「不要な薬、不要な手術などを『過剰医療』といいます。そして、その必要以上の医療行為が、むしろ患者の体調を害し、死亡率を高めてしまっている現実があるのです」
20年以上、予防医学の立場から海外の医学論文を研究し続けている新潟大学名誉教授の岡田正彦氏は語る。
命を救うはずの医療が逆に命を縮めているという衝撃の事実。入口は、健康診断や人間ドックなどの検査だ。
検査で「異常あり」と診断される数値には、じつは根拠不明なものが多い。たとえば「メタボ健診」では、男性で腹囲が85cm以上、BMI(身長と体重で計算する体格指数)の数値が25以上を「肥満」と規定。生活習慣病などを引き起こす原因になるとされているが……。
「欧米ではメタボ健診がおこなわれておらず、また多くの研究で、もっとも死亡率が低いのはBMI24〜26程度という結果が出ています。日本では『メタボ』とされている数値でも、長生きしているのです」(岡田氏、以下同)
一般の健康診断では、コレステロールの値も焦点になる。LDL(悪玉)コレステロールでは120mg/dℓ(境界型) 以上が異常だが、その日本基準こそが “異常” なのだという。
「たとえば米国では、LDLコレステロール値が190mg/dℓ未満なら、薬はいらないとされています」
血圧に関しても、日本はズレている。
「日本高血圧学会のガイドラインでは、上の値が140mmHg、下の値が90mmHg以上を『高血圧』としていますが、高齢者は血圧が高くなりがちです。米国では、60歳以上で最高値が150mmHg未満は薬は不要だとされています。しかし日本では、年齢が考慮されません」
また、検査自体が悪影響を及ぼすことも。糖尿病には本検査でおこなわれる「ブドウ糖負荷試験」がある。
「75gのブドウ糖水溶液を飲んで血糖値を測るのですが、これは5g入りのスティックシュガー30本分の糖分に相当します。糖尿病発症の後押しをするようなもので、非常に危険です」
さらに、日本人の死因の3分の1を占めるガンの検診についても同様だ。国を挙げてガン検診を推進しているが、検診で死亡率を下げる効果が証明されていないどころか、死亡率が高まったというデータすらあると岡田氏は指摘する。その原因は、放射線だ。
「英国の研究チームが、日本人のすべてのガンのうち、3、4%はレントゲン検査が原因と結論づけています。被曝量がレントゲンの数十倍から百数十倍もあるCTを使った検査が与えるダメージは、さらに大きいでしょう。
米国には、CT検査を繰り返し受けると、ガン発生が十数%増えるというデータもあります。それに対し、日本のCT普及率は世界一です」
加えて、胃ガン検診をやっているのは、世界で日本など一部の国だけだ。
「胃ガンは減っているという統計もありますが、検診の成果ではなく、塩分摂取量が減ったためと考えられます」
(週刊FLASH 2018年4月24日号)