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「曜日限定営業」の隠れた名店が増加中!週3日以下のオープンでも客足が絶えない「激ウマ料理店」を総直撃

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記事投稿日:2025.05.18 11:00 最終更新日:2025.05.18 11:00
出典元: 週刊FLASH 2025年5月27日号
著者: 『FLASH』編集部
「曜日限定営業」の隠れた名店が増加中!週3日以下のオープンでも客足が絶えない「激ウマ料理店」を総直撃

「浅草真九郎」(左)と「PANDArosso(パンダロッソ)」の店主

 

 週休3日制を取り入れる企業が一部で現われ始めている。が、飲食店は一歩進んでいるようだ。週に数日しか営業しない店が増えており、人気を呼んでいるという。

 

 退職前後、趣味と実益を兼ねて憧れていたビジネスに踏み出したのが、喫茶是々(東京・三軒茶屋)の鈴木智之さんと、菓子工房momo(京都・山科)の巽夫妻だ。フレンドリーな接客と、実直な手仕事ぶりにファンがついている。

 

 巽夫妻は、開業前に “アップルパイの街” 青森県弘前市を訪れ、町中のケーキ店や喫茶店のパイを食べたという。

 

「そのなかで、もっとも気に入ったものが、自分たちの作るパイの出来栄えに近かった」(夫・康眞さん)

 

 と大いに自信を得て、アップルパイを主力商品にすると決めたという。

 

 客にとっては特別感があり、“わざわざ行きたくなる” のが曜日限定店。ネットに訪問記をアップする利用者は多く、SNSとの相性は抜群だ。

 

 実際、今回紹介した店のほぼすべてがSNSのアカウントを持ち、日替わりのおすすめを告知するなど、日々の発信を怠らない。

 

「店のLINE公式アカウントを作り、来店スタンプを10個集めたお客様には、600円相当の値引きサービスをしています。最近はSNSを見ていらっしゃる新規のお客様が、全体の3割くらいに増えていますね」(「喫茶是々」鈴木さん)

 

 営業日時の変更や、商品の売り切れで早めに閉店することをSNSで告知する店も多い。実際に訪れる前には、店のアカウントをチェックしてほしい。

 

 また、今回の取材では、仕入れや仕込みを丁寧にするあまり、営業日を絞らざるを得ない店も多かった。

 

そば㐂り 日曜庵」(東京・柴又)の創業者の西村宏さんは、あくまで「熟成そばのうまさを知らしめたい」という思いで、およそ四半世紀も店を続けてきた。

 

 営業日を減らせば売り上げが下がるのは明らかだが、浅草真九郎(東京・仲六郷)の小野ウどんさんは、涼しい顔でこう語る。

 

「手打ちうどんの魅力を広めるのが、僕の使命。お金には本当に興味がないんです」

 

 うどん鈴木鰹節店(東京・新小岩)の鈴木洋平さんも、「だしの美味しさを伝えたい」という想いに突き動かされていた。そんな各ジャンルの伝道師たちが、自分の理想を追求した一品を送り出している。

 

 巨大チェーンが幅を利かせる飲食業界に、風穴を開ける存在になりつつある曜日限定店。以下で、行くだけで特別な気分になる“激レア”14店を紹介!

 

 

■火曜・水曜営業【浅草真九郎】(東京・仲六郷、うどん)

 

 エモい食感のうどんを出す店だ。店主の小野ウどんさんは大学卒業後に入社した人材企業を3カ月で退社。うどん職人の道を選んだ。新宿や水天宮の有名店で3年間修業した後、「うどんアーティスト」を自称。出張での手打ちライブパフォーマンスをおこなってきた。音楽に合わせ、如意棒よろしくのし棒を振るう「開店の儀」は必見。ニューヨークでの活動は映画にもなった。

 

「うまいものには官能性や複雑性があると思っていて、うどんもそうなんです。そこで僕は、コシと粘りが強い『讃岐』と、口当たり柔らかな『博多』のあわいの食感を狙った “讃博系うどん” を独自に生み出しました」。冷たいざるやぶっかけに照準を定めた麺打ちで、しっかりした歯応えの後にくる、ねっとりとした喉越しが絶妙。食べるうちに恍惚とした。

 

住所/東京都大田区仲六郷2-18-14
営業時間/11:30~14:30

 

■火曜・水曜営業【うどん鈴木鰹節店】(東京・新小岩、うどん)

 

 千葉・鴨川の鰹節店5代目の鈴木洋平さんが、「出汁のおいしさを若い世代にも伝えたい」という思いから始めた店だ。月〜水曜は鰹節店の配達などの業務に従事し、木曜はこの店での仕込みがあるという。「夫はずっと一日も休んでいないんです」と心配するのは妻の亜衣さん。

