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心臓弁膜症、心房細動、心筋梗塞…心臓病を招く8つのリスク!プロゴルファー倉本昌弘氏は「早期発見」で完全復活

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記事投稿日:2025.04.20 06:00 最終更新日:2025.04.20 06:00
出典元: 週刊FLASH 2025年4月29日・5月6日合併号
著者: 『FLASH』編集部
心臓弁膜症、心房細動、心筋梗塞…心臓病を招く8つのリスク!プロゴルファー倉本昌弘氏は「早期発見」で完全復活

ニューハート・ワタナベ国際病院・渡邊剛医師と心臓弁膜症を経験したプロゴルファーの倉本昌弘氏(写真・福田ヨシツグ)

 

「岡山県でのトーナメント中に風邪のような症状が出て、病院で診察を受けました。血液検査の結果、当初の診断は肺炎だったのですが、診てくださった循環器系の医師が『気になることがあるので』ということで心エコー検査を受けたところ、心臓弁膜症だとわかったんです」

 

 45歳だった当時のことを振り返るのはレギュラーツアー30勝、シニアツアー8勝を誇るプロゴルファーの倉本昌弘氏(69)だ。学生のころから不整脈はあったが、自覚症状はまったくなかったという。

 

 

「当初は、シーズンオフに手術を受けようと思いました。しかし、医師からは『地方で症状が急に悪化し、設備の整っていない病院で手術を受けることになったら、間違いなく人工弁になります。生きていられるかもわかりません』と言われ、驚きました」

 

 すぐに東京に戻ると、心臓弁膜症の一種で、心臓の弁が閉じにくくなって血液が逆流してしまう「僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症」だとわかった。約1カ月半後、東京慈恵会医科大学附属病院で手術を受けた。

 

「胸骨を切っておこなう開胸手術で、10時間ほどかかりました。私が受けたのは、自分の弁を治す『弁形成術』。本来、開胸手術は喉元から切るのですが、私がゴルフウエアを着用したときに第1ボタンを開けても傷が見えないよう、下から切ってくれたんです」

 

 20日間ほどで退院。整形外科の医師から「1年はプレーできない」と言われたが、不屈の精神で1カ月後から練習を再開した。

 

「左右均等に力がかかるぶんには痛みはなかったのですが、たとえば片手で物を取ろうとすると、術後しばらくのあいだは “イタタタ” と。おかげで、スイングのフォームがよくなりました(笑)」

 

 約9カ月後にはツアーに復帰。3年後には復活優勝を果たし、現在も活躍している。

 

 倉本氏が罹患した心臓弁膜症とは、どんな病気なのか。ニューハート・ワタナベ国際病院(東京都杉並区)総長の渡邊剛医師が解説する。

 

心臓病は、大きく心臓そのものの病気と、心臓に連結した血管の病気に分かれます。『心臓弁膜症』は前者で、4つの弁のいずれか、あるいは複数の弁が壊れてしまう病気です」

 

 渡邊医師は、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使う心臓手術では、世界最多となる年間約300件をおこなう “ゴッドハンド” だ。

 

「心臓は握りこぶしよりやや大きな臓器で、心筋(心臓の筋肉)が収縮を繰り返すことで、全身を巡った血液を受け入れ、代わりに新鮮な血液を全身に送り出すポンプの役割を果たしています。心臓の内部には血流をコントロールする4つの弁があり、一日10万回以上も開閉しています。この弁の機能障害が、心臓弁膜症です」(渡邊医師、以下同)

 

 弁は開閉することで血流を調整しており、不具合が生じると血流の調整がうまくいかなくなる。弁がうまく開かなくなり、血液がちゃんと流れなくなるのが「弁狭窄(きょうさく)症」、倉本氏のように、弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流するのが「弁閉鎖不全症」だ。

 

■自覚症状は動悸、息切れ、咳……しかし気がつかないことも

 

 心臓弁膜症は急に悪化することが少ない。動悸や息切れ、疲れが取れない、夜中に咳が出る、体がむくむなどの自覚症状が出ることはあるが、倉本氏のケースと同様、気づかないことも多い。ただ、心臓病のなかでは非常に多く、年間2万5000件ほどの手術がおこなわれているという。

 

治療法は弁形成術や弁置換術になりますが、昔は開胸しかありませんでした。しかし、今はダヴィンチ手術で、骨を切らずに小さな穴を3つ開けるだけの『キーホール手術』や、5cmほどの小切開で手術をおこなっているので、術後の回復が早くなりました。2018年からは同手術が保険適用となっており、患者さんの自己負担額も減りました」

 

 心臓の病気で、いまや国民病といえるのが、不整脈のひとつである「心房細動」だ。

 

