バーチャルAI故人サービス「Revibot」<初期費用(制作費):9万9800円〜※別途データ保管費:月額980円が必要>/このサービスを利用して、実際の告別式で故人から参列者へお別れの挨拶をしている様子
近年、物価高にともなう葬儀代の高騰や、改葬や墓じまいの費用をめぐるトラブルなど、葬儀や供養のあり方に注目が集まっている。
都内では火葬代の急騰も深刻で、23区内の火葬の約7割を担う民間事業者の場合、基本料は8万7000円に達しており、遺族の金銭的負担は増すばかりだ。
一方で、常識にとらわれない、最新テクノロジーを駆使した“まったく新しい弔いの形”も登場し始めている。
花々に包まれた祭壇に飾られている、高齢男性の遺影。だが、安らかな表情で額縁に収まる男性が、次の瞬間、参列者にこう語りかける。
「皆さん、今日は私のために集まってくれてありがとう」
これは、SF映画ではない。2026年に創業65周年を迎えた冠婚葬祭企業「アルファクラブ武蔵野」が提供する、バーチャルAI故人サービス「Revibot(レビボ)」の実例だ。
故人の写真や動画、音声データをAIに学習させ、アバターを制作することで、遺影の故人は、かつての口調や表情で、参列者に語りかけるようになる。告別式でサプライズ演出として投影され、親族が涙を流すケースも多いという。
同社のIT部門の代表を務める常務取締役・小川誠氏は、サービス提供の背景についてこう語る。
「『レビボ』は、『コロナ禍で会えずにお別れとなってしまった故人にもう一度会いたい』というお声を多くいただいたのをきっかけに、2024年から提供を開始しました。話す内容は、故人が遺されたメッセージや、ご遺族が考えた文言をもとに作成しています」
サービス化の過程には課題もあった。同社では外部有識者を交えた倫理委員会を設けているが、そこで懸念されたのが「分人」という概念だ。人は、相手や場面に応じて多様な顔を持つが、現在のAIで再現すると、一つの人格に統合されてしまう。
そのため、実際のアバター制作では、故人を知る人が違和感を抱かないように、依頼者と綿密な打ち合わせを重ねて、口調や癖まで細かく調整しているという。
それでも、こうした斬新なサービスに対してSNS上では賛否両論があり、《故人の同意無しで動画を作成していいものか?》など、亡くなった人の尊厳を懸念する声も少なくない。
このような反響に対し、小川氏はこう語る。
「弊社としても、疑問の声やご批判の声があることはもちろん承知しています。ですが、葬儀がどんどんコンパクトになっていく時代に、葬儀会社である弊社に何ができるかを考えたとき、行き着いたのは“感動できる葬儀をつくる”という方向性でした。
弊社では“想儀”とも表現していますが、故人が生前に残した想いや、遺族の要望をできる限り汲んだ形にしたいです。そのために、テクノロジーを活用して新しい葬儀の形を提供することには、社会的な意義があると考えています」
■遺骨を米国宇宙軍基地から発射
ほかにも同社には、メタバース霊園「風の霊」という、メタバース空間で墓参りや葬儀への参列など、実体験に近い供養ができるサービスもある。霊園内の区画を購入すれば、自分だけのお墓を建立でき、実物同様に墓石に刻字したり、墓誌を設定することも可能だ。所有区画はデジタル資産(NFT)として厳格に管理され、相続にも対応している。
「仮想空間にある墓地へは、PCやスマホからアバターとして入場すれば、簡単に訪ねることができます。印象に残っているのは、ご主人を亡くされ、海洋散骨をされた女性のケースです。手元にご遺骨がなくお墓もないので、手を合わせる場所が欲しいということでしたが、よりどころができたと喜んでいただけました」(同前)
こうした斬新すぎる葬儀サービスの旗振り役を務める小川氏だが、じつはデータビジネスやマーケティングといった、葬儀とはまったくの異業種であるIT畑を歩んできたという。2022年に現在の会社のオーナーから声がかかり、そのIT部門に参画することになったそうだ。
従来の葬送インフラに対する不安が高まるなか、小川氏のIT分野への知見と若手社員のアイデアが融合して生まれた、納骨の新たな選択肢が、宇宙葬「Space voyage α」だ。
「ご遺骨やDNAを入れたカプセルを、アメリカのヴァンデンバーグ宇宙軍基地から発射されるSpaceX社のロケットに搭載して、宇宙へ送るんです。打ち上げの模様はライブ中継で観ることができます。人が亡くなった後に星になるという、古今東西の人類に普遍的な価値観がヒントになっています」(同前)
2026年7月7日には初の打ち上げが成功し、8人の遺骨と想いを乗せたカプセルが空へ飛び立った。こうした弔いサービスについて、小川氏は「終活のスタンダードとなっていくのでは」と予想する。
「葬儀業界は特性上、どうしても不安を煽りがちですが、死は誰にでも当たり前に訪れるものです。だからこそ、ご自身やご家族が元気なうちから『死』について前向きに考え、その想いを形にする手助けをしていければと考えています」(同前)
写真・福田ヨシツグ、取材/文・蜜ツ治(A4studio)
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