 

 2人はマッチングアプリで出会ったが、なんと亜衣さんの実家も千葉・旭で数代続くイワシ加工業者。家業が近く、お互いの距離は急速に縮まったとか。麺は国産小麦の自家製で、コシの強さに出汁をしっかり含ませる滑らかさを備える。ずるっと吸い上げると、鰹節と房州煮干しの香りがたまらない。

 

住所/東京都葛飾区新小岩1-28-8
営業時間/10:00~15:00

 

■金曜・土曜・日曜・祝日営業【そば㐂り 日曜庵】(東京・柴又、そば)

 

 映画『男はつらいよ』の舞台、柴又は帝釈天の真裏にある。初代店主の西村宏さんは1980~1990年代にCMの名カメラマンとして鳴らし、数々の賞を受賞している。当時は国内外のロケで家を空けっぱなし。夫人への“罪滅ぼし”として2001年に創業した。「だから儲けなんか考えてないの。そのカミさんも5年前には亡くなってね。今は長男に店も任せっきり」。

 

 店のコンセプトや流儀は、宏さんが妻とともに打ち立てたもの。南仏風の店の建築から教会を思わせる静謐な内装、作家の手になる照明や器に至るまでこだわり抜き、肝心の蕎麦は厳選した国産の玄蕎麦を低温貯蔵庫で3年以上寝かせ、熟成させたものを自家製粉している。

 

 驚いたのは蕎麦がきだ。布巾で包んで茹で上げ、まるで山芋を混ぜ入れたかのようにふわふわだが、蕎麦粉のみで作る。その滋味深い甘みに陶然とした後、啜る蕎麦の喉越しの爽やかさよ。「新そばが最上」という概念を覆す名店だ。

 

住所/東京都葛飾区柴又7-13-2
営業時間/11:00~売り切れ次第終了

 

■木曜・金曜・土曜営業【宝藏院 寺そば】(京都・宇治、そば)※2025年6月7日から土曜・日曜営業

 

 日本三禅宗のひとつ、黄檗宗(おうばくしゅう)大本山・萬福寺の塔頭・宝藏院では、寺そば(600円)というヴィーガンラーメンを週3日、1日30食限定で販売する。春は淡口醤油、夏は塩、秋は濃口醤油、冬は味噌豆乳と味が変わる。トッピングにはメンマ、トウモロコシ、わかめ、白キクラゲ、糸トウガラシ。これらは仏教の五色(ごしき)を表わす。レモングラスにも似た馬告(マーガオ)という中国の香辛料も独特のアクセントを加える。

 

「当院には開祖・鉄眼禅師が17年かけて完成させた約6万枚の経版木が収蔵され、その多くが国の重要文化財指定を受けています。その存在を少しでも知っていただこうと、本山のボランティアスタッフのアイデアで寺そばの提供が始まりました」(盛井幸道住職)。収蔵庫の見学日は限られるが、ぜひ寺そばとともに堪能したい。

 

住所/京都府宇治市五ケ庄三番割34-4
営業時間/11:00~14:00

 

■木曜営業【SOSラーメン】(大阪・東中島、ラーメン)

 

「もともとは台湾人の父が和歌山で屋台を始め、やがて名古屋で中華料理店を出しました。他に類を見ない店として、私も順調に経営していました。そこで2010年に、大阪のこの物件を買ったのですが……」と店主の呉知暁さん。だが、新幹線停車駅近くなのに、夜の一帯はまるでゴーストタウン。ホテルのアルバイトを始め、休みの木曜に店を開けたのが、週1営業のきっかけだ。

 

 大粒に挽いた肉味噌や、別注のチャーシューが清湯スープに溶け込んだSOSラーメン(800円)は登録商標で、「Spicy+Oh!+Spicy」の略。その名のとおり、“辛いが旨いビールが旨い” 一杯だ。

 

住所/大阪府大阪市東淀川区東中島1-13-43
営業時間/11:30~13:30 18:00~20:00

 

■平均週3日営業【純麦】(東京・品川区、ラーメン)

 

 住所非公開・完全予約制の高級ラーメン店。平均すれば、週3日ほど限定営業しているという。「麺処 ほん田」などで修業を積んだ店主の矢嶋純さんが2023年4月、満を持して開業した。「ラーメン1杯1000円の時代。せっかくだから契約農家の新鮮な野菜など、いろいろ出したかった」。ラーメンをメインに据えたコース料理(7700円)は、ラーメン出汁茶碗蒸し、冷とろろ小そば、コハダの桜漬けにマグロの漬け、藁焼きチャーシューなど次から次に料理が出てくる(メニューはいずれも取材時)。

