2026年7月の熊本地震で、最大1000人以上の避難先となった宇城市小川防災拠点センター
災害大国・ニッポン。いつ巨大地震や豪雨に見舞われ、避難生活を強いられるかわからない。実際、2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、1カ月以上たった9月7日時点でも、県内の避難所に1872人が避難生活を余儀なくされている。
避難の長期化が現実となるなか、身近なドラッグストアで揃えることができる有用な市販薬や衛生用品とはなにか。日本災害医療薬剤師学会会長の渡邉暁洋氏に取材し、「被災時に役立つ “市販薬&救急・衛生グッズ” 7つ」を本誌でリスト化した。
「災害発生時には、直接的な被害だけでなく、避難生活による環境の変化やストレスにより、体調を崩しやすくなります。そのため、平時から必要な医薬品や衛生用品を備えておくことが重要です」(渡邉氏、以下同)
渡邉氏が真っ先にあげたのは、「解熱・鎮痛剤」だ。避難所では、寒暖差や疲労で風邪症状が出やすい。しかし、備えとして安易に多機能の「総合感冒薬(風邪薬)」を選ぶのは注意が必要だという。
「総合感冒薬は多種多様な成分が含まれて便利ですが、症状に直接必要のない成分まで摂取することで、眠気や口の渇きなどの副作用が現われたり、持病や服用中の薬との兼ね合いで注意が必要になる場合があります。幅広い年代で使いやすいアセトアミノフェンを有効成分とした単剤の解熱・鎮痛剤が重宝します」
また、避難所では水の手配に苦労するため「水なしで飲める薬」を選びたくなるが、渡邉氏は「水なしで服用可能な薬でも、できれば水と一緒に飲んでほしい」と訴える。
「仮設トイレの利用を控えようと水分摂取を我慢する人が少なくありませんが、ここに活動量の低下が重なると、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)や脱水症のリスクが高まります。水分補給を意識し、薬も水で服用してください」
脱水症には、「経口補水液」も効果的だ。清涼飲料水より電解質(塩分など)濃度が高く体内への吸収が早いため、急な脱水に即効性がある。
■包帯より重宝する「湿潤タイプ」の絆創膏
環境変化による不調への対応も欠かせない。
「避難所でノロウイルスなどの感染性胃腸炎が発生した際に、下痢を無理に止めると病原体の排出を妨げ、症状の改善を遅らせる可能性があります。便秘や下痢といった腸の不調には、腸内環境を整える『整腸剤』がおすすめです」
また、慣れない環境での不眠対策には「睡眠改善薬」が奏功する場合もあるが、ふらつきなどの転倒リスクがあるため、短期使用にとどめよう。
避難中や片づけ作業中には切り傷などのケガも増える。傷の手当てといえば包帯を巻くイメージが強いが、現場での適切な処置はどうすべきか。
「包帯は適切な知識がないまま使用すると、過度な圧迫や傷口の状態確認の妨げになります。浅い傷であれば、『湿潤タイプの絆創膏』を活用することで、傷口を保護しやすく、管理も容易になります」
衛生面では、断水時もあせもや皮膚炎を防ぐ「体拭きシート」が役立つ。また、避難所ではストレスなどで唾液が減って口内細菌が急増するため、「口腔ケア用品」も必須だ。
「水がなくても、歯ブラシで細菌のエサとなる食べカスを物理的に除去することが、誤嚥性肺炎などの予防につながります」
非常時にこれらの物資を確実に生かすには、管理法も鍵となる。渡邉氏が助言する。
「医薬品は使用期限を確認し、保管時は直射日光や高温多湿を避けてください。なお、使用期限は未開封状態で品質が保証される期間です。開封後は保管状況によって品質が変化する可能性があるため、製品ごとの注意事項に従って管理しましょう。水や食品などは、古いものから日常で消費し、使ったぶんを買い足すローリングストックを心がけてください」
避難時には自身の服用歴がわかる「お薬手帳」も必ず携帯したい。
「日ごろから服用している薬の情報をスマホに保存しておくと、災害時でも最適な医療にアクセスしやすくなります。市販薬の記録もあるとさらに万全です」
まずは身近なところから、もしものときに安心できる備えをしよう。
写真・梅基展央
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