
ハウス食品グループ本社所属の今井真介氏
ユニークな研究に贈られる世界的な賞なのに、イロモノ扱いされがちなイグ・ノーベル賞。じつは、日本は2007年から連続で受賞者を輩出する「常連国」だ。その後、彼らにはどんな恩恵がもたらされたのか? 笑いの裏にある思い、そして人生の転機を聞いた!
玉ねぎを切ると涙が出る理由を解明したのが、ハウス食品グループ本社所属の農学博士・今井真介氏(68)だ。
「当初は、レトルトカレーに使用する玉ねぎとニンニクを炒めたペーストが、緑色に変色する原因を調べていました」
玉ねぎを切ると涙が出るのは、「催涙因子(LF)」という辛味成分が発生するからである。従来、LFが発生する反応には、ひとつの酵素だけが関係していると思われてきた。しかし、今井氏らの研究で、「LFS」という新しい酵素も関係していることが判明。この新発見の「LFS」が、玉ねぎが人を泣かせる仕組みには、必須の酵素だったのだ。
この論文は2002年に科学雑誌「ネイチャー」に掲載され、2013年にイグ・ノーベル賞化学賞受賞の連絡が届く。
「最初に授賞式への参加に手を挙げたのは、5人の社内共同研究メンバーのうち、僕ともう一人だけ。主催者は、ボストンまでの旅費を負担してくれませんから。その後、会社から出張費が出ることになり、4人に(笑)。スピーチは、持ち時間の1分を過ぎると少女に『退屈だからやめて』と言われるのが恒例で、メンバーの1人が、彼女に玉ねぎの人形を渡したところ、大喜びする姿が世界に報じられました」
2015年には、涙の出ない玉ねぎ「スマイルボール」を発売。その後、玉ねぎの催涙成分を活用した涙液回収キットにも繋がった。玉ねぎ一筋の30年が、涙を笑顔に変えたのだ。
写真・福田ヨシツグ
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