・血精液症、高血圧、前立腺炎、前立腺がん
多くの場合心配はいらないが、中高年の場合はまれに前立腺がんの初期症状のケースも
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)
写真・福田ヨシツグ