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「和食が体にいい」は何の根拠もなかったライフ・マネー 2018.09.11

「和食が体にいい」は何の根拠もなかった

 

 和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、2013年12月のこと。登録申請の概要には「米、味噌汁、魚や野菜・山菜といったおかずなどにより食事がバランスよく構成」「動物性油脂を多用せず、長寿や肥満防止に寄与」といった説明が並んでいる。「和食=ヘルシー」というイメージは世界的に定着し、各地でブームとなっている。

 

「日本人が和食を食べていることと、長寿であることを結びつけて『和食を食べているから長寿になる』と言いきることはできません」

 

 

 そう語るのは「なついキズとやけどのクリニック」院長で、健康に関する著作も多い医師の夏井睦氏だ。

 

「世界各国の平均寿命を見ればわかりますが、80歳を超える長寿国は、いずれも国情が安定した、いわゆる先進国です。逆に経済的に困窮していたり、戦争状態にあったりする国では、平均寿命は短くなります。違いはたんに、経済力と社会の安定性なのです」

 

 2017年7月、厚生労働省が発表した資料によれば、日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳。男性の平均寿命が80歳を超える国と地域は、香港、キプロスなど11にのぼる。これを見る限り、日本だけが飛び抜けて平均寿命が長いわけではない。

 

 また、経済的に安定した国は、いずれも順調に平均寿命を延ばしている。日本だけが特別とは、けっして言いきれない。 

 

「日本は戦後、焼け野原から復興し、先進国の仲間入りを果たしました。それと並行するように、平均寿命も延びていきました。経済が発展するとともに、食事の内容が変化し、医療が改善したからです。

 

『日本人は和食を食べているから長寿』というのは、因果関係がないのにそう見える『疑似相関』にすぎません。平均寿命が短い国の人に和食を食べさせたら、寿命が延びると思いますか?」(夏井氏)

 

 2017年5月、国立がん研究センターなどの研究チームが、興味深い研究結果を発表している。約8万人を15年間にわたって追跡調査し、対象者を食事の傾向から

 

「健康型(野菜や果物、大豆製品、きのこなどを食べる)」
「欧米型(肉、パン、コーヒー、乳製品などを中心に食べる)」「伝統型(ご飯、味噌汁、漬け物、魚など和食を中心に食べる)」

 

 に分類。追跡調査期間中に発生した死亡原因のうち、「ガン」「循環器疾患」「心疾患」「脳血管疾患」との関連を調べたものだ。

 

 その結果、「健康型」は、その食事傾向がより強い人ほど循環器疾患、心疾患、脳血管疾患の死亡リスクが減少していた。そして「欧米型」は、その傾向が強い人ほど、ガンを含むすべての死亡リスクが減少していたという。

 

 一方、和食中心の「伝統型」は、死亡リスクとの関係は見られなかった。死亡リスクを低下させたのは、和食中心の「伝統型」ではなく、肉やパンなど「欧米型」の食事だったというのだ。

 

 長年にわたり、高齢者の健康と食事の関係を研究してきた、全国食支援活動協力会理事で学術博士の熊谷修氏も「日本人の平均寿命を劇的に延ばしたのは、高度成長期の食生活改善だ」と語る。

 

「65歳時点での余命(その後、何年生きられるかの年数)の伸びは、昭和40年からの15年間に集中しています。これは生産・流通の発達により、全国どこでも肉類や卵、乳製品が手軽に入手できるようになり、摂取量が増えた時期と重なります。食生活の適度な欧米化によって、シニアの老化が遅くなったのです」

 

 和食と洋食のいいとこどりで、日本は世界トップクラスの長寿を手に入れたのだ。「動物性油脂を多用せず、長寿や肥満防止に寄与」という文化遺産のふれ込みとは、いささか矛盾があるようだ。

 

「長生きには粗食がいい、というイメージを持たれている方は多いのですが、実際には肉も卵も乳製品も油脂も、しっかり摂らなくてはいけません。

 

 老化は病気とはまったく異なる変化で、体からタンパク質が減少し、筋肉と骨が小さくなっていく現象です。これをいかに食い止めるか。もっとも効率がいいのが、肉を食べることなんです。20年以上、多くの高齢者と直に接して得た研究結果です」

 

 熊谷氏は「肉類」「卵類」「牛乳」「油脂類」「魚介類」「大豆製品」「緑黄色野菜」「芋類」「果物」「海藻類」の食品群を、毎日の食事のなかで取り入れることを推奨している。

 

「食品摂取の多様性を推進することで、体の栄養状態が向上し、老化の進行が遅くなることを確認しています。ただ余命を延ばすだけではありません。要介護状態になることを防ぎ、健康長寿を実現してくれます」

 

■和食の概念は近年まで存在せず

 

「そもそも和食とは何か」と疑問を呈するのは、前出の夏井氏だ。

 

「『日本の長寿村・短命村』(サンロード出版)という本があります。医学博士の近藤正二先生が、1935年から36年かけて、全国990以上の町村を訪れ、現地の生活や食について調べ上げた労作です」   

 

 これを読むと、昭和の中ごろまでは、町村ごとに食事はまったく異なっていたことがわかる。なかには米をほとんど食べない村もあったという。つまり、近年まで「和食」という概念そのものがなかったのではないか、というのが夏井氏の分析だ。

 

「和食の基本とされる『一汁三菜』とは本来、懐石料理の一スタイルにすぎません。全国に普及したのは昭和50年代になって、テレビで紹介されてからです」

 

 ただし、そのなかでも長寿・短命と食事との明らかな相関性が、『日本の長寿村~』の記述から見出せるという。端的にいうと、米を多く食べる地域は短命、野菜や海藻を多く食べる地域は長寿、ということだ。一部を引用する。

 

<特に一番短命なのは秋田県ですが、ここの米どころの人は、白いご飯を大食します。しかも塩辛い大根の味噌漬け、なすの味噌漬けなどをおかずにして、まっ白いご飯を驚くほど、たくさん食べます。(中略)こういう食事を若いときからやってきた人は、みんな40歳ごろから、脳溢血で倒れます>

 

<志摩の海女が長生きであることは前にお話しました。ところが能登半島・輪島の海女が対称的です。(中略)ここの海女はおしなべて短命で、作業に出るのも50歳前でやめてしまいます。志摩の海女は、魚がたくさんとれても大食はしませんが、輪島の海女は魚と白米を多食し、野菜のとり方が少ないのです>(原文ママ)

 

 こうなると、白米を主食とする和食が長寿食だとは、とても思えなくなる。

 

「日本人は米を食え。和食は体にいい。そんな固定観念からそろそろ脱却すべきではないでしょうか」(夏井氏)

 

「和食はヘルシー」というのは、なんの根拠もない話だったのだ。
(週刊FLASH 2018年7月24・31日合併号)

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