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【目指せ不思議スポット】神が降り立った天孫降臨の地
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.07.21 11:00 最終更新日:2018.07.21 14:32
高千穂といえば、神が降り立った天孫降臨の地として全国的に名高いが、宮崎県には2つの “高千穂” が存在しているのをご存知だろうか。
一般的に多くの観光客が足を運ぶのは、宮崎県の北端にあたる「高千穂峡」のほうだろう。一方、県内の南西、霧島連山の一角には「高千穂峰」がある。
1つの県に神様が降り立った候補地が2つもあるというのは何とも贅沢な話だが、外野からすれば、宮崎旅行は1粒で2度美味しいとも言える。まずは高千穂峡を見てまわることにした。
高千穂峡のシンボルは、なんといっても「真名井の滝」だろう。緑に覆われた渓谷に、エメラルドグリーンの水面が映える風景写真を、旅好きなら一度は目にしたことがあるに違いない。
河岸の独特の景観は、火山の噴火で流れ込んできたマグマが冷却され、収縮することで織りなされる独特の柱状節理によるもの。いかにも神の手仕事らしいダイナミズムを感じさせる風景だ。
天孫降臨の物語を満喫する上で、ぜひ立ち寄っておきたいのが、同じ高千穂町内にある天岩戸神社だ。ここには記紀に綴られた日本神話の一節、天照大神の岩戸隠れの現場とされる洞窟が祀られている。
岩戸隠れとは、神代の時代のエピソードだ。太陽の神である天照大神は、他の神々とともに高天原で暮らしていたが、ある日、弟のスサノオノミコトが繰り返す乱暴狼藉に腹を立て、天の岩戸と呼ばれる洞窟に身を隠した。
すると、太陽の神が身を隠したことにより光を失った世の中は、途端に作物が育たなくなり、病気が蔓延するなど、大混乱に陥ったという。
天岩戸神社では、岩戸川を挟んで西本宮と東本宮が祀られており、天照大神が隠れた洞窟(天岩戸)を御神体として祀っているのが西本宮だ。他方、天照皇大神が天岩戸から出てきた際、最初に住んだ場所を祀っているのが東本宮である。
マイナスイオンを一身に浴びながら河原伝いに歩いて行くと、「仰慕窟」という、間口40メートルほどの洞窟があり、古びた鳥居が見えてくる。中に鎮座するのは、天岩戸宮だ。
神々が集った場というだけあり、どことなくスピリチュアルな空気で満たされているのを感じるこの空間。とりわけ非日常感を演出しているのは、周辺に積まれたおびただしい数の小石の塔だ。
もともとは社のみが置かれていたそうだが、八百万の神が祀られているとあり、所願成就の信仰から、全国から集まった人々がいつしかこうして小石が積まれる習慣が生まれたという。
願いを祈願しながら、7段、5段、3段のいずれかの数の小石を積むと、それが成就するのだとか。神話や風習が育まれていくプロセスを見るようで興味深い。
なお、天岩戸神社の敷地内に併設されている「徴古館」には、高千穂一帯から発見された、石器や土器、勾玉など古代の遺物、約2000点が展示されている。
奈良時代に『古事記』が編纂されるよりもはるか以前から、この地域で人が暮らし、活動していたことを忍ばせる貴重な資料の数々は、一見の価値ありだ。当時の人々が天孫降臨の地で何を思い、いかに神話を育んできたのかを想像してみよう。
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以上、友清哲氏の新刊『消えた日本史の謎』(知恵の森文庫)から再構成しました。謎の構造物、おかしな物体、奇妙な伝承、未解明のパワースポット…不思議をめぐる旅の記録です。