「入院していた父には、葬式代は安くすませろと口を酸っぱくして言われていたので、生前から大手葬儀社で見積もりをお願いしていました」と語るのは都内在住の斉藤さん(48歳・仮名)。
家族葬で頼んだ葬儀の見積もりは、約50万円。これに通夜、告別式の食事代、返礼品、生花代などがかかると説明された斉藤さんは、約100万円で収まるだろうと考え、その葬儀社にお願いすることに決めたという。
「父が亡くなった翌日、葬儀社に打ち合わせに行くと、母が『祭壇がちょっと寂しい。木の棺はかわいそう』と言うので、祭壇をひとまわり大きいものに、棺を布張りのものに変更しました。
あとは事前見積もりと変えていません。まさか、210万円を超えるとは思ってもいませんでした。父に申し訳ない気持ちです」と斉藤さんは悔やむ。
斉藤さん以外にも、大手葬儀社を利用後に不満を漏らす遺族は多い。
独立行政法人・国民生活センターにも、多くの相談が寄せられている。
「母が亡くなる前に、葬儀会社と見積もりを3回とって契約した。最初は入っていなかった料金がいつの間にか加算されていた。支払うことに納得がいかない」
「パック料金の葬儀を、パンフレットを見せられて口頭で依頼したが、後日、割高な請求書が届いた。無断でドライアイス、献花、雑費等のサービスを付加され、請求されている」
大切な人を失って動揺している間に決めるべきことは多く、依頼していないものが追加されたり、コース自体が変わっていたりする。
斉藤さんはまさにこのパターン。約25万円のコースで頼んだつもりが、請求書ではコース変更料を加えられ、約85万円のコースに。さらに差額として約20万円を請求された。説明はいっさいなかったが、葬儀基本料だけで、100万円を超えた。
都内で葬儀社を経営するA氏はこの道20年のベテラン。街に根づいて多くの葬儀を請け負ってきたプロ。斉藤さんの明細書をチェックしてもらうと「私が見ても非常に難解です。会員提供価格は割引額ということですか? 多くが利用コースに含まれており、わかりづらくしているように思えます。コース変更なら確認を取るべき」と話す。
そもそもこの「コース料金」が曲者。
「当社の家族葬なら、看板や道案内は必要ないし、司会進行や通夜葬儀式進行などは葬儀社の担当者がおこなっているなら、費用がかからなくてもいいのでは。もちろんプロの司会に頼めば料金はいただきますが、当社は担当者が司会をすれば無料です」(A氏)
ほかの明細書もチェックしてもらった。
「大手葬儀社さんのなかには、料理や返礼品を一括で扱っていて、一般業者と比べ、割高な場合があります。そのぶん、売り上げになりますからね。このケースがそうです。料理はセットだと無駄が出るので、単品で好きなものを選ぶと、費用的にも安く上がります」
斉藤さんが明細書の価格を見て驚いたのは、遺体保全と音響の費用だ。
「音楽はどうしますか? と聞かれたので、父が好きだった音楽を流してほしいとお願いしましたが、約15万円という価格の説明はなかった。
聞いていたら考えました。遺体保全の約15万円も同じで、金額の提示もなく、家族の前で湯灌してもらったわけでもありません。
後飾りやボンボリも頼んでいないのに自宅に設置され、後片づけに苦労しました。『知らないうちにお金がかかった』が葬儀後の正直な感想です」
この声を聞いてA氏はこう話す。
「金額がいくらかかるのか、どんな内容なのか。葬儀社はすべてのことに対して説明して価格を提示しなくてはいけない。明細書を見るまで価格を知らないなんて、ありえません。『いいお別れができた』と思えない葬儀はダメだと思います。
大金をかけなくても、ゆっくりお別れできる葬儀の方法はあります。大手葬儀社さんはノルマがあるから『見栄えがしませんよ』と言って祭壇を大きくしたり、生花を増やしたりする。
でも私は『故人はそれを望んでいましたか?』と聞きます。本当に必要かどうかを判断し、よけいなものは省く。不明点は質問する。後悔しない最後のお別れをしてください」
(週刊FLASH 2018年5月1日号)