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アマゾンもグーグルも…なぜスマートスピーカーの販売が続くのか?

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.03.11 06:00 最終更新日:2018.03.11 11:09

アマゾンもグーグルも…なぜスマートスピーカーの販売が続くのか?

 

 人工知能の定義については、色んな観点があると思います。
 機能的な観点、哲学的な観点、マーケティング的な観点……定義する人間によって観点や内容が違うので混乱している人も多いでしょう。

 

 ここでは、人工知能の開発に携わり、開発の現場に出て実際にプログラミングをしている僕の解釈を話させていただきます。僕が思うに、2018年現時点で人工知能とは「ディープラーニング」そのものです。そして重要なのは、ディープラーニングを使って何ができるかだと考えています。

 

 色んな有識者が「ディープラーニングはすごい」「ディープラーニングは革命だ」と言っていますよね。でも、いまいちピンと来ていない人も多いと思います。まず、ディープラーニングは何ができるかからお話ししていきましょう。
 ものすごく簡単に言うと、ディープラーニングとは「分類」ができます。

 

 種類や性質や系統など、何らかの基準に従って区分することを「分類」と言いますよね。ディープラーニングがやっているのは区分だと考えてください。

 

 例えば目の前に猫がいたら「これは猫である」。あるいは、目の前に犬がいたら「これは猫じゃない」。その分類をしているのがディープラーニングだと理解すれば良いでしょう。ディープラーニングは「機械による目の獲得」だと言われています。なぜなら、この分類の精度が高すぎて、あたかも人間の目のように物事を認識しているように感じられるからなのです。

 

■次々に発売される「スマートスピーカー」

 

 画像認識以外だと、企業が着々と推し進めている領域の1つは音声認識です。AmazonはEcho、GoogleはHome、日本だとLINEはClovaと呼ばれる、人工知能を搭載した「スマートスピーカー」の販売を2017年に始めましたよね。目指すのは「機械による耳の獲得」です。

 

 これは画像認識の次を見ていた成果だと思いますよ。スマートスピーカーを屋内に設置すれば、企業は家の中のリアルデータを取得できます。リアルデータとは、インターネット上の活動履歴をバーチャルデータと言うのに対して、個人や企業の実世界での活動についてセンサー等で取得したデータを指します。

 

 特に人間の音声は、リアルデータの中でも比較的採取しやすい部類の1つです。今まではスマートフォンに内蔵されていたAppleのSiriや、Googleアシスタントを使って声を集めていたのですが、これらは検索など特定のシーンでしか使われなかったようで、データの広がりに欠けていたのだと思います。

 

 スマートスピーカーを家の中に置けば、プライバシーの問題に対応さえすれば、あらゆる音声データを入手できます。スマートスピーカーを提供している企業の多くが、BtoCビジネスを手掛けている点からも分かる通り、自社のサービスに反映させようという魂胆が透けて見えます。

 

 ただしスマートスピーカーにも弱点があります。それは、家の中を移動する足を持たない点です。家の中に置いたとしても、全ての家の音声データが手に入るわけではありません。特定の人の特定の声だけなのです。各企業としては一家団欒の真ん中に置いてほしいでしょうが、なかなか上手くいかないでしょう。

 

 そんな中、僕が注目しているのはソニーが2017年10月に発表したaiboです。
 1999年に発売を開始したペットロボットの後継機になります。2006年には販売を終了していましたが、11年ぶりの復活となりました。

 

 新しく登場したaiboには、ソニー独自の音声・画像認識用ディープラーニング技術を用いた人工知能が搭載されていると言われています。飼い主の顔と声を認識して、愛情を持った接し方をすれば、それに応えてくれるようです。
 接すれば接するほど愛情が深まる仕様ですから、多くの飼い主がaiboと時間を共に過ごそうとするでしょう。

 

 つまり、aiboはスマートスピーカーの欠点を補う「足」を持ち、家の中のリアルデータを取得できる能力を備えているのです。飼い主の方からaiboに接してくれるのですから、リアルデータの収集という観点では非常に優れたUX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)だと言えます。

 

 一見、スマートスピーカーとaiboは結びつかないかもしれません。しかしリアルデータの収集に限って言えばどちらも狙いは同じであり、aiboはスマートスピーカーの弱点を補う優秀なセンサーです。
 久しぶりの日本の快挙だとも言えます。GoogleやAmazonが地団駄を踏む音が聞こえてきそうです。

 以上、田中潤氏と松本健太郎氏の共著『誤解だらけの人工知能〜ディープラーニングの限界と可能性』より引用しました。人工知能とはいったいなんなのか、人工知能はこの先の社会をどう変えていくのか、そして、人工知能に私たちはどう対応すべきなのか、この一冊ですべてわかります!

 

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