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わが子をネガティブ評価してしまう「4つの思考プロセス」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.09.26 16:00 最終更新日:2018.09.26 16:00

わが子をネガティブ評価してしまう「4つの思考プロセス」

 

 ある時、私は講演会で母親のこんな質問に思わず大笑いした。「わが子の強みに気づくようにとおっしゃいますが、わが子の弱点に注目する子育て術はないんですか。そっちのほうなら、わたし、得意なんですが!」
 

 残念ながら、親という生き物は、わが子の悪い行ないに気づき、ネガティブなところを見つけ出すのが得意なのだ。

 

 私たちは、脳に配線された4つの思考プロセスによって、ネガティブなことに目がいくようにできている。その思考プロセスを理解すれば、強みにもとづく子育てをよりポジティブに、より生産的に実践できるはずだ。

 

◯思考プロセス1「選択的注意」
─特定の対象にのみ注目する

 

 こんな想像をしてみよう。あなたは、短い動画を見る実験に参加している。動画のなかでは、6人の男女がふたつのバスケットボールをパスし合っている。白いシャツの男女が3人、黒いシャツの男女が3人。あなたは、白いシャツの3人がボールをパスし合う回数を、頭のなかで数えなければならない。

 

 動画がはじまって約30秒後に、ゴリラの着ぐるみが画面の右から現れ、カメラに顔を向けて何度か両手で胸を叩き、画面の左へと消えていく。その間、約9秒。もちろん、その姿を見落とす者はいない。だから、ゴリラに気を取られて、ついパスの回数を数えるのが疎かになってしまう。みな、そう思うはずだ。

 

 ところが、それは間違いだ。実際、この実験を行なったところ、被験者のふたりにひとりがゴリラの姿に気づかなかったのである!

 

 この現象は「非注意による見落とし」と呼ばれる。私たちが積極的に(すなわち選択的に)特定の対象にのみ注目し、ほかの対象には注意を向けない「非注意の状態」になることで、ゴリラの見落としが起きる。

 

 このように特定の対象にのみ注意する選択的注意は、絶えず情報にさらされる世界で私たちがうまく機能できるよう、脳が進化の過程で獲得した優れた特徴である。

 

 だが、そのマイナス面も明らかだろう。このすばやく働く脳のフィルタリング機能は、決して完璧ではない。だから、重要な情報を見落としてしまい、周囲の世界を正しく評価できなくなってしまうのだ。

 

◯思考プロセス2「ネガティブバイアス」
─マイナス情報を重視する

 

 まさに脳の設計のせいで、私たちはわが子の強みを見落とす。簡単に言えば、正しいものよりも間違ったものにすばやく、頻繁に気づくように、私たちはプログラムされているのだ。マイナス面に気づきやすい、この「ネガティブバイアス(偏向)」と呼ばれる特徴は、意識する前に働く。

 

 オハイオ州立大学は、被験者に電極のついたゴムのヘッドキャップを被ってもらい、連続的に写真を見せて頭皮の電気活動を記録した。ポジティブな画像、ネガティブな画像、そのどちらでもない画像が混ざった写真を、コンピュータ画面ですばやく連続的に見せていくと、活発な電気活動が記録されたのは、ネガティブな画像を見せた時だったという。

 

「人間はあら探しをするのが得意なのか」と思われたとすれば、まったくその通りだ。だが、これには進化上のちゃんとした理由がある。ネガティブバイアスのおかげで人間は危険を免れてきた。あら探しの下手な祖先がどんな目に遭ってきたか、考えてみればいい。

 

 いいや、そんな祖先はいなかった。なぜなら、彼らはあっさりと命を落とし、その遺伝子は排除されてきたからだ。追いかけられ、急襲され、角や牙で突かれ、毒にやられ、噛みつかれ、うっかり見落とした天敵や危険によって命を落としてきた。
 

 彼らの死とともに、ネガティブな情報や状況を見落としやすい遺伝子も排除された。こうして、ネガティブバイアスは、ますます私たちに強く植えつけられた。

 

◯思考プロセス3「投影」
─自分のネガティブなイメージを投影する

 

 3つ目に紹介する歪曲は実に興味深い。私たちは人の強みよりも弱点に気づくのがうまいが、自分自身の弱点は非常にうまく見過ごす。

 

 言うまでもなく、ポジティブな自己像は私たちの気分をよくし、ネガティブな自己像は私たちを不快な気分にする。というわけで自我は、ネガティブな自己感を排除し、ポジティブな自己感を増幅させる方法を発達させてきた。

 

 それが、「防衛機制」と呼ばれる無意識の心理メカニズムであり、その代表例のひとつが「投影」、つまり一種の責任転嫁である。

 

 投影とは、受け入れがたい自己の特徴や欠点を、ほかの誰かの特徴や欠点として、無意識のうちに相手に押しつけてしまう心の働きを指す。

 

 子どもの頃、私は散らかし放題で忘れっぽく、片づけが苦手だった。服は床に放りっぱなし。宿題は忘れる。衣類やカギも失くす。その後も、片づけ下手は直らなかった。

 

 だから白状するが、わが子がだらしなかったり、散らかし放題だったりした時には、私は自分の弱点を子どもに投影してしまいそうになる。片づけ下手なところが自分の弱点であるがゆえ、よその親よりもつい過剰に反応してしまうのだ。

 

◯思考プロセス4「二元思考」
─白か黒か

 

 典型的な二元思考は、「白か黒か」「善か悪か」「プラスかマイナスか」という考え方だ。親はこんなふうに、子どもを二元思考で決めつけやすい。「あの子はいたずらっ子だ」「うちの娘は真面目だ」「長男はクラスのお調子者だ」といった具合に決めつけて、子どもをひとつのカテゴリーに当てはめてしまうのだ。
 

 子どもの強みは、思わぬかたちで表れる場合もある。わが子の描いた絵は美術館に飾るだけの技術はないかもしれないが、その優れた創造力はファッションやインテリアの分野に表れているかもしれない。

 

 学校の成績が悪いと、うちの子には知識がないとか、知性に欠けると思いがちだ。だがいわゆる「お勉強は苦手」な子どもにも、詳しい分野があるはずだ。

 

 たとえばオンラインゲーム好きの子どもは、ゲームの制作プロセスやプログラム開発、コード化、マーケティングに強い興味を示すかもしれない。

 

 電話やSNSに忙しい子どもは、友だちをつくるのがうまく、共通の趣味を持つ仲間どうしでオンライン・コミュニティをつくったり、将来、世界的なムーブメントを起こしたりする可能性がある。

 

 結論を言えば、こういうことだ。「選択的注意」「ネガティブバイアス」「投影」「二元思考」の4つの思考プロセスによって、親はわが子の本当の姿を見てはいないのである。

 

 以上、リー・ウォーターズ著、江口泰子翻訳の『ストレングス・スイッチ 子どもの「強み」を伸ばすポジティブ心理学』(光文社)を元に再構成しました。

 弱点・苦手の克服ではなく、長所・得意を育てる育児にシフトへすれば、子供の真の才能が目覚める!

 

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