
試食中、笑顔を見せる道場六三郎さん(写真・福田ヨシツグ)
1990~2000年代にテレビや雑誌を席巻したスター料理人たち。今も厨房や店に立ち、新たな挑戦を続けている彼らの現在地を追った!
『料理の鉄人』(フジテレビ系)出演で一世を風靡した道場六三郎さん(95)。現在も月に一度、東京・銀座の「ろくさん亭」の献立替えの際は厨房に立ち、最終的な味を確認しながらメニューを決めている。
企業とのコラボレーションにも取り組んでおり、この日は、和菓子の試食の場で取材に応じてくれた。ひとつひとつ丁寧に味を確かめる真剣な表情は、“鉄人”時代さながら。
「番組に出たことでお客様がたくさんいらしてくれて、ろくさん亭を作ったときに銀行から借りた残りの借金を、すべて返すことができたよ(笑)。ただ、自分のなかでは特に変化はなかったですね。次の日になれば、また厨房に立って包丁を握るだけですから」
だが、周囲は平常心とはいかなかった。
「女房の歌子には心配をかけました。勝つか負けるかの世界だったので、見ている女房はずっとドキドキしていたみたいでね。『お願いだからもうやめて』ってよく言われましたよ」
番組では27勝3敗1分という驚異的な勝率を誇った。だが、鉄人が心に残しているのは、華やかな舞台よりも、2015年に亡くなった、3歳上の妻と過ごした日々だった。
「晩年、女房の具合が悪かったときに、僕が料理を作ると喜んで食べてくれましてね。年齢を重ねると、大きく口を開けることも難しくなるから、小さなおにぎりを握り、中に少しだけ梅干しを入れたり、食べやすく工夫しました。『美味しい、ありがとう』って言ってくれた顔は、今でも忘れられません」
取材時、心臓の手術を控えていることも明かしてくれた。
「10年前に入れたペースメーカーの電池交換をします。落ち着いたらまた、店にも顔を出します。YouTubeもやりますよ」
95歳となった今も、挑戦への意欲は衰えない。
「新しいものに出合ったり、作り上げたり、考えたりするのが好きだからね」
次女の照子さんによれば、手術は無事に終わったそうだ。
取材/文・吉澤恵理
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