
2021年、塗料をかけられた「検察庁」の看板(写真・共同通信)
ロッキード事件で「総理大臣の犯罪」を検挙するなど政治権力に臆することなく立ち向かい、「巨悪を眠らせない」というキャッチフレーズとともに、「検察の正義」の象徴とされてきたのが「特捜部」という組織だった。
それが今や、罪もない人に「因縁」をつけて刑事施設に監禁し、心身に重大な苦痛と回復し難い不利益を与え、そこから逃れたければ「言うことを聞け」と脅し、裁判での無罪の訴えを妨害するという「権力ヤクザ」に成り下がっている。
その「権力ヤクザ」は、このところの相次ぐ検察官不祥事によって「検察の正義」のイメージが剥がれ落ち、国民からの信頼が大きく失われている。
東京地検特捜部で主任検事(通称「キャップ」)を務め、自民党派閥の裏金事件捜査を指揮した西田将仁検事が、2024年ごろ、江東区長選挙の公職選挙法違反事件で取り調べた30代女性容疑者の処分確定前に、女性から電子マネー3000円相当を受領、さらに事件関係者取り調べ用に公費で確保したホテルを同容疑者と不適切な関係を持つことに利用していたことが2026年7月8日に発覚し、7月29日付で懲戒免職となった。前特捜部長で監督責任者だった伊藤文規現松山地検検事正が厳重注意、関口新太郎特捜部長が訓告処分を受けた。
大阪地検特捜部の元検事(田渕大輔氏)は、横領事件の取り調べで「検察なめんなよ、命懸けてるんだよ、俺たちは」と声を荒らげ、「会社の評判をおとしめた大罪人」などの暴言を浴びせたとして特別公務員暴行陵虐罪で付審判決定を受け、2026年7月10日に刑事裁判が開始された(時事通信)。
東京地検特捜部の元検事(堀木博司氏)も、担当した詐欺事件で、41日間・計205時間に及ぶ取り調べ中に黙秘する被疑者へ「検察庁を敵視するってことは反社や」「黙秘を人のせいにするな」などと怒声を浴びせたとして6月24日付で付審判決定を受けている。
8月3日には、大阪地検での証拠隠しやパワハラの新たな疑惑が浮上した。
大阪地検特捜部での脱税研修(他地検から1カ月間、東京・大阪の特捜部に派遣され、脱税事件の捜査処理を担当する実務研修)で、大阪地検特捜部主任の指導検事から、脱税の故意を否認した被疑者の言い分をしっかり聞こうとする取り調べをしていることに対して、「事件を潰す気か」「お前ポンコツだな」などの暴言を受けたとする元検事の手記が公表されたのである。消極証拠(犯罪を否定する方向の証拠)になり得る録音データを、上司に報告せず隠蔽する指示まで受けたとのことだった。
このような特捜部に関連する問題とは別に、世の中に衝撃を与えたのが元大阪地検検事正の北川健太郎被告が2018年、部下の女性検事に対する準強制性交等罪で逮捕・起訴された事件だ。
この事件では、被害申告後に北川被告の部下であった副検事が被害女性の氏名や事実無根の中傷を組織内で流布するなど二次被害が発生したが、検察組織がその事態を放置したため、被害女性検事は国家賠償請求訴訟も提起している。しかし、本年4月30日に辞職を余儀なくされ、それらの問題に対して、元法務大臣を含め自民党内からも第三者委員会設置を求める声が上がっている。
このほか、金銭・倫理面でも、2025年10月に千葉地検の検事が過去に取り調べた参考人から100万円超の接待や金品の供与を受けたとして停職10カ月の懲戒処分を受け辞職、同年12月にはさいたま地検の検事が交際相手に捜査情報(前科情報)を漏洩し、国家公務員法違反罪で罰金30万円の略式命令とあわせて懲戒免職となるなど、検察官倫理に重大な疑念を生じさせる問題も多発している。
逆らうと暴行され人身被害に遭ったり、様々な嫌がらせをされたりすることへの恐怖から、金品や利益提供をさせられるなど不当な要求をのまされる、それが、組織的暴力を常習的に行うヤクザ・暴力団組織だ。
今、特捜部を中心に「検察で起きていること」は、ヤクザ・暴力団が手段として使う「暴力」ではなく、「刑事訴訟法上の捜査・起訴の権限」という法的手段が使われるという違いがあるだけで、その実態に大きな差はない。
検察の組織の中心にある特捜部という「権力ヤクザ」組織は、組の面子を重んじ、その看板を維持するためであれば、組長の指示でいかなる手段でも使うという点で暴力団組織と変わるところはない。
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以上、郷原信郎氏と稲葉利彦氏の共著『特捜検察という名の権力ヤクザ 東京五輪談合事件・人質司法との死闘』(光文社新書)をもとに再構成しました。「五輪談合事件」で理不尽な強制捜査の標的となったセレスポの元会長と、同社の弁護を担当する弁護士が、東京地検特捜部の暴走と日本の刑事司法の深い闇を白日の下に晒します。
■『特捜検察という名の権力ヤクザ』詳細はこちら
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