 

 要のラーメンは丼を覆わんばかりのレアなチャーシューの迫力に圧倒される。魚介出汁に牛脂入り醤油だれが効いたスープはあっさりながら洋の香りがし、中太のずしっとした麺に見事に絡んだ。〆は尾崎牛の手巻き寿司、あまおう苺とさくらのかき氷という塩梅だ。舌もお腹も大満足の1時間半だった。

 

住所/東京都品川区内
営業時間/要確認

 

■金曜+週1~2日営業【PANDArosso(パンダロッソ)】(大阪・守口、パン)

 

 守口のどの駅からも微妙に離れた商店街にある。元はカフェだったという店内は1、2階に分かれ、ゆったりと食事が楽しめるのが特徴。店主の徳永歩美さんが運んできてくれた「選べるトーストセット」(800円)は、看板のもちもち食パンを用いたトースト(今回はハムチーズをチョイス)に、イタリア風卵焼きと2種のサラダにヨーグルトがつき、ドレッシングまですべて自家製。モーニングで食せば、朝から大満足だ。

 

「湯種製法のうえに三段仕込みなので、よけいもちっとするんですよ。府内の有名店に十数年勤務する夫の直伝です」と徳永さん。夫の休日の金曜だけは、確実に営業するそうだ。

 

住所/大阪府守口市梶町4-52-6
営業時間/10:00~17:00(金は8:30~。そのほか月に2回ほど移動ベーカリー営業)

 

■火曜・金曜営業【パン工房 Miel Maman(みえる ままん)】(群馬・高崎、パン)

 

 高崎の住宅街にひっそりと佇むベーカリー。素材にこだわりつつも、「ふだん使いできるパン」をモットーとする。店主の小山久美子さんが、還暦を過ぎてから開業した店だ。

 

「2018年に自宅を改装し、パン教室を開くのと同時に始めました。自家製酵母を使った最近流行りのハード系にも力を入れつつ、昔ながらのソフトな食感のパンを多数揃えるようにしています。自慢はクリームパン(250円)。ラム酒を少し加えることで、味わい深くしているんです」。たしかに、一口齧るとカスタードの弾力と濃さが違う。作り手の篤実さを表わすように、素朴ながら妙味あるパンを提供しつづけている。

 

住所/群馬県高崎市岩押町15-12
営業時間/11:00~14:00 16:00~17:30

 

■水曜・木曜・金曜営業+土曜は不定期営業【初台スパイス食堂 和魂印才たんどーる】(東京・西新宿、カレー

 

 店名に冠する「和魂印才(わこんいんさい)」は、店主の塚本善重さんの料理に込める想いだ。「修業当時、インド人のシェフに言われたんです。『日本人にスパイスがわかるのか』って。それなら自分は日本人に合った和の食材を使い、スパイスとの融合を追い求めようと」

 

 そのシェフとは日本のインド料理界の第一人者モハメド・フセイン氏。修業期間を終えるころには、ナンを焼く窯のタンドールの扱いにおいては「塚本がいちばんうまい」と、そんな師からお墨付きをもらうまでになった。「1997年に沼袋で始めた今の店の名は、タンドールへの思い入れからつけました。日本人なので平仮名表記にしたんです」。

 

 2012年に脳梗塞で倒れて以降、より丁寧に料理と向き合うために今の営業形態へ。定番「鶏ひき肉とナンコツのキーマカレー」に梅干しをのせれば、和(日本)と印(インド)の融合だ。

 

住所/東京都新宿区西新宿4-41-10スカイコート西新宿1F
営業時間/11:45〜14:30(土はランチ、ディナー、料理教室など不定期営業。要問い合わせ)

 

■月曜・水曜・金曜営業【あいまいカレー】(大阪・天神橋、カレー)

 

 大阪・南森町に「辛口料理 ハチ」という月水金の日中、数時間だけしか開けない伝説のカレー店があった。ライスをよそってから別仕込みの角切り牛肉を載せ、鼻がひりつくようなカレーソースをたっぷりかける。中毒性が高いと評判になり、2012年の閉店後も、惜しむ声が絶えない。

 

 その伝説のカレー店の味を、店主の小坂あいさんは忠実に再現している。「ハチのおばちゃんは派手なレインボーヘアで、仕込みで夜な夜な、魔女みたく鍋をかき回してはるんです。食べてみると、すごく辛いのに癖になるんです。ヤバいもの入ってるかなというくらい(笑)」。

 

