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【データ初公開】交通事故で「ちゃんと払ってくれる」損保会社ランキング! 専門弁護士が語るカギは「示談成立率」

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記事投稿日:2024.12.29 06:00 最終更新日:2024.12.29 06:00
出典元: 週刊FLASH 2025年1月7日・14日合併号
著者: 『FLASH』編集部
【データ初公開】交通事故で「ちゃんと払ってくれる」損保会社ランキング! 専門弁護士が語るカギは「示談成立率」

人身事故の対応は、損保会社によって大きな差が生まれる(写真・PIXTA)

 

《顧客満足度No.1》《365日24時間事故受付》《無料付帯のロードサービス》《専任担当者が最後までサポート》《保険料が安い》――。

 

 威勢のいいキャッチコピーが並ぶ「自動車保険」の広告。どの損害保険会社も同じようなサービスを展開しているから、保険選びは難しい。ある損保会社の社員が声を潜める。

 

「バッテリー上がりやパンク修理、レッカー移動などであれば、損保会社の負担額は大きくはなく、どの社でもすぐに対応できます。物損事故の処理は、マンパワーが少ない通販メインの『ダイレクト型』は厳しいときがありますが、『代理店型』なら早いものです。だから結局、最後は保険料で選ぶ人が多いんです。各社が顧客満足度を主張するのは、日常的なトラブルの対応が多いためです。しかし、こと人身事故の対応となると、損保会社によって大きな差が生まれますよ」

 

 

 重要なのは、損害金や慰謝料が高額になったときに、損保会社がしっかりと払ってくれるのかどうかだ。被害者側の交通事故を専門とする「にわ法律事務所」(愛知県名古屋市)の丹羽洋典弁護士に話を聞いた。

 

「どの損保会社がいいのか、という質問は多数、いただきます。契約者対応や保険料、手続きの簡便さなど、何をもって “いい” とするのかは難しい判断ですが、ひとつの目安になるのが、『示談成立率(示談率)』だといえます」

 

 丹羽弁護士は、2012年から2024年までの12年超の全事案(455件)、全被害者(548人)をデータベース化。損保会社ごとのランキングにした。これまで損保会社はもちろん、誰も公開したことのない、驚きの情報である。

 

「ランキングは、被害者側の請求額に対して、加害者側の損保会社が支払いに応じ、示談が成立した割合を集計したものです。示談率が高ければ被害者が納得し、早期に示談金を受け取ったことがわかります。一方、その率が低いものは『払い渋り』が起きるなどし、示談が決裂したケースが考えられます。相手方の損保会社は選べませんが、自分が事故を起こしたとき、きちんと支払いをしてくれる保険会社を選んでもらいたいとの思いで、ランキングを作成しました」(丹羽弁護士、以下注記のないものは同)

 

■350万円を請求したが、回答はわずか60万円だったケースも

 

 丹羽弁護士が担当したおもな損保会社のなかで、もっとも示談率が低かったのがJA共済だ。その具体的な事例が、2014年に家事労働者のX子さんが追突事故に遭い、慰謝料請求をしたケースである。

 

 丹羽弁護士は、事故による収入の減少、身体的・精神的な苦痛の補償、後遺障害により生じた収入の減収ぶんなど、X子さんの損害額を350万7865円と算定して、JA共済に請求した。

 

 しかしJA共済側からは、「60万129円しか支払わない」と、最終提示される。その差があまりにも大きいため提訴し、裁判所は150万円で和解をすすめ、成立した。丹羽弁護士が介入していなければ、60万円で示談にされてもおかしくなかった案件だ。

 

 そもそも、この追突事故の過失割合は「加害者10:被害者0」であり、その場合は、被害者側の窓口は損保会社にはならない。

 

「過失割合が0の場合、損保会社が示談を代行することは法律で禁じられています。そのため、X子さんが直接、相手方の損保会社と交渉する必要があったのです」

 

 多くの被害者は、示談についての知識がない。加害者側の算定結果が正当なものなのか判断がつかないのに、損保会社から「規定ではこの金額」と提示されて、被害者が鵜呑みにしてしまうケースが圧倒的に多いのだ。

 

 X子さんも、当初提示されたのは60万円にすらほど遠い金額だった。

 

「同様に、2020年に担当したケースは、慰謝料など169万円を算定したところ、JA共済からの回答はわずか20万円だったことがあります。ADR(裁判外紛争解決手続)を経て、105万円が認定されました。2019年には254万円に対して184万円と、比較的、高額の回答があったケースがありましたが、このときもADRでJA共済が提示した対案よりもはるかに高い234万円が認定され、示談には至っておりません」

 

 このデータをもとに、本誌はJA共済に見解を求めた。

 

「JA共済では、令和5年4月1日時点において、全国約2640カ所の自動車事故対応窓口において、約4610人の自動車損害調査サービス担当者が契約者・利用者・相手方に対して、誠意をもって迅速かつ適切な自動車共済の損害調査ならびに共済金支払いを実施しており、2023年度においては約1956億円の共済金をお支払いしております」(JA共済連調査広報部)

 

 と、実績を説明したうえで、今回、根拠にしている被害者数・示談数のサンプルが極めて少なく、網羅性に欠け、「印象」の域を出るものではない、と指摘する回答があった。

 

 丹羽弁護士が担当した全事例の示談率84.5%に対し、ランキング1位の損保ジャパンは92.4%と、高い数値だった。

 

「損保ジャパンとは、比較的示談がしやすいです。また、一般的に1000万円を超える高額案件となると、示談は成立しにくくなります。ランキングで2位のソニー損保(85.7%)、3位の東京海上日動(85.4%)も高額案件ではそれぞれ67%、62%まで示談率は下がります。しかし、損保ジャパンは高額案件でも85%。判断が難しい案件でも、示談が成立することが多いですね」

 

 東京海上日動は、契約者数が多く、必然的に被害者数も他社より多い。

 

「東京海上は、いい弁護士をそろえています。少額・高額にかかわらず、少しでも疑義があれば妥協することなく争ってきますが、払うときは払うので、示談率は85.4%と高くなっています」

 

■“最低基準” なのに「損保会社のおかげで10万円得した」と示談してしまう

 

 じつは、交通事故の慰謝料の算定基準は3種類存在する。まるで、同じ商品なのに定価が50万円、100万円、200万円とあるようなものだ。

 

「加害者側の損保会社が提示してくるのは、おもに『自賠責基準』から『任意保険基準』の間の金額です。やっかいなのは、『自賠責基準だと50万円ですが、ウチは60万円で算定しました。だから、これで示談成立してください』と言ってくる。じつは、弁護士を立てれば、もっとも高い『弁護士基準』で120万円得られる事故だったとしても、基準が3つもあることを多くの被害者は知らないので、『損保会社のおかげで10万円得した』と思って示談してしまうケースがあります。これは、自動車保険の構造的な問題です」

 

 それを踏まえると、「弁護士費用特約」のメリットは大きい。専門家が「弁護士基準」で交渉してくれるからだ。

 

「事故に遭って、弁護士特約を利用したとしても、以降の保険料が上がることはありません。自動車保険に弁護士特約をつけて、事故の際には弁護士に相談するのがいいと思います。むしろ、弁護士がついてないことによる損失のほうが大きいといえます」

 

 自動車保険は、パンフレットに目を通しただけではわからないことが多い。今後、損保会社が自ら示談率を公表するようになれば、契約者のメリットは大きいはずだが――。

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