「心房がブルブルと小刻みに震えて正常な収縮ができなくなり、本来はお互いに同期し、リズミカルに動いている心房と心室の動きが不規則になります。そのため、息切れ、めまい、胸が苦しいといった心不全の症状が現われます。心房細動は、続くと心房内の血液がよどみ、血栓ができやすくなります。その血栓が脳に飛ぶと、脳梗塞を起こすことがあるのです」

 

 心房細動があると脳梗塞のリスクが通常より5倍以上高くなる。脳梗塞全体の約30%が、心臓でできた血栓が原因だとされている。

 

「治療法としては、血液をサラサラにする薬を服用するか、足の付け根から心臓までカテーテルを挿入し、不整脈の原因となる部分を高周波で焼いて治療する方法があります。さらに当院の大塚俊哉医師らは、心臓の左心耳を切除して血栓の形成を防ぐ『ウルフ‐オオツカ法』という手術を開発し、積極的におこなっております。2022年には、保険適用になりました」

 

 一方、心臓に連結した血管の病気も、突然死に繋がりかねない。特に、「狭心症」と「心筋梗塞」には要注意だ。

 

「心臓の表面を走る血管(冠動脈)は、動脈硬化が原因で血管が狭くなったり、詰まったりします。血液の流れが20%減くらいになると狭心症となり、完全に詰まってしまうのが心筋梗塞です。いずれも症状は胸の痛みで、鷲掴みにされるような痛みや、グーッと締めつけられるような痛みが出るといわれます。また、左胸から左右の肩など、心臓とは違う場所に痛みが出たり、背中や胸部の不快感や圧迫感をともなったりすることがあります」

 

 狭心症の痛みは20分以内に収まるが、心筋梗塞は30分以上も続く。まさに “冷や汗もの” だ。

 

「詰まった血管の先には血液が流れず、栄養や酸素が届かなくなります。長くとも発症から6時間以内に血液を通さないと、心筋が壊死します。時間との勝負なので、すぐに救急車を呼んでください」

 

 心筋梗塞の治療法は、肘や足の付け根などからカテーテルを通し、冠動脈の狭くなったり詰まったりした箇所にステント(ステンレス製の筒状の網)を置いたり、バルーンを広げて血流を確保する方法が多い。カテーテル手術ができなかったり、何本も血管が詰まっていたりする場合は、詰まった冠動脈に迂回路を作る「冠動脈バイパス手術」がおこなわれる。

 

 そして、同じくらい怖いのが「大動脈瘤」だ。

 

「大動脈は、心臓から新鮮な血液を送り出すための太い血管です。動脈が硬化し、もろくなった箇所に高い血圧がかかると、その部分が膨らみコブができます。大動脈の内側が裂け、血液が内膜と外膜の間に流れ込む『解離性大動脈瘤』では、24時間以内に約半数が死亡するというたいへん危険な病気で、緊急手術が必要です」

 

 症状は、これもグーッと締めつけるような痛みが続き、背中に激痛が走るという。治療法はおもに大動脈瘤ができた箇所の内側に管を挿入する「ステントグラフト内挿術」と「人工血管置換術」がある。

 

 渡邊医師が解説した心臓病に、共通するリスクは8つ。(1)高血圧(2)高脂血症(3)糖尿病などの生活習慣病と、(4)喫煙(5)ストレス(6)肥満(7)高尿酸血症(8)痛風だ。

 

 さらに心房細動は、「睡眠時無呼吸」も原因のひとつ。患者の約4割が心房細動を起こしているという。渡邊医師は「お酒の量などにも注意し、生活していくことが予防につながります」としたうえで、こう注意を喚起する。

 

「心臓弁膜症や心房細動は、一般的な健康診断で受けられる『心電図検査』や、医師による『聴診』での心雑音で見つかります。また、心筋梗塞や心筋症は、心臓専門の病院で受けられる『冠動脈CT検査』でわかります。胸が痛い、息苦しいという予兆があったり、8つのリスクに該当したりする人は、早めに検査を受けることが大切です。しかし、大動脈瘤は予兆もなく突然起き、残念ですが検診でわかる病気ではありません」

 

 倉本氏もこう振り返る。

 

「私は今年で70歳になりますが、元気にプレーをして生活しています。弁膜症は怖い病気ですが、きちんと手術をして治せば、悲観するような病気ではないと思っています。早く病気を見つけるためにも、息苦しさなどを感じたときに加齢のせいとは思わずに、検査を受けていただきたいですね」

 

 心臓病は命に直結する病気だが、渡邊医師のように最新の技術で患者の負担減を第一に考え、治療をおこなう医師がいる。自分の生活習慣を見直し、近くの専門医を探してみよう。

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