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ベーシックインカムで「労働意欲が減少」「堕落する」はウソライフ・マネー 2018.05.13

ベーシックインカムで「労働意欲が減少」「堕落する」はウソ

 

「ベーシックインカム」(BI)は、収入の水準に拠らずに全ての人々に無条件に、最低限の生活を送るのに必要なお金を一律に給付する制度だ。一般には、地域再生のためのものではなく、貧困者を救済するための制度として考えられている。

 

 BIはヨーロッパでは18世紀から唱えられている古いアイディアであるものの、主要国では今のところ導入されたことがない。だが、BIを導入しようとする運動が近年、特にヨーロッパ諸国を中心に高まっている。

 

 BIを導入することには様々なメリットがあり、BIが近年の先進国における格差の拡大や貧困の増大を改善する手段として期待されるようになったからだ。

 

 メリットとして何よりも、誰もが食いっぱぐれることなく、安心して暮らせるようになることは大きい。

 

 生活保護があるから貧困に陥っても安心して暮らせるなどと思っている日本人は少ないだろう。生活保護は最低限の生活の保障を謳っているものの、穴だらけのセーフティーネットであり、受給資格のあるはずの人の2割程度しか受給できていない。

 

 最低限の生活すら保障されていないこうした状況では、単に生活が困窮すること以外にも、「ブラック企業に入っても辞められない」「病気を患っていても働き続けなければならない」「暴力を振るう夫と離婚することができない」「十分な期間育休をとることができない」といった様々な問題が発生する。

 

 BIのある社会では、これらの問題をある程度解消することができる。

 

 実際に、1974年カナダのドーフィンという町で行われたBIに関する実験では、DVが減少し、育休期間が長くなることが確かめられている。

 

 そればかりか、「住民のメンタルヘルスが改善される」「交通事故が減少する」「病気や怪我による入院の期間が大幅に減少する」「学生の学業成績が向上する」といった思わぬ効果も現れた。

 

 恐らく、BIによって時間や気持ちにゆとりができることが、あらゆる方面にわたって望ましい波及効果をもたらしているのだろう。

 

 短期的な実験では計れないが、少子化を改善する効果も期待できる。たとえば毎月7万円と想定した場合、大人だけではなく子供にも全員に7万円といったお金が給付されるわけだから、子沢山の家庭はそれだけで裕福になり得る。

 

 今の社会では、相手の収入を考慮して結婚を決める女性は少なくない。だが、BIのある社会では、たとえ相手の収入が少なくても結婚して子供を生み育てることが可能なのだ。

 

 そして、全国どこの住人に対しても7万円といった一律の給付がなされるならば、がむしゃらに働いてお金持ちになろうという気がない人は、地方に住んだ方が豊かな暮らしが営めることになる。

 

■デメリットと誤解

 

 一方、BIのデメリットして最も頻繁に挙げられるのは、労働意欲の低下だ。労働しなくても最低限の生活が営めるならば、多くの人が労働しなくなるのではないかということだ。

 

 たしかに、月50万円も給付されたら、多くの人々が会社をやめてしまうだろう。実際、私が30人の学生にアンケートをとったところ、月50万円の給付が一生涯保障されるならば就職しないと全員が回答した。

 

 他方、これまで行われたBIに関する実験では、日本円にして月当たり3万円から15万円程度の給付がなされてきたが、その程度では、労働時間はわずかしか減ることがない。

 

 先に挙げたカナダのドーフィンで行われた実験では、全労働時間が男性では1%、既婚女性では3%ほど減少したに留まった。
しかも、その理由の多くは、子供と過ごす時間を増やすことや、十代の若者が家計を支えるための労働をしなくて済むというようなことだった。

 

 要するに、社会的に望ましいと思われるような形での労働の減少なのである。

 

 BIが導入されて7万円の給付が得られるようになったとしても、働いて20万円を得た人は、今まで通り税金を除いた残りは全て自分の実入りとなる。

 

 7万円のBI給付のみで最低限の生活を送っていた人が働き始めても、給付額が減らされることはない。その点が、生活保護とは決定的に異なる。

 

 ここでついでに述べておくと、BIを導入すると人々が堕落するというのもまた誤解だ。西アフリカのリベリアでは、スラム街に住むアルコール中毒者や麻薬中毒者、軽犯罪者に対し、200ドル(約2万円)を給付する実験が行われた。

 

 彼らは、そのお金をアルコールや麻薬ではなく、食料や衣服、内服薬などの生活に必要な商品に費やしたという。

 

 このように、BIにまつわる「労働意欲を失う」「人々が堕落する」という2つの大きな誤解を解くことができれば、BIの実現に向けて私たちの社会は数歩前進することができるだろう。

 以上、井上智洋氏の新刊『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)を元に構成しました。AIと経済学の関係を研究するパイオニアが、BIに関する様々な問題を深く掘り下げて考察します。

 

●『AI時代の新・ベーシックインカム論』詳細はこちら

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