 辛さは小悪魔・魔女・自己責任と3段階。記者は3つのあいがけを頼んだが、 “自己責任” が余計だった。食べた先からしゃっくり、汗や涙まで出る。「ほら、言わんこっちゃない」と笑う小坂さんが魔女に見えた。だが、その後はじわりと旨みが伝わり、爽やかな香気が鼻に抜ける。たしかにやみつきになるカレーだ。

 

住所/大阪府大阪市北区天神橋2-2-28永井ビル2階
営業時間/11:00~13:30(水は18:00~20:00も営業)

 

■金曜・土曜・日曜営業【喫茶是々(ぜぜ)】(東京・三軒茶屋、カフェ)

 

 三軒茶屋駅から徒歩10分ほどの住宅街の店。客は近所の住民が多いが、SNSを見てふらりと寄る珈琲党も増加中だ。「食材メーカーでの定年を控え、店をベースに人の輪を広げたいと思ったんです。以来、スペシャリティコーヒーの先駆けの堀口珈琲の講習会やベターホームの料理教室に通い、どんどん深みに(笑)」と語るのは店主の鈴木智之さん。

 

 手製のチョコレートケーキ(500円)は、ナイフでスーッと切れるスポンジにチョコクリームがきれいに塗られ、ハンドドリップのコーヒー(600円~)にぴったり。京都の名店のレシピに学んだ「関西風玉子サンドイッチ」(600円)も人気だ。「やはり何事も勉強だよね」とうなずく智之さんに、妻のユカリさんがほほ笑んだ。

 

住所/東京都世田谷区上馬2-24-11
営業時間/12:00~18:00(日は13:00~)

 

■木曜・金曜・土曜営業【Hiromi & Co.】(東京・日本橋、スイーツ

 

 店主の小山弘美さんは服部栄養専門学校で学び、3年間の会社勤務の後、同校の秘書課に。昨年亡くなった服部幸應前校長から、薫陶を受けた。「研修旅行で憧れのパリに行くことができました。その後、あらためてパリに渡り、駐在員の奥様たち向けにお菓子教室を開いたり、プライベートレストランでシェフをしたりして5年ほどを過ごしました」。

 

 夫でアートディレクターの浅井俊介さんと出会ったのもパリ。浅井さんが手がけたキャラクター“パリィさん”が描かれたクッキーアソートBox(1180円)は、手土産にも。2021年の開店以来、曜日限定営業を続けてきた同店。日本橋のなかでも穏やかな空気が流れる一帯に、よく似合う。

 

住所/東京都中央区日本橋大伝馬町14-8岩並ビル1F
営業時間/12:00~19:00(土は12:00~17:00)

 

■金曜・土曜・日曜営業【Atelier Ettoi(アトリエ エトワ】(群馬・前橋、スイーツ)

 

 前橋市で姉妹が営むパティスリー。開店以来の二枚看板は、注文後にクリームを詰めるクッキー生地のシュークリーム(後列左、380円)、ねっとり濃厚な味わいのバスクチーズケーキ(後列右、3600円)だ。オーナーシェフの加藤瑞木さんは妹で、都内の高級レストランや一流ホテルで経験を積み、2021年からレンタルスペースで日曜限定営業を開始、2022年に現在の実店舗をオープンした。

 

 経理やサイト作成を担当するのは姉の高橋萌菜美さん。デザイン会社勤務だったため、商品撮影もお手の物だ。「2人で意見を戦わせ、通販で展開できる焼き菓子やチョコレートにも注力しています」(高橋さん)。

 

住所/群馬県前橋市天川大島町2-17-1
営業時間/11:00~17:00(金は~19:00)

 

■木曜・金曜・土曜営業【菓子工房momo】(京都・山科、スイーツ)

 

 元教師の夫妻が営む京都のアットホームな店だ。巽道子さんの小学生のころからの趣味は洋菓子作り。3人の息子も、母お手製のケーキで育った。「息子らは『ウチのが一番や』と言うてくれます(笑)」。当時からレシピは不変というアップルパイ(340円)を食べれば、三兄弟の台詞が身内びいきではないことがわかる。

 

 香辛料抜きで優しく甘煮された季節ごとのリンゴが、座布団状のパイ生地の上で居住まいを正す。季節限定「和栗のモンブラン」(950円)のための栗の皮を剥くなどの力仕事や、イートインスペースで提供する本格的なコーヒーを淹れるのは夫の康眞さんの役目。教え子らもよく来店し、夫妻の老後を桃色に彩る。

 

住所/京都府京都市山科区日ノ岡鴨土町10-1
営業時間/11:00〜18:00

 

※価格は5月9日現在、税込みです

 


写真・保坂駱駝、鈴木隆祐 取材/文・鈴木隆祐

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